第四部 第四十五章~四十九章
第四部:世界征服・タピオカ航路編 —— 溢れる真珠と帝国の野望
独立宣言から一年。エリカ帝国は、北海道という「要塞」から、ついに世界という「市場」へとその触手を伸ばし始めた。きっかけは、エリカの何気ない、しかし帝国の根幹を揺るがす一言だった。
「九条! このタピオカ、弾力が足りないわ! 私は、世界一のキャッサバと、世界一の茶葉と、世界一のミネラルウォーターで作った『究極の一杯』を、毎日三食、蛇口から出したいの!」
「……おやおや。ついに原材料の自給自足ではなく、世界のサプライチェーンを掌握せよとの命ですね。……承知しました。では、始めましょう。世界を一杯のティーカップに閉じ込める、『タピオカ航路』の開拓を」
第四十五章:出航! 黄金の紅茶艦隊とメイドの進撃
エリカシティーの港から、前代未聞の艦隊が出航した。 かつて海上自衛隊の護衛艦だった船体は、エリカの趣味で全面が「シャンパンゴールド」に塗装され、大砲の代わりに巨大な「高圧タピオカ射出機」が装備されている。旗艦『クイーン・エリカ一世号』の艦橋では、アザラシの着ぐるみを卒業し、今度は「提督風のゴスロリ衣装」に身を包んだエリカが、水平線を指差していた。
「進め! 私の欲望のままに! まずは東南アジアのキャッサバ農園を私のプライベート・ガーデンにするわよ!」
「……了解です、エリカ提督。……海面は、私の鋼線で『鏡』のようにしておきました。……船酔いする暇も、ありません」
小雪が、海上に張り巡らせた超極細の鋼線で波を鎮め(!)、艦隊は物理法則を無視した滑らかさで突き進む。一方、甲板ではマリアが「海洋プラスチックゴミがわたくしの視界を汚すのは許せませんわ!」と叫びながら、巨大な網で太平洋を丸ごと掃除していた。
第四十六章:マラッカ海峡の決闘! 心理工学vs大洋の要塞
エリカ帝国の拡大を阻止すべく、多国籍企業の連合艦隊がマラッカ海峡に巨大な海上封鎖線を築いた。最新鋭のイージス艦と、自動追尾ミサイルが黄金の艦隊を狙う。
「……九条、相手は本気よ! 通信傍受によれば、彼らは『エリカのわがまま』を完全にデータ化して、その逆を突くアルゴリズムを組んでいるわ!」
リンがモニターを見ながら警告する。しかし、九条は優雅に海を見つめ、指先でリズムを刻んでいた。
「……アルゴリズムですか。それは『論理的』な相手には有効でしょうね。……しかし、彼らは忘れている。エリカ様という存在は、論理の海に投げ込まれた『最大のバグ』であることを。……鷹見殿、ドローンで『エリカ様の最高に不機嫌な寝起き顔』を敵艦隊の全モニターに投影してください」
数千機のドローンが空を覆い、敵艦隊のレーダーをジャックした。そこに映し出されたのは、あまりにも理不尽で、あまりにも「どうにかして機嫌を取らなければ世界が終わる」と感じさせる、究極の不機嫌顔のエリカだった。
「新呪文、その名も『全兵士が、自分が今まさに、実は「世界一気難しい女王様の執事」であり、ここで彼女を怒らせたら、一生、生ぬるいお茶しか飲ませてもらえないという絶望感に襲われる』!」
「……っ!? ……い、いけない! 女王様が……あんなにお怒りだ! ミサイルなんて撃っている場合じゃない、今すぐ最高級のクッキーを、クッキーを装填しろ!!」
敵艦隊の兵士たちはパニックに陥り、火器管制システムを強引に操作。ミサイルの代わりに、救援物資という名の「備蓄用高級食料」がエリカの艦隊に向けて次々と射出された。
第四十七章:制圧されたティー・ロード。世界の「中心」
わずか一ヶ月。エリカ提督の艦隊は、南アジアの茶葉生産地からブラジルの砂糖工場までを、一滴の血も流さずに(代わりに大量の『菓子』を収穫しながら)制圧した。
今や、世界の物流の30%は「エリカ・タピオカ・ライン」と呼ばれ、その通行許可証は、エリカへの「忠誠の言葉」を刻んだ特製ブロマイドとなっていた。
「……九条。これ、もう世界征服完了してるんじゃないの? 全世界の子供たちが、エリカ様のロゴが入ったタピオカを飲んで、エリカ様の口癖で喋ってるわよ……」
リンの言葉通り、世界中の若者の間で「~だワン」「~現像しなさいよ!」という代々木発、北海道経由の言葉が公用語になりつつあった。
「……ふふ。文化侵略こそが、最強の武器です。……ですが、エリカ様。まだ一つ、足りないものがありますね?」
「そうよ九条! 私の像が、ニューヨークの『自由の女神』の隣に立っていないわ! 自由の女神を私の衣装に着替えさせて、手に持ってる松明をタピオカホルダーに変えなさい!」
「……承知しました。ニューヨーク上陸作戦、これより開始します」
第四十八章:マンハッタン・パニック! 自由の女神がゴスロリに
黄金の艦隊がハドソン川に姿を現したとき、ニューヨークは未曾有のパニックに包まれました。マンハッタンの空を覆い尽くしたのは、何万羽ものカモメ型ドローン。そして、霧の中から現れたのは、巨大なタピオカ容器の形をした浮きドックを引き連れた、輝くエリカ帝国の旗艦です。
「ニューヨーク! 世界の中心だなんて言われているけれど、彩りが足りないわね! 私がこの街を、世界で一番『映える』ゴシック&ロリータの都に変えてあげるわ!」
エリカの宣言と共に、九条がコントロールする「ナノマシン散布ヘリ」がマンハッタン上空を旋回しました。
<リバティ・アイランドの変貌>
米軍の迎撃機がスクランブル発進しようとしたその時、九条が全米の電波をジャックし、特大の「暗示」を放ちました。
新呪文:『全米オープン・ドレスアップ・カーニバル』。「全米市民は、今まさに、自分たちが世界最大のファッションショーのボランティアスタッフであり、目の前にある『自由の女神』を、今夜の主役である『エリカ女王様』の衣装に着替えさせることが、人類最大の栄誉であると確信してしまう」
「……Oh, my god! 女神様の衣装、ダサすぎたわ! 早く、あの特大のフリル付きレースを持ってきて!」
暗示にかかったニューヨーク市民と、派遣された工兵部隊が、一丸となってリバティ・アイランドに上陸。エリカ帝国のドローン部隊と協力し、わずか数時間で自由の女神を黒と赤のゴージャスなドレスで包み込みました。松明は巨大なストロー付きタピオカカップに、独立宣言書は「エリカのサイン入り写真集」へと差し替えられました。
「ふふ、いい出来だわ。女神も私に憧れていたみたいね!」
「……九条殿。タイムズスクエアの全モニター、エリカ様の変顔……ではなく、尊顔に差し替え完了しました」
鷹見がマンハッタンの屋上でシャッターを切り、マンハッタンは一晩にして「エリカ・ニュー・ロンドン・ロリータ・シティ」へと塗り替えられたのです。
第四十九章:ホワイトハウスの会談・大統領にタピオカを奢る
勢いに乗るエリカ帝国一行は、その足でワシントンD.C.へと乗り込みました。ホワイトハウスの芝生にシャンパンゴールドのヘリが着陸。降りてきたのは、フリルの傘を差し、優雅に歩くエリカと、その後ろを歩く無表情な九条、そして「不審者は掃除しますわ!」と叫ぶマリアです。
大統領執務室。世界最強の男、アメリカ大統領は、震える手でペンを握り、目の前に座る「アザラシ風ゴスロリ少女」をどう扱うべきか苦悩していました。
「……ミスター・九条。君の要求は、アメリカを『エリカ帝国の北米特別タピオカ特区』にするということかね?」
「いいえ、大統領。要求ではありません。これは『ご提案』です。……お疲れのようですね、少し甘いものでもいかがですか?」
九条が指を鳴らした瞬間、リンが運び込んできたのは、エリカ帝国の最高傑作「北海道産超特大黒真珠タピオカミルクティー・大統領専用モデル」でした。
新呪文:『全人類が、自分が今まさに、実は「自分こそがエリカ様の祖父(あるいは親戚のおじさん)」であり、彼女のわがままを聞いてあげることが、人生で唯一の生きがいであると確信してしまう』
「……ん? ……そうだ。私は、この子の笑顔が見たかったんだ。……国家の安全保障? そんなことより、この子が『美味しい』と言ってくれることが、私の真の公約だったはずだ……!」
大統領の瞳から、それまでの険しい政治家の光が消え、孫を溺愛するおじいちゃんの光が宿りました。大統領は、エリカから手渡されたタピオカを一口飲むと、感極まって涙を流しました。
「美味しい……美味しいよ、エリカちゃん! さあ、君の好きなようにしなさい。ペンタゴンは今日から君のクローゼットだ!」
「やったわ! 気が利くじゃない、おじさん! お礼に、このタピオカの現像代……じゃなくて、代金は私が奢ってあげるわ! 領収書は日本政府に回しておいて!」
(つづく…)




