目を離した瞬間に
一方その頃、シャーロットがいるディオロイ城ではまだ大雨が降り続く中、食後の運動にとノースや家政婦達と共に稽古場まで来たシャーロット。用具室から剣を模した木刀を見て持ってくると、稽古場で木刀を大きく振りかぶり、ゆっくりと下ろした
「シャーロット、本当に一人でいいの?」
「ええ、たまには一人で練習をしないと……」
「でも……」
「大丈夫です。何かあればすぐにお母様やお父様を呼びますわ」
「そう、そこまで言うなら……」
一人、体を動かすシャーロットを見て、ノース達が渋々稽古場を後にする。シャーロットが一瞬ちらりと帰る姿を見て、ふぅ。と深呼吸をして右足を大きく踏み出した
「あら、いつの間にか晴れたのね」
稽古場から出てすぐ、眩い日差しにノースが少し目を閉じた。後から出てきた家政婦達も眩しさで少し目を閉じたり、空を見上げて雲の様子を見ている
「いえ、ここだけ晴れているみたいですね」
ノースも空を見上げて雲を見る。ディオロイ城の周りは晴天の中、町付近は稽古場に来た時と変わらず空は暗く、雨が降っていそうな雲行きになっていた
「変わった雨ね」
ノースがポツリ呟いて、まだ地面が乾いていないディオロイ城へと家政婦達と共に歩いていった
「はぁ……。久しぶりは少し疲れるわね……」
ノースが稽古場を出て数分後、一人練習に励んでいたシャーロットが肩を大きく揺らし息を整えていた。少し休もうかと、一瞬目を閉じ、稽古場の入り口の方に目線を向けた
「魔術の練習はしないの?」
突然、背後から聞こえた声にシャーロットが驚き振り向くと、リリーを肩に乗せたシャロがシャーロットの背後に立っていた
「しないわよ、私は魔術が使えないもの」
シャロの答えつつシャロとリリーから顔を背け、また練習をはじめようと、木刀を握り直し、下段に構える。すると、背後にいたシャロが突然シャーロットの右手をつかんだ
「なっ、なによ……」
「もし魔術を使えたなら、リンゴ用意して」
「リンゴ?なんで?」
「リリーと探しても無かったから」
「でも、リンゴなんて……」
シャーロットが話しの内容と手を離さないシャロに戸惑っていると、シャロがつかんだ右手を天井に向けた
「雨が降る」
そうシャロが呟くように言うと、シャーロットが少し顔を横に向けシャロを見る。真剣な横顔に、少し木刀をつかむ力が抜け床に落ちた。カタンと落ちた音が稽古場に響いた瞬間、シャーロットの頭にポツリと水滴が当たり天井に目を向けると、天井から雨漏りのように水が落ち、段々と水の勢いが広がっていく
「ちょっと止めて!」
シャーロットの大声でやっと止まり、びしょ濡れになったシャーロット。しょんぼりとうつ向くと、稽古場の床もびしょ濡れになっていた。呆然とするシャーロットを稽古場の入り口で、濡れる前に逃げていたシャロがフフッと笑ってみていた
「じゃあ、後で貰いにくるから。リリーのためにたくさん用意してて」




