比べるのはまだ早い?
図書委員会の恋愛事情より:圭吾&涼乃
「見てみてっ。ようやく見つけたわよっ。ほら!!」
唯ちゃんがコンビニの袋から取り出したのは、プラスチックのケースに入ったチョコレートケーキ“初恋ショコラ”
透明なプラスチックの容器と黒色のフタに金のリボンがかけられた外見。肝心のケーキは生チョコをたべているようなしっとりとした食感で濃厚な味。なのに カロリーは控えめというチョコレート好きの女子にはたまらないこの商品は、名前のインパクトとその美味しさ、さらに“ケーキとぼくのキス、どっちがすき?”のCMで発売と同時に大人気になり、今やなかなかめぐり合えない“幻の商品”となっている。
「唯ちゃん、すごいっ。よく見つけたね」
「朝コンビニに行ったら奇跡的に一個だけ残ってたんだあ。涼乃も一口どう?」
唯ちゃんに勧められて一口だけいただく。・・・・口に入れるとチョコの濃厚さが広がる。なのにしつこくなくて、なめらかだ。うわー、人気あるのわかるよっ。
キスといえば・・ふと泰斗祭での出来事を思い出す・・・あのときの圭吾くん、なんか色っぽかったなあ・・・。
「涼乃、何か顔が赤いけど、どうしたの?」
「あ、赤い?えーっと、なんか暑くてさ~、あははははっ」
唯ちゃんはけげんそうな顔をしたものの、深くつっこんでこなかった。
圭吾くんと正門で待ち合わせをして一緒に帰る。
「あ、コンビニ寄ってもいい?」
「うん、いいよ」
どうやら圭吾くんはコピー機を使いたいらしく、まっすぐにその方向へ歩いていく。私はぶらぶらとコンビニのなかを歩くことにした。
そうだ、あのケーキは売ってるかなあ・・・私はデザート売り場へ足を向けた。
プリンにゼリー、エクレアにロールケーキとシュークリーム、杏仁豆腐・・・順々に見ていくけど、やっぱりなかなか見つからない。唯ちゃんみたいに朝のコンビニに行ってみたほうが確率高いかも。
「涼乃、何探してるの?」
「ん?初恋ショコラ」
「えっ?」
けげんに思ってデザートから見上げると、そこには顔を赤らめた圭吾くんがたっていた。
思わず目があって、私も急に恥ずかしくなる。
「あ、あのCMすごいよね・・・名前もすごいけど」
「う、うん。でしょう?でも、すっごく人気があってなかなか買えないんだよ。今日、唯ちゃんから一口もらったんだけど、すっごく美味しいのっ・・・圭吾くんの買い物は終わった?」
「うん。俺は、コピーをとりたかっただけだから・・・その・・・見つかりそう?」
「あ・・・ううんっ。ないみたいっ。で、出ようっ」
「いいの?」
「う、うんっ。昨日ケーキ食べたしっ。今日は我慢する」
今は買えない。恥ずかしすぎる・・・ううう、唯ちゃんか恵ちゃんと一緒のときに探そう・・・。
一緒に帰るときは、少しだけ遠回りをして圭吾くんが私の住んでるマンションの前まで送ってくれるパターンが定着している。部活で疲れてるだろうからいいと断ったんだけど「涼乃は俺と一緒にいたくないの?」と言われてしまっては、何も言えない。
「・・・涼乃」
圭吾くんの顔が近づいてくる・・・相変わらず整った顔してるよなあ・・・と思いつつ、慌てて目を閉じる。
唇がふれるだけのキス・・・・んんっ??なんか息が苦しいっ??
「ふぁ・・・・」思わず口をあけると、中にするりと入ってきたのは・・・し、舌???
「んっ・・・」私の歯列と舌をなめてからませた圭吾くんが私をぎゅっと抱きしめる。
もう・・・なんか力が入らないよう・・・私がぐったりしたのがわかったのか、圭吾くんの腕はますます力をこめる。
キスが終わったときには、わたしは圭吾くんにもたれかかる形になっていた。
こ、これがあの、深いキスってやつっすか!!・・・隣の圭吾くんはなんだか嬉しそうだし・・・・どうして私だけキスでこんなに疲れるんだ・・・でも、結局どっちがいいかなんて、私には全然わからなかった。
読了ありがとうございました。
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