王女様の退屈。
オリジナル作品です。
長文になります。
一度書いてみたかった王女と護衛のカップリング。
「殿下。本日と明日のスケジュールです」
ハンサムだけど無愛想な秘書兼護衛が私にスケジュール表を手渡す。
「・・・明日、日本を離れるというのに、どうしてスケジュールがいっぱいなの?せっかくお母様が生まれた国に来たのに!行ってみたいところ、たくさんあるのにいいいっ。明日は滞在最終日なのよ?」
「殿下。あなたは王妃殿下の名代としてこちらにいらっしゃってるのです。だいたい殿下の行きたい場所は、どこも人が多すぎて護衛しづらいので却下です。」
「お母様に日本語だって教わって、しゃべれるようになったのにっ!!お願い、ピエール。そのリスト全部とは言わないわ。どこか一ヶ所でいいの」
侍従長には有効な上目遣いでピエールを見るけれど、鼻で笑ったあげくに「私にはその手は効きませんよ。殿下、そろそろ仕度してください」とあしらわれてしまった。
く、くやしいっ!!
結局ピエールと大使が立てたスケジュールをこなしたらあっという間に夜8時になってしまった。 今日は珍しくパーティの予定はなく、ひたすらのんびり。でも退屈。
窓から見る風景はキラキラしてて宝石みたい・・・・外に出てみたいなあ・・・・でもドアにはピエールの部下が張り付いてるし。
はあ~とため息をついてベッドにダイブ。つまんないからテレビでも見ようかなあ。いつも部屋に到着したら身支度してすぐに寝ちゃうから、日本のテレビって見たことないのよね~。
電源をいれると、男の人2人が何か話すと観客の笑い声がする番組が映った。
「うーん、どうやらスタンダップコメディ?」
日本のコメディについてもっと勉強してくるんだったわ・・・そのままぼんやり見ていると、今度は、なんだかハンサムな男の子が出てきてなにやら女の子に話しかけているような画面になった。そして男の子がアップになって「ケーキとぼくのキス、どっちがすき?」。
「えっ?えーっ??」何、何この番組??こ、こんなこと、言われたら私、どうしよう??どきどきしながら続きを見ていると、画面に映ったのはチョコレートケーキ。
さっきのセリフを言った男の子が「~の初恋ショコラ。さあ、どっちを選ぶ?」とケーキを持って微笑んでいた。
「なんだ~・・・コマーシャルかあ。」
美味しそうなチョコレートケーキだったなあ。もちろん日本に滞在している今も一流の料理人によるすばらしい食事をしているけれど・・・・食べてみたいなあ・・・初恋ショコラ。
するとドアをノックする音が。「どうぞ」と返事をすると、ピエールが顔を出した。
「殿下。申し訳ありませんが、ちょっと警備関係の打合せをしますのでドアから護衛がいなくなります。くれぐれも外に出てはいけませんよ。いいですね?」
渡りに船!!なんて素敵!!でも、ここで疑われちゃだめ、私。
「そう。わかったわ・・・私、くたびれてるもの。外になんか出る気力もないわ」
さっきのケーキ、コンビニで売ってるって言ってた。とりあえず日本のコンビニのマークとケーキの画像をスマートフォンでしっかり画像を確認し、こっそり持ってきたカジュアルな服に着替える。 女官にこっそり頼んで両替してもらった日本のお金と電話も忘れないようにしなくちゃ。
念のため、そうっと玄関を開けるとホントに護衛がいない!私はにんまり笑うといそいそとドアの外に出た。いつも人前ではスーツかドレスですもの、こんなカジュアルな格好すれば分かるわけないもんね。
私はロビーでコンシェルジュにコンビニの場所を地図に書いてもらうと意気揚々と外に出た。今の私はエドウィーナ=サクラ・ウェルベール王女じゃなくて、ただのウィーナ!
地図を見ながら教えてもらったコンビニに到着し、さっそく店の中をまわりながら「初恋ショコラ」を探す。それにしても日本の「コンビニ」というのは、いろいろなものが売っているのねえ・・・デザートがたくさんある場所に到着し、お目当ての「初恋ショコラ」発見!
手にとって、レジに向かおうとしたときに後ろから、低い声で「お目当てのものは見つかりましたか?殿下」と母国語の聞き覚えのある声がした・・・・。
「外に出てはいけませんと私は言いましたよね」
「・・・・はい。」
「もっとも、あんなに自由行動したい~とわめいていた殿下が、素直に言うこと聞いた時点で怪しかったので密かに手配しておりましたが。」
「だって、明日もスケジュールがびっちりで一番長い自由時間が今日しかないんですもの。それに・・・」
私がコンビニの袋に視線をうつすとピエールも同じ方向をみる。結局、彼が支払ってくれたのよね。
「あのケーキがそんなに食べたかったのですか?殿下。私に言ってくだされば買って来ましたのに。」
「自分で買いたかったの!!」
初恋ショコラ・・・初恋って、ネットで調べたら初めての恋のことを日本語でそう言うって出た。
私の初恋は・・・お父様が「ウィーナ、今日から彼がお前の護衛につくからね。年齢は22歳で、警備長官のお墨付きだ」と紹介された10歳の誕生日の日からずっとだ。
そんな相手に「初恋ショコラが食べたいから買ってきて」なんて絶対にいえない。
買ってきたケーキを食べていると、ピエールが部屋にやってきた。
「あ、殿下。明日のスケジュールが変更になりましたよ」
「ふーん・・・そう」
そう言って、ピエールからもらった紙を手に取った。
「え?!ピエール、これって??」
「殿下の“行きたい場所リスト”さすがに全部は無理ですが・・・ここくらいなら飛行機に乗るまでは回れるだろうということになりました。」
「まあ・・・ありがとう、ピエール。」
私がお礼をいうと、ピエールが優しく微笑む。普段めったに表情を崩さないだけに・・・反則だ。赤くなった顔を見られないように、私は下を向いてひたすらケーキを食べることに専念した。
読了ありがとうございました。
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