雨上がりの窓
クロームや魔術師達が、稽古場からディオロイ城に戻り、今後の話し合いをはじめたその頃、風呂上がりのシャーロットが一人、自室で窓から外を見ている。まだまだ止みそうにない空を見て、またはぁ。とため息をついていた。ぼーっと窓から一番近く見える町を見ていると、コンコンと部屋の扉がノックされた。ちらりとシャーロットが目線を変え扉を見ると、ノースがトレーにティーポットとティーカップ、一口サイズに切られたリンゴを入れたお皿を乗せ運んできた
「あら、どうしたの?シャーロット」
少しテンションの低いシャーロットを見てノースが微笑み問いかける。シャーロットが、隣にあるテーブルにゆっくりと体を向き直しすと、ノースが持っているトレーをそのテーブルに置いて、紅茶の用意をはじめた
「雨が止まないなと思いまして……。お母様は雨を止めれませんか?」
「天気を勝手に変えてしまうのはダメよ」
シャーロットの質問にクルクルとティーポットを回し、ティーカップに紅茶を注ぎながら答えると、シャーロットが少し驚いた表情をした
「えっ。そうなのですか?」
「ええ、魔術を習う者の基本としているの。もし、魔術で変えるのならば、村の人達や魔術師達と決めてからね」
「村の人達と……。そうなんだ」
「はい。少し甘めにしているわね」
「ありがとうございます」
暖かい紅茶が入ったティーカップを受け取り、ふぅ。と息をかけながらゆっくりと紅茶を飲む。ノースは紅茶を飲まずに、ニコニコと微笑みながらシャーロットを見ている。視線に気づいたシャーロットがほんの少しだけ恥ずかしくなって、目線をそらすように顔を窓の方に向けた
「ここから見える村の人達とはどんな人達なのでしょうか」
「村の人達?そうねぇ。優しくて素敵な人達よ」
「優しい人達……。いつか、お母様と一緒に村の人達と会えますか?」
「ええ。きっとね」
ノースがシャーロットに返事をすると窓を見る。部屋に来る前までどしゃ降りだった空はいつの間にか止んで、窓に時折水滴が落ちている
「あれ?いつの間にか晴れてる」
「本当ね。すぐに晴れそうな様子はなかったのに」
シャーロットが窓を開けると、ディオロイ城の真上の空は青空が広がり、少し先にある村の空は暗く
、シャーロットが窓から少し顔を出し辺りを見渡すと、シャーロットの部屋の周りだけ青空が見えていた
「これは……」
ノースに話しかけるため振り向いた時、またコンコンと部屋の扉がノックする音が聞こえた後、家政婦が扉を開けてペコリと一度お辞儀をした
「ノース様、クローム様がお呼びです」
「あらなにかしら……。ごめんね。ちょっと出るわね」
シャーロットに謝るとすぐ椅子から立ち上がり、扉の前で待つ家政婦達の所に向かう。扉を閉めながらシャーロットに手を降ると、シャーロットも微笑みながら手を振り返す。パタンと静かに扉が閉まるとすぐ開けたままだった窓からカタンと物音が聞こえた
「すぐにこんな美味しい物が手に入るなら村なんか出なくてもいいじゃん」
シャーロットが声のする方に振り向くと、シャロがノースが座っていた椅子に座り、リンゴを齧っていた。一口サイズに切られたリンゴを手に取り、更に小さくちぎって、食べたくてテーブルの上でソワソワ動くリリーに手渡した
「リリー、美味しい?」
「美味しいよ。おかわりちょうだい」
嬉しそうにリンゴを齧るリリーを見て、シャロがフフッと笑いリンゴを渡す。二人のやり取りを見て、シャーロットがはぁ。とまたため息をついて、シャロの分の紅茶をティーカップに注ぎはじめた
「天気は勝手に変えてはダメだそうよ」
「そうらしいね。この世界の本に書いてあったよ」
「……どういうこと?」
シャーロットの質問に答えずに紅茶を一気に飲み干し椅子から立ち上がり背伸びをしたシャロ。入ってきた窓にある小さな窓台に立ち、少し振り返り、止めようとして手を伸ばそうとしていたシャーロットを見てフフッと笑った
「魔術はこの世界だけじゃないってことだよ、お嬢様。また後でね」




