少し振り向き笑って
「クローム様、シャーロット様が来ました」
シャーロットを書庫に呼ぶように頼んで数分後、目を擦り大きなアクビをしながらシャーロットがトボトボと歩いて書庫に来た。クロームだけでなくノースや魔術師達もいるのに少し驚きつつも、眠さが勝ち、またアクビをした
「もう眠る時間だったかな」
そんなシャーロットを見てクロームがフフッと笑い、ノースはシャーロットの肩に手を置いた。一瞬シャーロットがノースの顔を上目遣いに見てクロームに話しかけた
「お父様、お話ってなんですか?」
「最近、魔術を練習していると聞いてね」
「ええ、剣術じゃもう私の相手がいないから、魔術を練習してみようかと思いまして、それで……」
「そうか。それならシャーロットに新しい魔術を教えよう」
そう言うとクロームがまた壁に向けてを向けた。シャーロットも手を向ける壁に目線を向ける。すると、またシャロとリリーがディオロイ城に来た時の姿が写し出された
「これはシャーロットに合うかもしれない魔術だよ」
「私に?」
クロームの話しに返事をしながら、シャロとリリーが写る壁をじっと見つめる。雨上がりでまだ濡れた木々が、夕暮れに一人いるシャロの体を照らす。シャロが少し空を見上げ一歩進むと、雨粒を纏った木の葉がユラユラと大きく揺れ、雨粒が舞い落ち、リリーが雨宿りしようと、少しシャロの首もとに近づく。ノースや魔術師、家政婦達も壁に写し出されたシャロの姿を見つめ、静かな書庫に不穏な雰囲気が流れ、シャーロットがちらりとノースを見た
「シャーロットに合う魔術だよ」
クロームがよそ見をするシャーロットを咎めるように声をかける。慌ててまた壁に写るシャロを見ると、シャロの足元には無数の見慣れない文字が書かれ、雨宿りしていたリリーがシャロの頭の上をぐるりと飛び回る
「お父様、なんの魔術ですか?」
と、シャーロットが問いかけるがクロームは答えることなくただ壁に写るシャロを見ている。今度は少し振り向いて背後に居るノースを見ると、掴んでいる肩が少しぎゅっと強くなった。少し痛くなった肩ちょっと目を細めつつ、書庫の中を見渡してまた壁に写し出されているシャロの様子を見ると、木の葉を揺らす風が、シャロの髪も揺らす。シャーロットがふとシャロに向けて手を伸ばすと、リリーが右肩に飛び乗り、シャーロットから背を向けて写っているシャロが手を伸ばしたのに気づいたかのように、ゆっくりと振り向いてシャーロットを見るように少し笑った
「ねえシャロ、帰らないの?」
一方その頃、シャーロットの部屋にいるシャロは、おやつも食べ仮眠も取り少し暇になったリリーの相手をしつつ、夜風に当たりながら部屋にあった、まだ読んだことのない本を読みつつケーキのおかわりを食べていた。
「もうちょっと食べてから。リリーはもう要らないの?」
「もうお腹いっぱい。シャロがたくさん食べるなんて珍しいね」
「今から魔力を使うかもしれないからね」
「今から?何の魔術を使うの?」
シャロの右肩に乗り、少し眠たいのかトボトボと歩いて首もとにもたれるリリーが不満そうに返事をすると、シャロがフフッと笑ってケーキの最後の一口を頬張った
「それは、この世界のお願い次第だね」




