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Prolog

 両親が離婚して七年──。

 中学校生活を無事に終え、卒業式を迎えた。


 特に思い出らしい思い出はない。

 そもそも友達がいないのだから、別れを惜しむ気持ちもなかった。

 強いて言えば、中学三年の時の担任と好きなアニメについて語り合えたことくらいだろうか。

 あとはすべて、思い出したくもないことばかり。

 それにしても、あんなに酷いクラスだったのに、卒業式になると「別れが辛い」と泣く人がいるのは理解できない。

 まあ、どのみち僕には関係ない話だ。


 やっと地獄から解放される──そう思いたい。

 人と関わりたくない自分にとっては、むしろこれからが本当の地獄の始まりだ。

 次は高校生という新たなステージに立つことになる。

 けれど、過去に何度も友達を作っては失ってきた僕には、もう期待なんてできない。

 新しい場所でまた裏切られるくらいなら、最初から何も求めない方が楽だと思う。

 また同じ思いをするくらいなら、人と関わらず、勉強に集中して好きなことをしている方がずっと楽だ。


世流(せる)くん、お疲れ様。そして卒業おめでとう」

「ありがとう、理恵(りえ)さん」


 彼女は僕の義理の母親で、とても優しい人だ。

 僕とは十五歳差で、母親というより姉のような存在だと思っている。


「そういえばね、担任の先生と話してたんだけど、『保無羅(ほむら)が中二の時にクラスに入れなくなったのに、中三になってからちゃんとクラスに戻った時はよく頑張ったな』って言ってくれたのよ」


 担任の言葉に、少しだけ胸が熱くなる。

 確かに、クラスに戻れたのは簡単なことではなかった。

 あの頃の僕は、唯一の友達に裏切られたと思って、クラスに入れなくなった。

 成績も最低で、高校進学さえ危うかった。

 でも、家族や先生、そして同じように苦しんでいたクラスメイトたちの支えがあったおかげで、どうにか戻れた。

 新しいクラスで、あの子とはもう関わらずに済んだことが一番の理由だ。

 もしまた同じクラスになっていたら、戻ることを拒んでいたかもしれないし、最悪中退していたかもしれない。

 自分の努力があったおかげで、どうにか免れたことだけが救いだった。


「理恵さんや父さんには本当に迷惑をかけたし、感謝の気持ちでいっぱいだよ。次は高校だけど、ちゃんと迷惑をかけないように頑張るね」


 少し苦笑しながら言った。

 理恵さんは何も言わず、ただ僕の頭をなでて歩みを進めた。


「そうそう、今日は卒業祝いだから、夕飯は豪華よ?」

「やった!なんだろう?寿司かな?」


 そんなたわいのない会話をしながら、学校を後にする。


 僕が想像していた高校生活とは違うものになると、今の僕はまだ知らない。

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