表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
†時空の狭間にて。†  作者: 清水 ミレイ
‡第2章‡
10/11

†2† フィリヌバ

 意識を取り戻し、目を開けると藁のようなもので作られた寝具に横にされていた。


「起きたか?」


と、先ほどの声が言った。ソラはうぅっ、と呻きながら体を起こした。そして男を見た。灰色の髪を長く伸ばし、一つに束ねている。目も髪と同じ灰色だ。整った顔立ちをして、背には両手剣がある。


「・・時空の・・狭間・か・・・・?」


ソラは訊ねた。男は驚いたような表情をして言った。


「知っているのか?俺は始めてきたとき地獄かと思ったぞ」


そういって男は椅子を自分の方へ引き寄せると座った。


「自己紹介がまだだな。俺はフィリヌバ。お前と同じように時間も場所もある世界から来た。」


「ここは、時間も場所もない・・。ただ、点が在るだけ・・」


よく知っているんだな、とフィルヌバは言った。全て調べ上げたのだ。アリバンと一緒に。アリバンはどうしているのだろう?


「お前は?」


フィリヌバに言われて顔を上げた。


「俺はソラ。金貸しをやってた」


「金貸し?そんな仕事を何で?」


「父さんが・・」


一呼吸してまた話した。


「やってたんだ。金貸し。でも・・・・」


あの時のことを思い出すと、涙がこみ上げてくる。優しかった父。父が母と子を裏切ったなんて・・・。


「でも・・?」


「逃げたんだ。父さん。別の女の人と」


そうか、とフィリヌバが言った。奥の部屋から女の人が喚く声が聞えてきた。


なんだろう?と思っていると、フィリヌバがそれを察して苦笑しながら言った。


「パナムが悪魔が来たと思っていたんだよ。悪魔が恐ろしくて、よくああやって叫ぶんだ。でも、彼女は特別な力に恵まれている。・・何かあったら彼女に相談するのが無難だろう」



 叫び声がぱったり途絶えて、木製のドアが開いた。


「パナム」


緑の瞳と青白い肌が隙間から見える。


「私は予知したの。ずっとずっと昔。悪魔がここに来るって」


「わかったよ、でもこいつは悪魔じゃない。だろ?紹介するよソラ。彼女がパナム」


パナムは恐る恐るというように部屋へ入ってきた。青白い肌とは対照的に燃えるような赤毛だ。


「はじめまして、パナム。俺はソラ。よろしく」


「・・・・。ない」


どうした?とフィリヌバが言った。しかしその声は、パナムに届いていなかった。


「何故?何故貴方には何も無いの?」


「どういうこと?」


パナムは目をかっと開いている。


「感じないの。何も。悪魔ならわかるわ。でも・・・・貴方は何も感じない。何故?貴方は何?」


パナムよせ、とフィリヌバが焦ったように言う。


「何?どういうこと?俺は人だ。人間だ」


「いいえ違うわ。人もわかるもの。違う、貴方は違う」


「パナム、やめろ!!」


フィリヌバが焦って叫ぶ。今のパナムは何も聞えていないし、見えてもいない。ソラは寒気に襲われた。


「貴方は、何?何故?貴方は・・・そう貴方は、そうよ、きっとそう!貴方は・・・……―――」


パナムががくりと崩れた。ソラが恐る恐る呼びかけた。


「パナム?」


ピクリとも動かず、倒れたままだ。


「すまない、ソラ。こういうことは滅多にないんだが・・・」


フィリヌバも動揺を隠せないようだった。


「俺は・・・人じゃないのか・・・?」


「ソラ、その質問はパナムしか答えられないだろう。・・・どちらにせよ、今は無理だ。ちょと待っていてくれ。パナムを寝かしておくから」


フィリヌバはそういうと、パナムを抱きかかえて出て行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ