視線を感じて
シャロが本を読みはじめ、少し静かになったシャーロットの部屋。慣れた手つきでティーカップに紅茶を注ぐシャーロットをリリーがじっと見つめている
「ねぇ、これ食べてみたい」
「これ?甘いからダメよ」
家政婦が部屋に運んできた生クリームがケーキをリリーが食べようとして、シャーロットが奪い取り、シャロのティーカップの隣にコトンと音を鳴らし置くと、シャロがちらりとケーキを見て読んでいた魔術書をパタンと閉じ、テーブルの上に置いた
「はぁ、なるほど」
「なによ、ため息なんかついて」
リリー用の飲み物をティーカップに注ぎながらシャロに話しかける。淹れている側からリリーがティーカップの縁に止まり、紅茶ではなくリリー用に用意された温かい水を飲みはじめる
「大分、この世界の本を読み尽くしたけど、初心者向けの本も面白いね」
「初心者向けで悪かったわね」
「悪くないよ。とても良い魔術書だったよ」
「そりゃそうよ。それはお父様の本だもの」
「そうだったんだ。気づかなかった」
話していると突然、シャロがテーブルに置いた魔術書が火を纏い燃えはじめた。シャーロットが驚いて、リリー用に用意されていたティーポットに余っていた水をかける。すぐに消えた炎から魔術書の灰がヒラヒラと舞い落ちた
「まあいいや。それよりさ」
そう言いながらティーカップに少し残った紅茶を飲みきると、シャーロットが最後に食べるために残していたイチゴをフォークで差した
「お願い叶えてあげるよ」
「お願い?なんのことよ?」
と、シャーロットが少し首をかしげ聞き返す。リリーも一緒に首をかしげ、シャロが持つイチゴを食べたそうに見ている。二人の視線にシャロがフフッと笑いながらイチゴを半分ほど頬張った
一方その頃、シャロがシャーロットの部屋を訪ねる少し前、庭から書庫に戻ってきた魔術師達とクロームが険しい顔で本棚にある本を引っ張り出し読み漁っていた。少し離れて様子を見ているノースと様子を見に来ていた家政婦達が不安そうに見ている
「あの、クローム様、少しお休みになられては……」
「いや、僕は大丈夫だ。君達こそ休んで構わないよ」
声をかけた家政婦にクロームが微笑みながら返事をすると、また魔術書を読みはじめる。それを見たノースが困ったように、はぁ。とため息をついてクロームの肩に手を置いた
「もう休みましょう。あなたも皆も疲れていては魔術は安定しないわ」
「そうだな。だが……」
ノースに言われて渋々持っていた魔術書を閉じ机に置く。それを見た魔術師達も本棚に魔術書を置いて、壁にもたれたり椅子に座ったりと一息ついた
「本当に存在したんだな」
「そうね、色々と魔術を見てきたけれど、私もはじめて見たわ」
「あの魔術と魔方陣を用いた術式……」
クロームが一人呟いて考え込む。そのまましばらく黙り込んでいると、突然ノースの側にいた家政婦達に目線を向けた
「悪いが、ここにシャーロットを呼んでくれないか?」
「シャーロット様をですか?私達は構いませんが……」
クロームに返事をしながら恐る恐るノースに目線を向ける。家政婦と目があったノースが少し困った顔になる。一瞬、目を閉じ家政婦との目線を変え、返事を待つクロームを見た
「シャーロットを呼んでどうするの?」
そうノースが聞くと、クロームが壁に右手を向けた。書庫にいた全員が右手を向ける壁を見ると、シャロとリリーがシャーロットの部屋に来る前にいたディオロイ城の庭の様子が写し出された
「この魔術を見せてみよう。もしかしたら、シャーロットの為にもなるかもしれないからね」




