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あの夏の薫り  作者:
1/1

出会い

 「さよなら・・・」



 懐かしい夢で目を覚ました。時計は午前十時を指している。外でははいつものように蝉がうるさく鳴いている。

暑い。そう思いながら冷蔵庫から牛乳を取り出し、飲んだ。

最近同じ夢を何度も見る。まだ僕が中学生だった頃の夢だ。夏だからだろうか。と僕は思う。

そう、あの日も今日のように暑かった。



 八月。冷房が寒い。夏休みに入って何日経っただろうか。僕はずっと冷房をきかせた部屋で、だらだらと過ごしていた。

そんな僕をみて、父は僕に島に行くように言った。

島とは、父の故郷である。父の両親が住んでいる。僕にとっての祖父母だ。自然が豊富なことで有名で、わりと観光客も多い。

このだらだらした生活にも飽きていた僕はそれを了承した。

そして次の日、飛行機に乗りそして船に乗って島にある祖父母の家に着いたのだった。

久しぶりにみる祖父母はどちらもまだ元気そうだった。

僕はさっそく海に行くことにした。祖父母にそのことを伝え、水着と着替えをまだ新しいエナメルバッグに詰め込み、外へ出た。

外へ出たと同時に日差しが僕を攻撃する。暑い。暑かった。

祖父母の家から海まではバスで行かなければならない。田舎の交通手段はこれしかないのだ。


 僕はイライラしていた。バスが来ないのだ。一時間に一回しか来ないうえに、時間にルーズなバスだ。

僕ははやく海に行きたかった。この暑い中待たされてる僕のイライラはもう限界に達していた。

僕は近くにあったガードレールを思いっきり蹴飛ばした。ゴ―ンという音が響く。

足がじんじんした。

僕は近くに人が立っているのに気づいた。今のバカな行為も見られたかと思い、すこし恥ずかしくなった。

どうやら女の子であるようだった。大きな白い帽子を被っていて顔は分からないが、僕より背は低い。

一つ下くらいかなと分析してみる。白いワンピースに白い帽子。

僕が見ているのに気がついたのか、彼女がこっちを見た

「みかけない顔だね。名前は。」

風が吹いた・・・気がした。

「輝。」

僕は答えた。彼女はわずかに微笑みながら。

「輝君か。私は薫。」

薫か。良い名前だ。彼女にぴったりな気がした。

彼女がまた微笑んだ。僕は微笑み返してみた。

これが出会いだった。

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