†1† 堕ちた世界
白い嵐が消え、ソラは空中へ放り出された。勢いよく飛ばされ、地面に全身を強打する。
「かっ・・」
肺の中の空気が一瞬にして外へと追いやられ、酸素が欠乏し意識が遠ざかる。
「この辺りで聞える。空間のざわめきが・・・。恐ろしや。悪魔だわ・・・悪魔がこの世界に・・・」
「パナム、それを俺のときも聞いたぞ。俺が悪魔と言いたいのか?」
「いいえ違うわフィリヌバ・・・貴方のときは勘違いしただけよ。今度は感じる・・・空間が叫ぶ声が・・・・。アァァァーーーーーーーッッ!!」
「パナム、いいか?落ち着け。お前の能力は確かだ。確かに誰かがここに来たんだろう。いいか、そいつが悪魔でも何でも、敵なら俺の剣で倒せるだろ、な?俺を信じろ」
カサカサと草を掻き分ける音がする。いや、草ではない。草ではない何かを掻き分ける音がした。
「いたわ!悪魔!悪魔の子!!」
「・・・パナム、違う。これは人間だ・・・。俺と同じ・・・時も場所もあるところからやってきた青年だ・・・」
遠くから人間ともなんとも言えない生物の声がした。
「う・・・ヒック・・パナムが叫んだ、叫んだ!悪魔が現れたぞぉー・・ヒック・悪魔ぁー!」
フィリヌバと呼ばれた男がため息をついて叫びかえす。
「黙れウリグラ!悪魔は来ない!!いいから黙れ!!」
そう叫ぶとパッタリと謎の叫び声は消えた。
「悪魔・・悪魔、悪魔、悪魔・・・」
「パナム、落ち着け。冷静になるんだ。悪魔は人間の姿でいられないと予知したのはお前だろ」
パナムと呼ばれた女が胸に手をあてながら言う。
「そうね。私の予知に間違いはないはずよ・・・あぁ神さま!私はどうなってしまうの!?」
「神様なんていないさ。運命は俺達自身で切り開くものだ。パナム、お前は先に戻れ。俺が後からこの子を連れて行く。いいか、悪魔なんていない。来れないんだ」
そういうと男はソラを抱きかかえた。男の背中には、男の体と同じほどの長さの剣があった。