番外編 断章3話
かつてのショッピングモールを中心としたコロニー『ノアズ・アーク』の変貌は、劇的という言葉では生温いほどだった。
KAMIが降臨してから、わずか数週間。
そこはもはや薄汚れた避難所ではなかった。廃墟の中に忽然と現れた、要塞都市国家の様相を呈していた。
その変化の象徴が、正門前に整然と並ぶ鉄の防壁――戦車部隊である。
「――第一小隊、哨戒任務より帰還! 異常なし! 東の廃工場エリアの掃討完了!」
轟音と共に砂煙を上げて帰還したのは、最新鋭のM1エイブラムス戦車だ。
KAMIが「対価」として受け取った貴金属と引き換えに、物資リストの中からポンと出し(創造し)たものである。
燃料は満タン、弾薬は無限に近い在庫があり、整備状態は工場出荷直後のように完璧だ。
「うむ。ご苦労」
それを出迎えるミラーは、かつての薄汚れた服ではなく、パリッとした新品の戦闘服に身を包み、腰にはKAMI製の高機能無線機を下げている。
彼の率いる自警団は、いまや完全な「軍隊」として機能していた。
全員が統一された装備、防弾ベスト、暗視ゴーグルを身に着け、栄養状態も良く、士気は天を突くほどに高い。
「以前は近隣の野盗どもが、我々のわずかな食料を狙ってちょっかいを出してきていたが……」
ミラーは砲塔を旋回させる戦車を、満足げに眺めた。
「さすがに戦車と重機関銃で武装した正規軍並みの部隊を相手にしようという馬鹿はいなくなったな」
圧倒的な武力による平和。
暴力が支配する世紀末において、それ以上の秩序維持装置はない。
野心ある略奪者たちは、遠巻きにこの要塞を眺め、その火力差に絶望して去っていくか、あるいは銃を捨てて「労働者」として門を叩くかの二択を迫られた。
そしてその多くは、後者を選んだ。
コロニーの内部、かつての駐車場エリアは、巨大な「解体・分別工場」と化していた。
そこには、周辺の廃墟から回収されてきた、ありとあらゆる「過去の遺産」が山のように積まれている。
銀行の金庫から引きずり出された金塊、宝石店のショーケースごと運ばれたダイヤモンド、電子基板の山、そして高級車の触媒コンバーター(プラチナが含まれている)。
「ほらほら! 手を動かせ! ゾンビは待ってくれないが、KAMI様の夕食の時間も待ってくれないぞ!」
現場監督の怒号が飛ぶが、そこで働く人々の顔に悲壮感はない。
彼らは武装した護衛部隊に守られながら廃墟を探索し、ゾンビを「駆除」し、その奥にあるお宝を回収する。
かつては「生ゴミ」や「死体」しかなかった廃墟が、今や彼らにとっては「鉱山」だった。
「おい見ろよ! こいつの指輪、でけぇダイヤだぞ!」
「やったな! これで今夜はステーキとビールだ!」
ゾンビを倒し、その死体(かつての富裕層だったのだろう)から装飾品を剥ぎ取る作業。
倫理的には顔をしかめる者もいるかもしれないが、生存本能が全てを正当化していた。
彼らは死人の指輪と引き換えに、生きるためのカロリーと、明日の希望を手に入れているのだ。
「……順調ね」
管理棟の最上階。
KAMIは最高級の革張りのソファ(もちろん生成品だ)に深々と座り、眼下の活気をガラス越しに見下ろしていた。
手には氷の入ったクリスタルグラス。中身は琥珀色の炭酸飲料、コーラだ。
「人間、やればできるじゃない。
最初はただ怯えてるだけの猿かと思ったけど、餌(報酬)と鞭(規律)を与えれば、立派な働きアリになるわね」
彼女の背後で、ミラーが直立不動の姿勢で控えている。
「ああ。あんたのおかげだ、ボス。
みんな働く喜びを思い出している。報酬が確実に支払われるという保証が、これほどまでに人の心を安定させるとはな」
「当然よ。信用経済の基本だもの」
KAMIはグラスを揺らした。
「ところでミラー。ちょっと気になってることがあるんだけど」
「なんだ?」
「ゾンビ以外のことよ。
この世界、パンデミックで崩壊したって聞いてるけど……。
ゾンビって所詮は動く死体でしょ? 知能もないし、動きもトロい。
数が多いのは厄介だけど、戦車や重火器があれば制圧するのは難しくないはずよ。
どうして軍隊は負けたの? どうして人類はここまで追い詰められたの?」
KAMIの鋭い問いに、ミラーの表情が曇った。
彼は窓の外、遥か遠くの地平線に視線を向けた。
「……ああ。あんたの言う通りだ。
ただのゾンビ相手なら、軍は負けなかっただろう。封じ込めも可能だったはずだ。
だが、奴らがいた」
「奴ら?」
「『ミュータント(変異体)』だ」
ミラーは忌々しげに言った。
「ウイルスZ-9は、稀に宿主の遺伝子構造を劇的に書き換える。
ただ腐るだけじゃない。筋肉を肥大化させ、骨格を強化し、凶暴性と身体能力を極限まで高めた怪物へと変貌させるんだ」
「へえ……。バイオハザード的なやつね」
KAMIは、興味深そうに身を乗り出した。
「ここにはいないの?」
「運が良かっただけだ」
ミラーは首を振った。
「フィラデルフィア周辺は初期の爆撃が激しかったせいか、あるいはたまたま変異の確率が低かったのか、今のところ目撃情報は少ない。
ここを徘徊しているのは、ほとんどが『ただのゾンビ(ウォーカー)』だ。
だから我々はこうして外を出歩くことができる。
だが都市によっては……ミュータントが支配する『巣』と化した場所もあると聞く」
「ふーん。なるほどね」
KAMIは指先で唇をなぞった。
「つまり、この安寧はただのラッキーってことか。
ま、いざとなったら私が消し飛ばせばいいだけの話だけど。
脅威のレベル設定が分かってよかったわ」
その時、ドアがノックされ、ミラーの部下が入室してきた。
彼は緊張した面持ちで、一枚の書類をミラーに手渡した。
「ボス、そしてKAMI様。
住民代表および建築班から、提案書が上がってきています」
「提案書?」
KAMIが眉をひそめる。
「食料のメニューに対する文句なら聞かないわよ? 今のままでも十分贅沢なんだから」
「いえ、そうではなく……」
部下は恐縮しながら言った。
「『コロニーの拡張と居住区の建設』についての嘆願です」
「街を作りたいねぇ」
KAMIは広げられた青焼きの図面(紙もインクもKAMI製だ)を覗き込んだ。
それはショッピングモールの周囲をぐるりと囲むように住宅地を配置し、農地を整備し、本格的な「都市」として機能させるための都市計画図だった。
作成者は、生存者の中にいた元都市計画プランナーや建築家たちだ。
「このショッピングモールも、そろそろ手狭になってきました」
ミラーが説明する。
「人が増えすぎた。衛生環境を維持するためにも、居住スペースの拡大は急務だ。
それにテント暮らしでは冬を越せない。ちゃんとした家が必要だ」
「ふんふん」
KAMIは図面を指で弾いた。
「良いんじゃない?
人間は巣作りが好きだものね。それに、人が定住すればそれだけ労働力も安定するし。
許可するわ」
「ありがとうございます!」
部下が顔を輝かせる。
「ただし」
KAMIはニヤリと笑った。
「タダでとは言わないわよ?
街を作るなら、それなりの『安全』が必要でしょ?
ゾンビがうろつく平原に家を建てても、夜中に襲われて終わりよ」
彼女は窓の外を指さした。
「安全な地区にするために、巨大な『壁』を作りましょう。
『進撃の巨人』みたいな、高くて分厚くて絶対に破られない壁をね。
ついでに結界も張ってあげる。空中の飛行型ミュータント対策も兼ねて」
「壁……ですか」
ミラーがごくりと喉を鳴らした。
「あんたが作る壁なら、核シェルターより堅牢だろうな。
だがその対価は?」
「そうねぇ……」
KAMIは計算するふりをした(実際にはどんぶり勘定だが)。
「住民全員が、これから半年間、稼ぎの2割を追加で上納すること。いわば『住民税』ね。
それに同意するなら、明日には壁を出現させてあげるわ」
「2割……」
ミラーは考え込んだ。
今の交換レートは、生存者にとってかなり有利な設定になっている。
そこから2割引かれても、食うに困ることはない。
むしろ枕を高くして眠れる「絶対的な安全」が手に入るなら、安すぎるくらいだ。
「……分かった。提案者に伝えよう。
おそらく全員が諸手を挙げて賛成するはずだ」
「交渉成立ね」
KAMIは満足げに頷いた。
「じゃあ明日の朝イチで工事(創造)を開始するわ。
デザインはどうしようかしら……。やっぱり中世の城壁風? それともサイバーパンクな防壁風?
ま、私のセンスに任せなさい」
翌朝。
フィラデルフィアの生存者たちは、目を疑う光景を目撃した。
地響きと共に大地が隆起し、ショッピングモールの周囲半径2キロメートルを囲むように、高さ20メートルの白亜の城壁がせり上がってきたのだ。
壁の表面には微かに青く発光する幾何学模様(ルーン文字)が刻まれており、近づくゾンビを自動的に弾き飛ばす結界が張られている。
東西南北には巨大な鋼鉄の門が設置され、その上には自動迎撃用のタレット(KAMIの趣味だ)まで完備されていた。
「……神よ……」
「これなら……これなら安眠できる……!」
人々は壁を見上げ、涙を流して感謝した。
それは人類がこの5年間失っていた「安寧」という名の領土の、最初の奪還だった。
城壁都市『ノアズ・シティ』の噂は、風に乗って、あるいは電波に乗って荒野の彼方へと広がっていった。
「フィラデルフィアに行けば、黄金と引き換えに王侯貴族のような暮らしができる」
その噂を聞きつけ、単なる難民だけでなく、したたかな「商売人」たちも集まり始めていた。
ある日の昼下がり。
正門の前に、武装したトラックや改造バスの車列が到着した。
彼らは「行商人」。
文明崩壊後の世界を渡り歩き、物資を交易して生き抜いてきた、タフで計算高い連中だ。
「よう、ここが噂の『神の街』か?」
車列のリーダーらしき男、ジャックがサングラスを外して巨大な城壁を見上げた。
「無線で聞いた時は眉唾だと思ったが……こりゃあたまげたな」
彼らは、他の生存者とは違っていた。
彼らの荷台には食料こそ少ないが、廃墟から回収した「かつての価値あるもの」が満載されていたのだ。
金塊、宝飾品、高級時計、ブランドバッグ、美術品。
彼らは知っていたのだ。
いつか秩序が戻った時、あるいはこの狂った世界でも、これらの輝きに価値を見出す権力者が現れることを。
だから彼らは、食料よりも優先して、それらをちゃっかりとかき集めていた。
「おいおいマジかよ……」
受付の鑑定所で、彼らは驚愕した。
彼らが「いつか役に立つかも」程度で集めていたガラクタの山が、KAMIの査定によって、とんでもない額の「KAMIドル」に換算されたのだ。
「……おい、これ全部本物のステーキとビールに換えられるってのか?」
「ああ。あるいは新品の衣服、タバコ、医薬品、なんとでも交換できる」
その夜。
行商人たちは街の酒場(これもKAMIが作った)で豪遊していた。
テーブルには焼きたてのピザ、ジューシーなハンバーガー、冷えたビール、そして最高級のウイスキーが所狭しと並んでいる。
5年間、保存食とネズミの肉で食いつないできた彼らにとって、それは天国そのものだった。
「くぅぅぅッ! 染みるぜぇ!」
「生きててよかった! 金を集めておいて正解だった!」
「この街は最高だ! 一生ここに住みてぇ!」
彼らの宴を、KAMIはバルコニーから見下ろしていた。
「……ふん。いい気なものね」
彼女はつまらなそうに呟いたが、その目は計算高く光っていた。
「でもちょうどいいわ。彼らを使わせてもらいましょう」
KAMIは宙を浮いて酒場へと降りていった。
突然現れたゴスロリ少女に、酔っ払った男たちが静まり返る。
「よお、嬢ちゃん。あんたがここの主、KAMI様かい?」
リーダーのジャックが、酔った赤ら顔で声をかけた。
「感謝するぜ。あんたのおかげで俺たちは王様気分だ」
「いいのよ。対価は貰ったんだから」
KAMIは、彼らのテーブルの真ん中にひらりと着地した(行儀が悪いが、誰も文句は言えない)。
「あなたたち、あちこちを旅してるんでしょ?
たくさん貴金属を持ってきてくれたから、上得意様として認定してあげる。
だからちょっと『お願い』があるんだけど」
「お願い? 何だい? 俺たちにできることなら何でもするぜ」
腹が満たされ、気分に浸っている彼らは気前よく答えた。
「宣伝よ」
KAMIは言った。
「あなたたちここを出て、もっと遠くへ行くんでしょ?
行く先々でここのことを広めて欲しいの。
『フィラデルフィアには、金を持っていけば何でも手に入る楽園がある』ってね。
そして、できるだけ多くの人間と貴金属を、ここに誘導して欲しいの」
「宣伝か……」
ジャックは顎をさすった。
「まあ俺たちも商売だ。情報を売るのはやぶさかじゃないが……」
「もちろんタダとは言わないわ」
KAMIは魅力的な提案をした。
「あなたたちが紹介した人間が持ち込んだ貴金属の、その10%分を、あなたたちへの紹介料として支払うわ。
それに、あなたたちが今後ここで買い物をする時は、全品2割引にしてあげる」
「に、2割引き!?」
「キックバックまで!?」
商人たちが色めき立つ。
それは彼らにとって、莫大な利益を意味する。
「……乗った! 商談成立だ!」
「アメリカ全土に広めたいんだけど、どう?」
KAMIは地図を広げた。
「西海岸、南部、中西部。まだ私の声が届いていないエリアまで、足を伸ばして欲しいの」
「……うーん」
ジャックの表情が少し曇った。
「行きたいのは山々だが……。物資は?
遠出するには、それなりの食料と燃料がいる」
「心配ないわ。ここにある物資は、アメリカ全土をカバーできるだけあるわ。
ガソリンも保存食も水も。必要なだけ持っていっていいわよ(もちろん購入してね)」
「物資があるなら問題ねえが……」
ジャックは声を潜めた。
「問題は『道中』だ。
近場はいいが、遠くへ行けば行くほどヤバいエリアが増える」
「ヤバいエリア?」
「ああ。KAMI様もご存知だろうが、ミュータントの巣窟になっている『レッドゾーン』だ」
ジャックは震える手でタバコに火をつけた。
「特に西の方は酷いらしい。
ゾンビだけなら俺たちの武装でもなんとかなるが、ミュータントは別格だ。
皮膚が硬すぎて、並の銃弾じゃ傷一つつかねえ。
出会ったら逃げるしかない。運が悪けりゃ、車ごとひっくり返されてお陀仏だ」
「えー、ミュータントってそんなに強いの?」
KAMIは首を傾げた。
「銃が効かないって、戦車でもダメなの?」
「戦車砲なら効くだろうが、俺たちはキャラバンだ。そんなもん持ってねえよ。
持ってるのは古びたライフルとショットガンだけだ。
だからミュータントがいる地域は大きく迂回しなきゃならねえ。
そうなると、どうしても移動に時間がかかるし、行けない場所も出てくる」
「なるほどね……」
KAMIは腕を組んだ。
物流の阻害要因。それは排除すべきバグだ。
彼女は、ジャックが腰に下げていた古びたリボルバーを指さした。
「ちょっとそれ見せて」
「え? ああ、どうぞ」
ジャックが銃を手渡す。
KAMIはそれを手に取り、まじまじと観察した。
鉄と火薬の原始的な武器。構造は単純だ。
だが、物理法則に縛られている限り、その威力には限界がある。
「ふん。……じゃあ、ちょっと『テコ入れ』しましょうか」
KAMIの指先が淡い光を帯びた。
彼女はその光を銃に擦り付けるように撫でた。
「――エンチャント:対変異体特攻。
貫通力強化、爆裂属性付与、自動照準補正……。
ついでに弾丸にも魔力を込めてと」
カッ!
一瞬、銃が赤く発光し、そして元の姿に戻った。
だが、その質感は明らかに変わっていた。
鈍い鉄の色だった銃身が、内側から脈動するような熱を帯び、不思議な紋様が浮かび上がっている。
「はい、これ」
KAMIは銃を返した。
「とりあえず、私の力でミュータントを倒せるレベルまで強化しておいたわ。
これでよし。今度ミュータントに会ったら試しに撃ってみて。
多分、豆腐みたいに撃ち抜けるから」
「……は?」
ジャックは、生まれ変わった愛銃を呆然と見つめた。
「きょ、強化って……。あんた銃に何をしたんだ? 魔法か? これが噂の……」
「まあ、そんなもんよ」
KAMIはウィンクした。
「特別に、あなたたちの持ってる銃、全部やってあげるわ。
あと、ここでの買い物リストに『強化弾薬』も追加しておくから。
普通の弾より高いけど、それがあればミュータントなんて怖くないわよ」
「ほ、本当か!?」
ジャックが叫んだ。
「銃が効くようになるのか!?
それなら……それなら、あの地獄のルートも通れる!
迂回する必要がなくなる! 西海岸まで最短距離で行けるぞ!」
商人たちが沸き立った。
彼らにとって、安全と近道は金以上の価値がある。
「ありがてぇ! 正直、銃弾もタダじゃないからな。
流石に食料品より価値が落ちるが、貴重品だ。
ここで強力な弾を補充出来るなら、これほど心強いことはねえ!」
「ええ、感謝なさい」
KAMIは胸を張った。
「その代わり、しっかり働いてね。
私の名前とここの豊かさを、アメリカ中の人間に伝えてくるのよ。
『神はフィラデルフィアにいる』ってね」
「ああ! 任せてくれ!」
ジャックは強化された銃を天に掲げた。
「とりあえず今日はここで豪勢に飲むよ!
明日から新しい銃の試し撃ちも兼ねて、西へ向かう旅に出る!」
「ええ、頑張って」
宴は深夜まで続いた。
強化された武器を手に入れた商人たちは、もはや恐怖に怯える敗残兵ではなかった。
未知の世界を切り拓く、頼もしい開拓者の顔をしていた。
KAMIはその様子を見届けた後、一人城壁の上に立った。
夜風が彼女のドレスを揺らす。
眼下には明かりの灯る街並み。
そしてその向こうには、広大な手付かずの闇が広がっている。
「……さて」
彼女は闇の向こうを見据えた。
「種は蒔いたわ。あとは彼らがどれだけ集めてくるか、お手並み拝見ね」
彼女の視界の端に、システムウィンドウが表示される。
『対価回収率:0.0001%』
まだ始まったばかりだ。
だが、この世界には旧時代の文明が残した、莫大な量の「お宝」が眠っている。
それを全て回収し尽くした時、彼女の本体はまた一歩、全能へと近づくのだろう。
「……ま、私は私の楽しみを見つけるとしましょうか」
KAMIは生成したばかりのふかふかのベッドに戻るために、踵を返した。
廃墟の女神の夜は、更けていく。




