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うっかりの約束

オリジナルです。

先生(女)×元生徒(男)。長文になります。


アイデアいただいたユーザー様、すみません・・・

こんななってしまいました。

“そうねー、私が30歳で独身だったら考えてあげてもいいわよ”

 あの頃の私に言いたい・・・わたしの、私の大馬鹿者~~~っ!!

「高藤先生・・・水恵さん。あのときの約束覚えてるよね?」

 かつての優等生・・・今は不敵な笑みを浮かべた成人男性が私の両手をおさえて見下ろしていた。



 私は高藤水恵たかとう・みなえ。幼稚園から大学まである某一貫校の高等部で養護教諭として働いている。

 保健室の常連のなかに望月 いたる君がいた。学内成績は常に1位で、系列の大学にエスカレーターではなく国内最高ランクか海外の大学にらくらくと進学できる頭脳の持ち主。くわえて剣道部の主力でもあるというまさにイヤミなくらい文武両道な生徒。

 そんな生徒は怪我か保健委員にでもならない限り、保健室とは縁がないものと思っていたんだけど、彼はなぜかよく顔を出していた。

「先生、ちょっとテーブル貸してください」

「別にかまわないけど・・・どうしてここで勉強してくのよ。図書室でしなさいよ」

「図書室だと、周囲に人が寄って来てうるさいんですよ。ここはたいてい先生一人しかいないじゃないですか」

 ・・・塾行けよ、塾。ここより環境はずっといいんじゃないのかね~。

「先生、ここと塾はまた別ですから」

 心の中でつぶやいたはずがどうやら独り言として口に出していたらしい。そう、この望月君はなぜかいつも保健室で勉強していくのである。

 他の生徒がいるときはあっさり帰って行き、私しかいないときだけカバンからテキストを出して勉強していく。

 たぶん、校内有名人の彼にとって保健室は息抜きの場所なんだろう・・・私は仕事をしながら彼の様子を見守ることにしていた。

 数ヵ月後、彼は国内最高ランクの大学にあっさりと合格を果たし、自由登校になると保健室に姿を見せることもなくなり、卒業式を迎えた。

 

 式が終わり、そろそろ保健室も閉めようとしたときに「失礼します」とガラッとドアを開く音がした。

 今さら気分が悪くなった人でも出たかね~と思ってパーティション越しにのぞくと、そこには望月君が立っていた。

「こんにちは。高藤先生」

「こんにちは。望月君、卒業と大学合格おめでとう。答辞も見事なものだったよ」

「ありがとうございます。高藤先生、さっきコンビニで買ってきたんです。 “初恋ショコラ”なんですけど、いかがですか?」

 そう言って望月君はコンビニ袋を持ち上げた。

「初恋ショコラ?あれ美味しいのよね。でも、生徒におごってもらうなんて悪いわ」

「保健室で勉強させてくれたじゃないですか。そのお礼です」

「わかった。ありがたくいただくわね。そこのテーブルに置いておいてもらえる?」

「僕の分も買ってきたんですよ。一緒に食べませんか?フォークもあるし、お茶も買ってきましたよ」

「わかった。一緒に食べましょうか」

 テーブルで初恋ショコラを口に運ぶ。うーん、やっぱり美味しい。望月君、これ買ってくるの恥ずかしくなかったのかなあ。高校生男子が買うのに結構躊躇する名前だと思うんだけど。

「なんですか?」

「いやー、望月君はこの“初恋ショコラ”を買うとき恥ずかしくなかったのかなと思って」

「別に。好きな人が好きなお菓子を買うことに抵抗なんかありませんから」

「へ~。望月君が好きな人って誰?」

「・・・そういうこと言うんですか。」

「は?」

 望月君は、そんな私をみてため息をついた。

「もういいです。僕が好きなのは高藤先生、あなたです」

「はいいい?望月君・・・何をまた冗談・・・」

「冗談?僕はいたって真面目ですけど」

「えーっと、私はあなたと6歳ちがうんですけど」

「だから?」

「んーっと、望月君人気あるんだからさあ、同年代とかー、年上でも3歳までくらいがいいんじゃないかな」

 私の返答に望月君の表情は固まった。


「先生、このケーキのキャッチコピー知ってます?」

「ん?“ケーキとぼくのキス、どっちがすき?”でしょ・・・ちょ、なに・・・」

 いつの間にか隣に来ていた望月君の顔が近づいたかと思うと柔らかいものが唇に触れる。

「・・・・何してくれんのよ!!」

「何って・・・俺が成人するまでの予約?」

「予約って、何の予約!?」

「そりゃもちろん、大人のおつきあいに決まってるじゃないですか」

「はあああ?予約なんて受け付けません!!」

「でも先生。僕が大学卒業して就職して2年くらい・・・だいたい6年ほど夢を見させてくれてもいいじゃないですか」

 6年か・・・6年もあれば、望月君だってかわいい彼女や美人な彼女がたくさん出来て、ただの保健室の先生のことなんか頭の片隅から忘れちゃうかもしれないよね。私も30歳だし、誰か見つけて共働きなんてことになってるかもしれないよね。私は頭のなかで計算をはじめた。

「・・・・わかった。そうねー、私が30歳で独身だったら考えてあげてもいいわよ」

「先生、言いましたね?」

 望月君が私に念を押してきた。



「高藤先生・・・水恵さん。あのときの約束覚えてるよね?」

「・・・・ま、まあ覚えてるけど」

「僕も覚えていたよ。今日のOB会に呼ばれることが分かったとき、僕は真っ先に先生が独身かどうかを確かめた・・・嬉しかったよ。まだ独身で」

 今日は勤務先でOBを招待して話をしてもらうイベントがあった。望月君は大学を卒業後、検事としてキャリアを積み始めており、学校側も当たり前のように彼を招待したのだ。

 その後、食事に誘われて社会人同士だからいいかと思って、そのあとお酒も楽しく飲んじゃって・・・まさか、こんなことになろうとは。

「それで、水恵さん。僕とのこと考えてくれる?」

「この状況でそれは無理。いきなりこんなことされたら混乱するだけでしょうが」

「・・・・水恵さん」

「・・・今度はちゃんと考えるから」

 私がそういうと、望月君は両手を押さえていた手をゆるめて私の背中に手を回した。

「だから、とりあえず今日はこのまま帰らない?」

「嫌です。おとなしく流されてください。」

 望月君は、とんでもないセリフをにこやかに告げた。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


ユーザー様からいただいた「女教師と若い燕」バージョンに

チャレンジしてみました。

やっぱり教師と生徒モノって難しい・・・

長編は間違いなく無理だなと改めて思いました。


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