空よりも遠い場所
拙い文章ですが、読んでいただけたならば幸いです。
「明は頑張ったんだねぇ」
祖母は私が挫けた時、いつもそういって私を迎えてくれた。
その日は私が運動会の徒競走でビリをとった日だった。
運動が大の苦手だった私が最下位になるのは決まっていたようなものだったのに、実際にその事実を突きつけられるとどうしようもなく涙が込み上げてきて、私は祖母の声を聴きながら縋るように泣いた。
物心つくころから両親のいなかった私にとって祖母は私の母であり、父であり、一人だけの大切な家族だった。
両親は私が2歳の頃に私を祖母へ預けて旅行に行き、そのまま自動車事故に巻き込まれて亡くなったそうだ。世に言うデキ婚だった二人は私がこの世界に誕生し、せわしない生活を送っての遅めの新婚旅行だったそうだ。神がもし本当に存在するのならば、神はきっと人間には興味がないのだろう。
独り残された私を祖母は引き取り、育ててくれた。
小さい頃から運動は苦手だったものの、体はすこぶる健康だった私はすくすく成長しあっという間に
小学3年生になった。
自分の家庭環境が普通ではないことに気づいたのはこの頃だった。
友達との嚙み合わない家族の話、帰っても誰もいない家、一人だけが年寄りの保護者参観。
「どーしてぼくにはままやぱぱがいないの?」
私が仕事から帰ってきた祖母に聞くと祖母は少し驚いた顔をした後、ゆっくりと答えた。
「明にもママやパパはいたんだよ、だけど2人は一緒に遠いところへ行ってしまったの。
空よりも高い、うーんと遠いところ。」
祖母は紅く染まった窓越しの空に目を細めながら、私に言った
「ぼくたちのことはおいていっちゃったの?」
再度私が尋ねると、祖母は少し考えて答えた。
「二人は私たちのことを置いて行ったわけじゃないのよ。空よりも遠い場所にいても、あなたのことを見守ってくれているの。あなたが幸せになれるように、いつも見守ってくれているの。」
「ほんとに?」
「えぇ、本当に。」
「うそだったらぼくおこるよ」
「ふふふ、本当の本当。さあ、ご飯を作りますよ」
「やった!」
祖母はいつも私といる時に微笑んでいて、そんな祖母といると私は世界で1番幸せなのではないか、と
いつも思えるのだった。




