暖かさが消える前に
一方その頃、クロームに呼ばれ、シャーロットの部屋を後にしたノースが護衛の魔術師達と共に牢屋の隣にある書庫に来ていた。扉を開けて、中に入ると前に来た時とは少し様子が違う気がして、少し書庫の中を見渡しながら、書庫の奥にある椅子に座り、窓から入る木漏れ日を頼りに本を読むクロームを見つけ立ち止まる。ノースの視線に気づいたクロームが顔を上げニコリと微笑み読んでいた本を閉じ隣にある机に置いた
「シャーロット達は紅茶を気に入ってくれたかね?」
「ええ、美味しく頂いていたみたいよ」
「そうか。君がとても悩んで買ったかいがあるね」
ノースの返事にクロームがフフッと笑い、椅子から立ち上がり、ノースに椅子を譲ると、机の上に置かれていた紅茶が入ったティーポットを持ち二つのティーカップに注ぐ
「それより大分、書庫の本が減っている気がするけれど、どうしたの?」
「ああ、魔術を知りたいと持っていったよ。かなり難しい魔術書も持っていって、魔術師達が困惑していたよ」
クロームが淹れた紅茶を飲みながら、また書庫を見渡す。二人の一番近くにある本棚は二人や魔術師達が会得出来ずに諦めて置いた魔術書が置かれていたが、その魔術書がほぼ全て無くなっていた
「私やあなたが会得出来なかった魔術書も持っていたのね」
「そう。平気だと言って持っていったよ」
「あらまあ。頼もしい子達ね」
クロームの言葉にノースが驚きつつも嬉しそうに微笑む。クロームもその笑顔につられてまたフフッと笑い紅茶を一口飲む
「シャーロットに魔力を渡す前に、魔術師しとして雇おうか」
「それは良いわね。シャーロットにお友達も出来るし、喜びそうだわ」
クロームがノースが座る椅子の向かいにあるもう一つの椅子に座り、紅茶を時折飲みながら話し続け、窓から入っていた木漏れ日が少し暗くなり、ティーポットに入っていた紅茶も無くなっていた
「ちょっと見てみようか」
クロームがそう言うと、椅子から立ち上がり、ノースの隣に来て、木漏れ日から夕暮れの光が入る窓の下に右手を向けた。ノースもクロームが手をかざす方を見ると、窓の下の書庫の壁に見覚えのある場所にいるシャロとリリーが写し出された
「あら、ここの庭にいるのね」
「そうみたいだな。今、魔術の気配は無いようだが、一応、魔術師達に伝えておこうか」
そう言うとクロームが壁にかざしていた右手を下げ、書庫の入り口前で待機している魔術師達を呼んだ
「シャロ、ここでいいの?」
「うん、ここは都合が良いからね。魔術師の魔力と本の力が良い感じそう」
その頃、村でご飯を買い終えディオロイ城に戻ってきたシャロとリリーが誰も居ない庭の真ん中で
お城の様子や空を見渡していた
「結界が張ったままだけどいいの?」
「その方が町に魔術が影響いかないからね。都合が良いよ」
リリーもシャロと同じように空を見上げると、一瞬、動いていた雲が止まって見えた。リリーが空を見ている間に、シャロが買ってきたご飯を少し離れた所にあったベンチに置いた。気づいたリリーが慌てて駆け寄りシャロの左肩に乗る
「リリー、魔術の理解は出来た?」
「理解できたよ。魔術は簡単そうだね」
「じゃあ、大丈夫そうだね。魔力はどう?」
「まだお腹一杯で、魔力は大丈夫」
リリーの返事を聞きながら、また庭の真ん中に戻り、ふぅ。と一つ一息つき、右手の人差し指を空に向けると、左肩にいたリリーがその指先に移動し羽根を大きく広げた。その羽根が揺らぐ程の風が吹いて、ベンチに置いたご飯を入れた袋もユラユラと揺れた
「それじゃあ、買ってきたご飯が冷める前にその魔術を試してみようか」




