食後の魔術とデザート
シャロとリリーがディオロイ城に戻ってきて数時間後、夕暮れだった空も暗くなり、村の人達も家でのんびりと過ごしている頃、ディオロイ城にあるシャーロットの部屋では、シャーロットが初心者用と書かれた魔術書を険しい顔で読んでいた
「なるほど、分かったわ。なんだ簡単なことなのね」
パタンと魔術書を閉じ、椅子から立ち上がる。ふぅ。と一息ついて、目を閉じ、右手を前に差し出し、左手で右腕をつかんで何度も上下に大きく動かすが、何も起きずただ差し出した右手は空を切る
「やっぱりダメね。ちゃんと書かれている通りにしているはずなのに……」
はぁ。とため息ついて、魔術書をパラパラとめくる。さっきまで読んでいたページが開いて間違いがないか読み返し、またパラパラとページをめくり最後のページも読んでパタンと本を閉じると、はぁ。とため息をついた
「やっぱり、私は剣術が……」
と、一人呟いていると、窓がガタガタと揺れる音が部屋に響いて驚いて振り向くと、リリーが羽根を広げ部屋の窓を叩いていた
「ちょっと、何してるのよ!」
慌てて部屋の窓を開けリリーを中に入れる。部屋に入るとすぐ、グルグルと二週ほど回った後、テーブルに置いていた魔術書の上に止まった
「疲れたー。おやつはある?」
「無いわよ。ここに来て早々、おやつなの?」
「だって疲れたから」
と、リリーとシャーロットが話していると、開けっ放しにしていた窓からシャロが入り、テーブルの上にディオロイ城に来る前に村で買ったご飯の入った袋を置いた
「リリー、食べないの?」
「そうだった!食べる!」
時間が経ち冷えてしまったサンドイッチを袋から取り出し、小さくちぎってリリーに渡す。あっという間に食べ終えると袋を探り、食べられそうな物を探す
「よく食べるわね」
「思っていたより魔力を使っちゃったからね。シャロは平気?」
「少し眠いけれどまあ平気かな」
「……眠いってどんな魔術を使ったのよ」
「一緒に食べる?」
「要らないわ。私はもう食べたもの」
リリーと話しながらテーブルの向かいに座り、二人がご飯を食べる様子を見つめる。袋に入っていたご飯が半分ほど食べ終えた頃、部屋の扉がコンコンとノックされた
「えっ?あっ、はいっ!」
シャーロットが驚いてすぐ返事をして思わず椅子から立ち上がる。返事をしてすぐ部屋の扉が開き、家政婦がティーポットやケーキを乗せたワゴンを引いて部屋に入ってきた
「シャーロット様、紅茶とケーキをご用意しました」
「えっ?なんで?」
「先ほどシャーロット様が持ってくるようにと言ってましたので……」
シャーロットの質問に答えながら家政婦が手際よくワゴンに乗せたテーブルに持ってきたティーポットやケーキ等を置いていく。ふと、向かいの椅子に座っていたはずのシャロやリリーがい居なくなっているのに気づいて、テーブルの下や開けっ放しのままの窓を見る。シャーロットの動きを気にしないまま配膳を終えた家政婦がワゴンを引いて部屋の入り口に向かっていく
「では。後程、食器の回収に来ますね」
家政婦がペコリと頭を下げ部屋の扉を閉める。ガラガラとワゴンを引く音が遠くなっていくと、シャーロットが少しうつ向いて、はぁ。とため息をついた
「やっぱり疲れた後は甘いのだね、シャロ」
空席になっていた椅子の方から聞き覚えのある声が聞こえて、またシャーロットが振り向くと、シャロがリリーが食べられそうなケーキの部分を分けていた。甘い所をフォークで差し、シャーロットが読んでいた魔術書のページを開いてフフッと笑った
「そうだね、緩い魔術書に甘いおやつがよく似合うしね」




