共通項
オリジナルです。
これも一度書いてみたかったカップリング。
私たちの恋は人目を気にする。時間にも制約があるし外のデートは私の卒業まで無理だ。友達に彼氏のグチなんて絶対に言えないし・・・だけど、時々友達に言いたくなる。「私の恋人は、先生なの」って。
昼休みを知らせるチャイムが鳴った。
「比奈子ー、今日は庭園で食べない?」
「いいよー。」
私は友人の桃ちゃんに誘われて席を立つ。うちの学校には何代か前の理事長が作った庭園があって、桃ちゃんは「生徒の癒し用というより学校の見栄」と言うけど、私は植物がたくさんあるこの庭園が好き。
お弁当を食べ終わると、桃ちゃんはトートバッグからチョコレートケーキ“初恋ショコラ”を取り出した。
「桃ちゃん、そのケーキ好きだよね~」
「だって美味しいんだもの。それに“ケーキとぼくのキス、どっちがすき?”って言われるとドキドキしちゃう~。比奈子は誰のバージョンが好き?」
「私、CMは知ってるけど誰が誰だか」
「じゃあ顔を見れば区別つくでしょ?ほら!この雑誌にちょうどメンバー全員出てるから!」と桃ちゃんはいそいそとトートバッグから雑誌を取り出そうとしたそのとき。
「小此木、鈴橋。」
「げ。イッチー。」桃ちゃんはあわてて雑誌をトートバッグに戻した。
私たちに声をかけたのは、数学の市野先生。整った顔立ちと分かりやすい授業で評判の先生なんだけど、先生は無愛想で、どんなときでも冷静沈着で厳しい態度。
生徒の間では“イッチー”と呼ばれているものの、それを本人に聞こえるところで言える子はいない。
市野先生は私たちが座ってるベンチにツカツカと近寄ってくると桃ちゃんに視線を向けた。
「小此木。今、雑誌のようなものを隠さなかったか?」
「いいえ。食事を食べたら比奈子・・・鈴橋さんと次の時間の課題の答え合わせをしようと思っていたんです」
そういうと、桃ちゃんは数学のノートを取り出した。桃ちゃん・・・用意周到だよ。
「なるほど。私の見間違いだったか」
「そうですよ。先生、目が悪くなったんじゃないんですか?」
「ちょっと桃ちゃん。」
どうも桃ちゃんは市野先生相手だと、ひとこと言わずにいられないらしい。
「まあいい。小此木は課題をちゃんとやってきたようだからな。今日は授業で当ててやるから成果を期待してるよ。いやあ楽しみだなあ」
そう言うと、市野先生は背中を向けて数学準備室のほうに歩いて行った。
そして数学の授業で本当に当てられた桃ちゃんは「イッチーは絶対ドSだっ!!」と断言していた。
『少し残業になってしまった。ごめん遅れる』
『わかった。食事作って待ってるね』
メールがあって2時間後、帰ってきた彼は私にコンビニの袋を差し出した。中をみると“初恋ショコラ”が入ってる。
「先生、甘いもの苦手なのに。どうして?」
「昼休みに小此木と話をしてただろ?比奈子、ここは学校じゃないんだから“先生”はないんじゃないか?」
「学校で、うっかり“京くん”って呼んじゃいそうだから、だめ。桃ちゃんにつっこまれちゃう」
「小此木か・・・あいつは比奈子のガードでもしてるのか?」
先生が不満そうな口調だ。学校では絶対に見せないその態度が私には嬉しい。
「違いますよ。初等科から一緒なので暢気者の私が心配みたいで。先生、食事の用意してあるから、食べましょう?」
食事を終えて、初恋ショコラをテーブルに出すと先生がマグカップに紅茶を入れてくれる。
「・・・今日は何時までいられる?」
「母が9時までには帰ってきなさいって」
「あと2時間か。あー、残業じゃなかったらなあ。」
その拗ねた口調がかわいくて、私は思わず「ふふっ」と笑ってしまう。
「笑うなよ」
「だって、学校ではあんなに無愛想な市野先生なのに・・・かわいい」
「大人の男に“かわいい”はないだろう?比奈子、ケーキ食べたら」
「うん、いただきます」
初恋ショコラをひとくち。桃ちゃんがはまるだけあって、濃厚なクリームとしっとりしたスポンジが美味しい。これでカロリーが従来品より控えめだって言ってたっけ。
「先生、これ美味しい!そんなに甘くないし、先生も食べれるんじゃない?」
「ほー、そりゃよかった。でも俺はいらないよ」
「えー。美味しいのに~」
「俺は甘いものは別口で補充するからいいの。」
「そうなんですか」
私は先生のいう“甘いもの”が何なのか知っている。そして、それは私にとっても甘いもの。
読了ありがとうございました。
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王道禁断シチュ「先生と生徒」。
しかし禁断の香りが微妙だ・・・うーん、やっぱり
先生って職業に妄想抱いたことがないからなあ。