時の許すままに
「買いに行くなら、一緒に行く!」
リリーがシャロの行く手を阻むように周りをグルグルと飛び回る。一緒に魔術書店に入ると思っていたシャーロットも店舗前で戸惑っている
「リリーはダメ。何を買うか楽しみにしてて」
「えー……でも」
「美味しいの買ってくるから、待ってて」
「……わかった」
しぶしぶ納得して、シャーロットの肩に止まるリリー。不機嫌そうなリリーを見てフフッと笑って去っていくシャロ。人混みの中に消えていくシャロを見届けると、シャーロットが魔術書店の扉の取っ手に手を掛けた
「じゃあ、行きましょ」
ふぅ。と一つ深呼吸をして、魔術書店の扉をそーっと開ける。扉についている鈴の音がカランと鳴り、店の奥でレジ番をしていた白髭を生やしている男性店主が店内入り口で立って動かないシャーロットに目線を向けた
「いらっしゃい」
突然、声をかけられて驚いたシャーロットの体が一瞬ビクッと後退りする。男性店主がシャーロットをじっと見つめていると、店の奥からパタパタと小走りする足音が聞こえてきた。男性店主が目線をシャーロットから隣を見るように顔を横に向けると、隣にシャーロットと同じくらいの背丈でエプロンを付けた、ふくよかな初老の女性が現れた
「あら、また来たのね」
シャーロットを見てすぐ嬉しそうに、にこりと微笑む。女性にまたと言われてシャーロットが首をかしげた
「えっ、えーっと……」
「あら、ごめんなさいね。最近あなたに似た子がよく来ていたから」
「そうなんですか……。私に似た子が」
「どうぞ、いらっしゃい。あなたに合う本はあると良いけれど」
シャロの事を思い出していると、女性店主が微笑みながら店の本棚に目線を向けた。シャーロットもつられて本棚に目線を向ける。そーっとゆっくり店の中を歩いて店の中を見渡していくと、女性店主は店の奥に戻り、男性店主は新聞に目を通しはじめた
「ここら辺からが良いかな……」
初心者向けと書かれた魔術書コーナーを見つけ、ずっと右肩に乗っているリリーと一緒にシャーロットが分かりそうな魔術書を探す。たくさんある魔術書の中から、少し厚めの本を取り、パラパラとページをめくり読みはじめた
「あなたはその本が良いの?」
と、突然飲み物を持った女性店主がシャーロットに声をかけた。驚いたシャーロットが魔術書をバタンと勢いよく閉じた
「あら、驚かせてごめんなさいね。あなたに似ている子は私たちも分からない魔術書を読んでいたから、ついね。読みたいのなら、あっちでゆっくり読むと良いわよ」
女性店主がそう言うと、窓の方に目線を向ける。シャーロットも目線を向けると、窓辺に一人用の椅子とテーブルが置かれていた。女性店主が飲み物をテーブルに置き、シャーロットが座りやすいように椅子を少し引く。魔術書を持ってきたシャーロットが恐る恐る椅子に座ると、テーブルに置いていた飲み物をシャーロットの前に置き直した
「この本にはこの紅茶がよく似合うわ。閉店時間はまだまだだし、ゆっくり読んでね」




