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少女と魔竜騎士

第一話「少女と魔竜騎士ドラグナー


想いが紡ぐ異世界グランレガシア


魔物と呼ばれる脅威、人間同士の争い、世界のいざこざから遠く離れた辺境の地


そこある小さな集落に暮らす一人の少女がいた


彼女の名は『ヴィオレット・アルトメリア』


長い紫髪を三つ編みに結び、紅色と蒼色の瞳のオッドアイを宿した幼き少女


右目である紅色の瞳を髪で隠し、気弱で内気そうな雰囲気を醸し出す彼女は


村人からは「ヴィオレ」と愛称で親しまれていた。


集落より少し離れた湖の畔の一軒家に彼女は一人暮らしている。


幼き日に母を亡くした少女は深い悲しみを背負いながらもそれでも前を向いて逞しく育っていた。


村の人も彼女を大事に思い、村人たちと支え合って暮らしていたのであった。


そんな平穏な毎日の中で少女は12歳の誕生日を迎える。


そして物語は彼女が12歳になってまだ浅いある日から、この物語は始まりを迎えるのである。

そしてそれは彼女にとって決して忘れることのない日となる。



村でのヴィオレの仕事は森で薬草を摘み、それを薬にして村に売る仕事をしていた。


人よりも目利きの出来るヴィオレは薬草の選別が得意であり、亡き母親から教わった薬の調合のやり方で薬を作っていた。


彼女が摘んできた薬草で作った薬は村の他の人が作るもの以上に効き目があり、村一番の薬師として評判であった。


ヴィオレは今日も村付近の森に出向き、薬草を摘みに来ていた。


村の外には獣や魔物が存在するので魔除けのお守りを握りしめて出かけるのであった。


「♪~♪~」


小鳥たちが囀り、春の暖かな日差しが降り注ぐ喉かな昼下がり


薬草が自生する薬草畑で鼻歌混じりで薬草を採取するヴィオレ


彼女にとってここは幼い頃から立ち入り自身の庭ともいえる場所である。


危険な野生生物も魔物も生息はしておらず、気の赴くままに採取することができる。


今日の彼女は気分がよかったのでもっと森の奥の方にいって採取をしようとしていた

そして彼女は勇み足で森の奥深くへと進む。


この森の奥深くには古の時代に作られたとされる遺跡の跡地が今も残り続けていた。


昔、村の人がこの遺跡を調査したが遺跡には目新しいものは何も眠ってはおらず、それ故に人々に忘れられた遺跡、「忘却の遺跡」と呼ばれていたのだ。


貴重なお宝も眠っていないこの地に訪れるという物好きな人間など殆どおらず

その貴重な物好きこそがヴィオレであった。


遺跡の通路を慣れた足取りで進んでゆき、遺跡の奥地にたどり着く、ヴィオレ


崩れた遺跡の天井からは暖かい光が差し込み、その奥にある花畑を照らす。


「わぁ…やっぱりここは綺麗…」


ヴィオレがこの遺跡に訪れる理由の一つがこの遺跡の奥にある、あたり一面に広がる綺麗な花畑


彼女が初めてこの遺跡に迷い込んだ時に、発見したこの遺跡に咲き誇る花畑の美しさに目を奪われ惹かれた彼女は何度もここを訪れている

云わば彼女の秘密の隠れ家的な場所でもあった。


手頃な遺跡の残骸にちょこんと座り、色とりどりの花畑を眺めるヴィオレ


如何せん警戒心が薄く、暖かな日差しもあって徐々にウトウトして眠くなってしまう

「…少し寝ちゃってもいいよね…?」

大丈夫ここには危険な動物も魔物もいないからという普通なら危うい判断能力から


ついにその場所で眠りこけてしまうヴィオレ。



そこは少女の夢の中


深い眠りの中でヴィオレは夢の中で声がした。


真っ暗な闇に中、どこからか声が聞こえてくる


(…めざめよ…)

「だれ?」


その声はどこか懐かしい響きで、夢の中のヴィオレは無意識にその声に導かれるように暗い闇の中を突き進むヴィオレ。


声に導かれるままに歩き続けた先にそこには真っ暗な闇の底には何かが鎖に縛られ突き刺さっていた。


それはまるで封印された一振りの武器にも鎖に繋がれた獣にもヴィオレは見えた。


闇の中に突き立てられたそれはヴィオレが近づいたのに気づいたのか瞳のようなものを光らせる。


(ようやく、目覚めたか…)


高圧的で驕りを感じる口調の声の主


それはまるで自分のことを知っているような口ぶりであった。


しかしヴィオレはこの声の者のことなど知りもしない、心当たりもない


過去の記憶から思い出そうにも全く、思い出すことはできなかった。


「貴方は誰なの…?」


ヴィオレは声に主に名を尋ねる


(■■■■■…俺の名は■■■■■)


自身の名を告げようとするがノイズが走るように肝心の名を聞き取ることができなかった。


(小娘よ、俺を引き抜け、そうすれば俺は…)


ヴィオレは言っていることがわからなかった


しかし、引き抜くということはつまり、目の前に突き刺さる物体なのかも生き物なのかもわからない「ソレ」を引き抜くことを意味していた。


少女は恐れていた


なぜかはわからないが、もしもこれを引き抜けば、自分は後戻りができないような気がしてならなかった。


(何を躊躇っている小娘よ、お前もそれを望んでいるはず)


「わたしがそれを望んでいる…?わたしのことを知っているのいきなりそんなことを言われてもわからない、それにどうして貴方はわたしのことをしっているの?」


そうこうしているうちに世界は静かに崩壊をしてゆく、どうやら現実の自分が夢から覚めようとしているのであろう。


(時間か…まぁいい、時が来れば必ずお前は俺を必要とする、その時お前は俺との契約を…)

最後に何かを言おうとしていたがヴィオレは目を覚ましてしまう。


「ううん…夢…?…それにしてははっきりと覚えている…」


ぼんやりとした意識の中で夢のことを思い出そうとする。


夢のはずなのにヴィオレ自身があの闇の中に実際にいたかのようなくっきりしっかり記憶に残る夢であった。

生まれてこの方ヴィオレがこんな体験をしたことは一度もなかった


そんなこと目覚めて考えていると、既に時刻が夕暮れ時であるであることに気づく


どうやらかなりけっこうな時間、眠ってしまっていたらしく、帰りが遅くなれば村の人たちは凄い心配するであろう


ヴィオレは焦り、急いで村に帰ろうと遺跡を後にする。


村への帰り道、走りもうすっかり日が暮れたタイミングで異変は起きた


森の中を走るヴィオレは不意に物陰から大きなガサガサという音がして、立ち止まってしまうのであった。


普段なら気にも留めない筈の音であるが、こんな暗い時間帯、流石に怖いのか反射的に気になってしまった


しかし、それだけではない

何故か、少女の直感的なものが自然と恐れを感じて反応してしまった


草を描き分け物陰から出てきたのは一匹の兎であった


「なんだ、兎さんか…よかった…」


変な夢を見てしまったのもあって自分は気にしすぎただけだとホッとしたヴィオレ


安心したヴィオレはこうして村への帰路へ向かおうとした次の瞬間であった


グシャッ!!!

という生々しい音が森に鳴り響く


「…えっ?」

背後を振り向くとそこには無残な肉塊と化した兎、巨体な怪物に喰われる光景が広がっていた。


そこには巨大で鋭い牙と爪を持った魔物が、兎を食い千切り捕食をしていた。


ヴィオレは何が起きたのか一瞬理解することができなかった


一瞬の静寂の中


ヴィオレの本能は


『にげろ』


と警告を鳴らした。


ヴィオレは恐怖から魔物の反対の方を向いて逃げ出すのであった。


遺跡の中に逃げ込んだヴィオレは転び足を擦り剝きながら、必死に走り逃げるのであった。


今まさに辺境の村に暮らす一人の少女ヴィオレット・アルトメリアは人生で一番の窮地に陥っていた。


ヴィオレは過去に村の人に言われたことを思い出す。


本来魔物は、街や集落などに設置された魔除け石によって近づくことはできない。


故に人々の生活と安全は守られてきた


森や忘却の遺跡も様々な調査によって安全が確認されており、この地一帯に魔物は生息していないと言われてきた。


実際にヴィオレがこれまでの人生で直接魔物を見たのは初めてであり、幼い頃に読んだ本の中でしか魔物を知らなかった。


先ほどヴィオレがその目で見た怪物は本でみた怪物の絵と酷似していた。


今のヴィオレの心にあったのは魔物への恐怖で一杯であった。


遺跡の中に隠れたヴィオレは物陰に隠れ息を押し殺し、魔物の足音に恐怖をしながら、ただ魔物が立ち去るのを待つしかなかった。


(おねがい…はやくどっかいってよ…!)


しばらくして、足音が止まり


魔物がどっかを去ったとほんの少しだけ安堵をするヴィオレであった


しかしそれは逆である


魔物はまるでヴィオレがそこにいたのを知っていたかのように隠れていた遺跡の残骸を破壊し、そこに隠れていたヴィオレが魔物の目の前に晒される


「ひっ…」


咄嗟に立ち上がり、逃げ出そうとするヴィオレ

であったが逃げるよりも先に魔物の振るう腕がヴィオレに直撃してしまう。

ドゴォ!という殴られた音

ヴィオレはそのまま吹き飛ばされ遺跡の壁に叩きつけられてしまう。


「あがぁ…」


壁に叩き付けられたヴィオレはそのまま地面に崩れ落ちてしまい、身体からは血を滲ませ、立つことすらもままならず、壁に寄りかかることしかできない。


五体満足で生きているのが不思議なくらいにはヴィオレの身体には痛みと魔物への恐怖心でいっぱいで

「痛い…怖いよ…」

と瞳の涙を零して恐怖で怯えるしかなかった。


ゆっくりとヴィオレに近づく、魔物


その足音はまるで死へのカウントダウンのようであった。


(あぁわたしはここでこの化け物に殺されるんだ…このまま嬲り殺されて、食べられるんだ…)


心の中に絶望が宿り、ヴィオレは目を瞑り、全てをあきらめようとした。


そして魔物の凶爪がヴィオレに振り下ろされる


魔物の凶爪はヴィオレには届くことはなかった。


恐る恐る目を開けるヴィオレ


彼女の眼前に映るものは、魔物の凶爪を受け止める、ヴィオレの身体を通して発生した謎の霊体であった。


(やれやれ…ようやく、目を覚ましたとおもったら、いきなり死にかけていて世話の焼ける小娘だ…)


凶爪を受け止めるエネルギー体はヴィオレに話かける。


この声は先ほどの夢でヴィオレに語り掛けてきた声の主であった。


「貴方は…?」


(話は後にしろ、今はこいつを倒すぞ)


霊体は魔物を吹き飛ばす、魔物は遠くに吹き飛ばされ、壁に激突し瓦礫に埋もれる


しかし、倒し切ることはできていない、瓦礫の中から這い出てきて再び襲い掛かってくる気配を感じる。


(やはり、今のこの状態では、倒し切ることができないか…)


その力で魔物を吹き飛ばすほどの力を持つ霊体であったが、それが今できる限界であったのか、膝を着き、その身体を維持することができないほど希薄になってゆくのだった。


霊体は状況を飲み込めていないヴィオレに向かい合うと語りかけるのだった。


(小娘よ、俺と契約をしろ、そうすればこの状況をなんとかしてやる)


「契約…?どういうことなの…?それにどうしてわたしの身体から溢れているこの力は何なんですか…?」


(いいから、早くしろ小娘、死にたいのか)


ヴィオレには契約だとか自分から溢れてくるこの力とこの霊体がなんであるかなど

訳が分からなかった


しかし、拒否権が最初からないことぐらいは彼女の小さな頭でも理解できた


もしもここで声に従わなければ、瓦礫から這い出ようとするあの魔物に自身は殺されるであろう。


ヴィオレは素直に従うことにした。


「…わかった、お願い力を貸して…わたしは何をすればいいの…?」


(今からお前に契約の一文を教える、これを想いを込めて言え)


そういうと頭の中に言葉がすっと入ってくる。


これは言えばいいんだと少女は


涙目になり痛みを堪えながら立ち上がり、少女は決意をする。


ギュッと胸を握りしめるとまるで火が灯るかのように魔力が身体から溢れだす。


意を込めてヴィオレはその名と契約の言葉を叫ぶ


「契約者のヴィオレット・アルトメリアの名の元に、魔竜騎士よ、その姿を現せ!」


(叫べ我が名は…)

「汝の名は…」

「ドラグニル!」


瞬間、少女の全身から淡い蒼色の魔力が放出される。


大気を震わせ、魔力の波動は一つの形を作り出す。


魔力は身体を持たぬ霊体に肉付けをするように


血となり、骨となり、雄々しくも荒々しき竜の化身を生み出す。


そして竜を思わせる頭部と騎士の如き鎧に身を包んだ


異形ともいえる姿を現す


「まるで、竜騎士…」


そう言わざる負えないその姿を見たヴィオレは息をのんでつぶやいた


気が付けば、魔物は瓦礫の中から這い出て、怒り、咆哮する


そして竜騎士を目掛けて、突撃をする。


「危ない!」


竜騎士の背後にいるヴィオレはこの竜騎士を心配する


しかし、竜騎士は自分よりも巨体の魔物の攻撃を受け止め、力強く掴み上げて

その身体を引きちぎる。


「グギャアアアアア!!!」


自分の肉体を引きちぎられて悲鳴を上げるが、竜騎士は構うことなく、その拳で殴り飛ばして、吹き飛ばす


魔物はそのまま吹き飛ばされるが、完全には戦意を喪失してはおらず、竜騎士を叩き潰そうとするのであった。


「あの魔物まだ…」


あれだけやっても倒れることなく戦おうとする魔物の生命力に恐怖するヴィオレ


対峙する竜騎士は魔物に止めを刺すべく、力を溜める。


竜の口には魔力が集まり、熱量を生む


そして口内で溜められた炎は今、魔物に放たれようとしていた。


『魔竜の砲哮ドラゴン・カノン!!!』


竜騎士の口から放たれる強力な火球


一直線に魔物へと飛んで行き、


火球が魔物に着弾すると魔物を炎で包み込む


魔物の悲鳴と共に一瞬のうちに焼き尽くされ、魔物は消し飛ぶのであった


あそこまで恐れていた魔物は跡形もなくなくなったのだった。


「凄い…」

その竜の一撃にヴィオレは息を飲んで驚愕するしかなかった


そして改めて少女と竜騎士は月明かりが照らす中で対峙する


ヴィオレは色々と聞きたいことがあった


しかし、言葉を紡ごうとした次の瞬間に身体は鉛のように重く意識が消えそうになる。


「どうやら、限界のようだな、まぁ使ってなかった魔力をいきなり大量に消費したからな、戦っている間に意識を失わなかっただけでも上出来だ小娘」


朦朧とする意識の中で竜騎士がそんなことを言っていたが


ヴィオレの心と体は限界を迎え


ゆっくりと床に倒れ伏す


意識を失う中で彼女の前に立つ一体の竜騎士の姿は決して忘れることはない


こうして少女の物語は始まりを迎えるのであった。

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