†1† 堕ちる
ソラは剣を女に突きつけた。ひぃっ、と女が声をあげる。ソラは冷たい光を瞳に宿しながら言った。
「金は?返せるのか、返せないのか?」
「どうかお許しください・・夫は、病死し・・・・少ない儲けで・・やっと・子供たちを食べさせていけるんです」
ソラは眉をピクリと上げて言った。
「食わせる事ができるのだろう?多少減らしたところで飢えることはない」
そんなっと女が言うのを黙らせた。
「ならお前の子を奴隷市へ出すしかあるまい」
女はそれはおやめください、と言った。
「利子も、とは言わない。貸した金は返せ」
「今・・家には・一銭もありません」
子供達が怯えた表情でこちらをじっと見ている。長男が泣いている小さな妹をあやし、長女が他を落ち着かせようとしていた。二人とも、まだ13にもなってはいないだろう。
「なら命で返してもらおう」
さらに剣を首に近づけた。その瞬間
「やめろーーーっっ!!」
と叫んで長男が手に(ソラの剣の4分の1ほどしかないような)剣を持ち、突っ込んできた。ソラは女を突き飛ばし、自らの剣ではじきかえした。それでも長男は雄たけびを上げて突っ込んでくる。ソラは何度かはじき、彼の手をひねって剣を落とさせた。長男は怒りをこめた目でソラを見上げている。
「なかなか荒削りだがいい度胸だ。名は?」
「・・ノラーン」
「そうか、ノラーン、か・・・。奴隷市に出せば兵士として高額で売れるだろう。借金なんてらくらく返せるほどな」
「やめてっ!」
長女が叫んだ。ノラーンは心配いらないよ、ランナ。大丈夫だよ、と声をかけている。
ついて来い、と強引にノラーンの手を引き、ソラは出ていこうした。しかし、眼前に母親が立ちふさがった。ぶつぶつと古代の言葉を唱えている。
「お前、まさか・・・」
ソラは呟いた。
「時空の民の娘かッッ!!?」
そう叫んだ瞬間、女は呪文を唱え終えた。ぶわっと冷たい竜巻がソラをさらい、白く、白く、白く・・・・・。
ソラはその間に、こんなことを考えていた。リナムは狂ってしまった母さんと残されて、生きていけるのか・・・・・・・?