優しさの雨
案内された窓辺の席で魔術書を読むシャーロット。窓から入る日差しで日向ぼっこをしていたリリーは、シャーロットのハンカチを布団にしてスヤスヤと眠る
「ふぅ。疲れた……」
リリーを起こさないように、ゆっくりと魔術を閉じ、テーブルに置く。うーんと背伸びをして冷めてしまった紅茶に手を伸ばす。少し甘めの紅茶をコクりと一口飲むと、魔術書の隣に出来立てクッキーが乗ったお皿が置かれた
「ずいぶんと勉強熱心ね」
シャーロットを見て女性店主がフフッと微笑み話しかける。シャーロットが突然話しかけられ驚いていると、店主の声とクッキーの香りで目が覚めたリリーが飛び起きた
「あなた、見ない顔だけど、どこから来たの?名前は?」
起きてすぐクッキーをじっと見つめるリリーに女性店主がクスクスと笑いながらシャーロットに問いかける。クッキーを勝手に食べないようにリリーの体を優しく包み、女性店主の質問に答える
「シャーロットです。この子はリリーです」
「そう。素敵な名前ね。私はメアリ。あっちで動かずにずーっと新聞を読んでいるのがベルトよ」
と、メアリが店番をしているベルトに目線を向けるとシャーロットとリリーも同じくベルトを見る。三人からの目線に気づいたベルトがおもむろに立ち上がり店を出た
「ところでなんで初心者向けの本を読んでいるの?」
メアリがシャーロットにまた問いかける。その質問にすぐに返事ができずシャーロットのうつ向いて、手で包んでいるリリーと目があった
「魔術がよく分からなくて……。どう使うのかなって……。あの、メアリさんは、どんな魔術を使うんですか?」
「魔術ねぇ。私はあまり魔術は得意じゃないのよ。けど、あの人は……」
メアリが話の途中で、目の前にある窓に目線を向ける。シャーロットとリリーも窓を見ると店の外で空を見上げるベルトがいた
「水の魔術が得意でね、魔術でよくお店の外の花壇にお水を撒くのよ」
ベルトが花壇に水を撒く様子を思いだしてメアリがクスクスと笑っていると、外にいたベルトが店の扉を少し開けた
「雨が降りそうだぞ」
「あら、大変。洗濯物取らなきゃ」
メアリが慌てて外に出ると、たくさんの花が咲く花壇の前で、二人は空を見上げるように店舗の二階に目線を向けていた。シャーロットとリリーが二人の様子を窓から見ていると、メアリと一緒に見上げていたベルトの元に二階のベランダで干していた洗濯物が舞い落ち手元に降りてきた。手一杯に洗濯物を持つベルトとメアリが話をする様子をボーッと見ていると、シャーロットの手から左肩に移動したリリーも空を見上げた
「雨が降るなら、そろそろシャロを呼びに行かなきゃ」
「そうね。雨に濡れる前に帰りましょ」
飲み干した紅茶を片付けようと椅子から立ち上がると、ちょうど店に戻ってきたメアリがシャーロットの様子に気づいた
「ちょっと待ってて」
メアリに呼び止められて、片付けようとしていた手が止まり、店番の奥へとパタパタと小走りで向かうメアリを見る。すぐに戻ってきたメアリの手にはカラフルな花柄の絵が書かれた小さな袋を持ってきた
「その本とクッキーは、私からプレゼントするわ」
小さな袋にいれたクッキーをシャーロットに渡し、テーブルに置いていた魔術書も差し出す。魔術書を買おうとしていたシャーロットがメアリの話に戸惑っていると、シャーロットの右手をグイっと引っ張り、クッキーの入った袋と魔術書を右手の手のひらにポンッと置いた
「プレゼントする代わりに、クッキーの感想を伝えにまたおいで。約束だよ」




