†5† 一筋の光
「えっ・・・?」
ソラは顔をあげた。その顔が希望に輝く。
「本当か?本当なのか、アリバン!!」
アリバンは暗い表情で答えた。
「あぁ。だが・・・」
「だが何だよ!どんなに可能性が低くても、出来るんならやるしかないだろ?」
「ソラ、落ち着いて話を聞いてくれ」
アリバンが赤い瞳を不安で曇らせたまま言った。
「昔、時空の民という1つの部族がいた・・・」
時空の民の娘や息子は、それぞれ普通には持つことの出来ない特殊能力を持っていた。時空の民の持つ力に『精神の治癒』というのがあった。つまり、時空の民を見つけられればフィナを助けられるのだ。
しかし、その能力を持つのは純血の時空の民の娘。かつて時空の民には旅の部族と同じように部族内でしか結婚してはならないという掟があった。
それが原因で時空の民の人口が激減した。後に部族外でも結婚を認められるようになった。
この2つの要因から純血の時空の民は激減した。それに娘にしか行えないということはさらに出会える可能性は低くなるだろう。
また時空の民は自らの能力を部族外に見せようとしない。自分に利益がなければなおさらだ。
これら全てを視野に入れて考えると精神を元通りにできる可能性は0%に近い。
「そんな・・・」
ソラは力なく椅子にもたれかかった。
「これがヒントになるのか分からない。でも、知っておいたほうがいいよな」
「何がだ?」
「純血の時空の民には腕に独特のタトゥーのような刻印があるらしい。それはそいつの能力によって形が変わってしまう。まぁ、銀色のタトゥーを両腕全体にしている女がいたら話しかけろってことだ」
「そうか・・・」
アリバンが顔を伏せた。助けられないのかもしれない。
「俺も一緒に時空の民の娘を探す。半純血でも、混血でも、手のひらに小さくタトゥーが残る。もしかしたら純血の時空の民の娘を知っているかもしれないからな」
ソラは窓の外を見た。雷がピカッと光る。
俺は、純血の時空の民の娘を死んでも探し出す。
そして、必ず母さんを取り戻してみせる。
そうすれば、いつかきっと父さんのことも乗り越えられる。
そうできたら、リナムと母さんと一緒に3人で笑ってこの村で生きよう。
ソラの瞳に、炎が燃えた。