溢れ落ちた後に
「疲れたー」
シャロが逃げて数時間後、ディオロイ城の外は暗くなり、夕御飯を食べ終え、お風呂も終えたシャーロットが部屋のベッドに飛び乗り寝転がる。部屋に連れてこられたノースが布団に丸まるシャーロットを見てクスクスと微笑む
「お母様、今日は一緒に眠りますか?」
シャーロットが聞くと、ノースが頬に手を当て少し考え込む。その間、ノースを見つめ返事を待つシャーロットの目に負けて、部屋の入り口で待機していた家政婦達の方に体を向けた
「そうね、一緒に眠りしょうか。お願いできる?」
「もちろんです。すぐにノース様のお布団をご用意します」
「やった!じゃあもう寝ましょう」
ベッドから降りて、ノースの腕をつかんで引っ張る。強く引っ張られ少しよろけそうになりながらも、シャーロットとベッドに向かうノース。すると、部屋にあるテーブルに見慣れぬ一冊の本が置いてあるのに気づいた
「あら、あの本は?」
「あっ、それは……」
ノースの声に引っ張っていた手を緩める。体が自由になったノースがテーブルに近づき本を手に取る
。青い表紙の本を物珍しそうに見つめ、首をかしげる
「シャーロット、これはどこから?」
「えーと、書庫からです。先程お散歩をした、あの……」
ノースの質問に、しどろもどろになりながらも答えていると、ノースが本を開いて確認しようとページをパラパラとめくる。書かれた内容を読もうとページに手を添えた瞬間、読もうとしたページが水に濡れたように染みはじめ、書かれた文字が滲む。本の異変にノースが驚いていると、シャーロットも気づいて駆け寄る。ノースが本を閉じ、テーブルに置くと、本を囲うように水溜まりがテーブルに溢れ、床に水滴が落ちる。シャーロットが一瞬水滴を追いかけ本から目を離したその間に、シャロから預かった本は水溜まりから無くなっていた
「本からは全く魔力を感じなかったのに……」
ノースがテーブルに手を添える。乾いているテーブルと水滴で濡れたはずの床を見て呟く。シャーロットも本が消えた事に気づいて、恐る恐るノースの顔を伺う
「お母様……あの……あの本は……」
「間違えて術をかけたのかしら。シャーロット、驚かせちゃったわね」
「ノース様、お布団を用意しました」
二人の騒ぎに気づいていない家政婦達が部屋に戻ってきて、テキパキとシャーロットのベッドにノース用の布団や枕を置いて整えはじめる。それを見ていたシャーロットが目線を変えノースを見る。視線に気づいたノースがシャーロットを見てニコリと微笑み背中にそっと手を添えた
「もう寝ましょう。また明日、朝ごはんが楽しみね」




