ため息混じりに
明朝、まだ人々が朝の支度で騒がしく動いている中、シャロが本屋の屋根に座りと少しずつ活気が溢れていく町の様子をボーッと見ていた
「シャロ、見つけたよ」
少し眠くなりアクビをしていると、出掛けていたリリーがご機嫌な様子で声をかける
「見つけたの?どこ?」
「あっちの建物。昨日と同じパンの匂いがする」
そう言いながらパン屋のある方に向かって飛んでいく。シャロがリリーが向かう先に目線を向けると、パン屋の店主らしき男性が開店前に店の前を掃き掃除していた
「リリー、パンは買わないよ」
「食べようよ、お腹空いた」
「用事がすんで時間があればね」
「じゃあずっと無理、ずっと食べられないね」
「そんなことないよ、もう一度貰いに行こっか」
リリーと会話をしながら立ち上がると、軽く服についた塵を叩いて、森に隠れほんの少し屋根が見えるディオロイ城に目線を向けた
「それでここに来たのね」
シャーロットが、はぁ。とため息をついて呟く。ディオロイ城にある自室のベットに座りパンを食べるシャロとリリーを見てもう一度ため息をつく
「ありえないわ。なんで来れたの?」
「少し髪を変えたらすぐじゃん。警備甘いね」
シャロが自分の髪の毛を撫でると、黒く短い髪が一瞬でシャーロットと同じ白く長い髪へと変わった
「本当に魔術師……」
すぐに髪を触り元の短い黒髪に戻したシャロ。シャーロットがグッと手に力を込め、歯を食い縛る。と、パンを食べ終えたリリーがシャーロットの右肩に止まり、首をちょっとつついた
「パン美味しい、おかわりちょうだい」
「ないわよ!二人で食べすぎよ!」
リリーを追い払うように肩を揺らす。無理やり動かされたリリーは、テーブルに置かれたパンを運ぶための籠の持ち手に止まった
「リリー、魔力の足しになりそう」
「ならないよ、パンが足りないから」
籠にたくさん入れたはずのパンが全部なくなっているのを見てリリーがしょんぼりと答えると、シャロとリリーが同時にシャーロットを見た
「私に言われても知らないわよ。それにパンがもうないのは事実だし……」
二人と目線が合わないように顔を背けながらそう言うと、ふととある事を思いつき、シャロを見る。すぐにシャロと目線が合い、顔を少し傾けシャーロットを見るその姿にまた険しい顔をしてため息をついた
「いいわ。私の願いも叶えてくれたらパンをあげる。」