第01話 魔素
ー早朝5時ー
「朝ですよ。起きてください。」
「あと1時間…寝させて…。」
「長すぎです。」
[ヒュン]
辺な音がしたかと思ったら、寝床が消えてしまっていた。
「ちぇ、もうちょっと寝かしてくれてもいいのに…」
「カグラ様、もう少し危機感を持ったらどうですか?
明日はもう一回目の試練挑戦日ですよ。」
3日目と7日目にある試練の挑戦日、今日はもう2日目
で、よく考えると、思ったより時間がないと改めて感じる。
「はぁーい。で、今日は何をするの?」
「そうですね。本当は、今日も筋力トレーニングと体力トレーニングをしようと思ってたんですが、カグラ様には、今のところ必要ないと感じたので今日は、
魔素について学びましょう。」
「魔素?聞いたことないなぁ。」
お母さんがそんなような言葉を言っていた気がしないでも無いけどよく思い出せない…
「それでは、一から説明しましょう。まずこの世界で相手に攻撃するには、2つの方法があります。
一つ目は、自分の身体や、剣や斧などで直接相手に攻撃するいわゆる物理攻撃、
二つ目は、魔素を使ってイメージを具現化して攻撃するいわゆる魔法攻撃があります。今紹介した通り魔素は、魔法を創り出すために必要なエネルギーです。
しかし、魔素は他の使い方もあります。今回カグラ様にやって貰うのは、他の使い方のほうですね。」
「他の使い方?魔素は、魔法を作り出すだけじゃないってこと?」
「はい、魔素は、魔法を作り出すだけではなく、体に纏わせることが出来るのです。体に纏わせることによって身体を強化することが出来るのです。見たところカグラ様自身の魔素量はそこまで多くはなく、その代わり身体能力が高い体の作りになっていますね。なので、カグラ様は、基本的に物理攻撃主体の闘い方になっていくでしょう。その為には、魔素を体に纏わせる技術が必要なのです。」
なるほど、つまり魔素を操れないと話しにもならないと言うことか、
「ちなみに肝心の魔素は何処にあるの?今まで生きて来た中で魔素なんて聞いたことないよ?」
「当たり前です。魔素は空気と混ざって至る所に存在していますが、目には見えないくらい明度が高く普通に生きていたらまず目に見えることはないでしょう。」
「それならどうやって魔素を認識するの?目に見えないなら自分が魔素を操れてるのかわからないじゃん、、」
「そうですね。ですが実は魔素を認識する方法が一つだけあります。それはとても単純なことで、魔素を一
箇所に凝縮させればいいのです。こんなふうに。」
そう言うと、彼女が自分の小さな手のひらの周りが緑色に光出した。
「すごー!どうやってやってるの!!」
「ここら辺に漂う魔素を一箇所に凝縮させました。こうすれば魔素が見えるようになり魔素を簡単に操ることが出来るでしょう。最初は目を閉じて精神を統一させ魔素を感じてください。魔素を感じることが出来たら魔素を一気に吸い寄せるイメージをして下さい。そうすれば、魔素を操れたも同然です。では、やってみて下さい。」
「うん、まだよく分かんないけど、とりあえずやってみるね。」
目を閉じて精神を統一させる…
目を閉じて精神を統一させる…
目を閉じて精神を統一させる…
目を…閉じて…精神を…統一…させる…
「あぁぁ!全く分からない!!」
「はぁ、ほんとにカグラ様は、落ち着きがないですね…」
「悪かったねぇ?!落ち着きが無くて、集中力がない人で!」
「そこまで言ってません。拗ねないで下さい。私がサポートしますので、もう一度やってみますよ。」
「うん、じゃあ行くよ…」
「ではカグラ様、目を閉じてください。」
彼女の言う通り目は閉じ目の前には、真っ黒な世界が広がる
「自分の心臓の音を聞いてください。」
[ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン]
ゆっくり動く自分の心臓だけが聞こえる静寂の世界
まるで1人取り残されたような世界
「力を抜いて、自然に身を任せてください。」
ふぅと息を吐き力を抜く、目の前に広がる黒い世界に身を委ねる。
[ポワン、ポワン、ポワン]
聞き慣れない不思議な音、
[ポワン、ポワン、ポワン]
真っ黒な世界に光のような何かが見える、
1個、2個、10個、20個、100個、200個、
もう数え切れないほどの光る何かが、風の道筋をゆっくりと進んでいる。その光る何かは、とても魅力的で、とてもきれいだった。手のひらを胸の前まで持ってゆき、お皿のような形を作り、ここに集まって来るようにイメージする、ゆっくり、ゆっくり集まって来ているような感覚になる。そしてとうとう、手のひらに1つの光る何かが舞い降りた。
[パァァ]
その瞬間、光る何かがとても強く発光し、何も見えなくなった。
目を開けると、目の前に僕の顔を覗き込みながら心配そうに見つめる、妖精の姿が目に入った。
「やっと目を覚ました!大丈夫ですか?あれからもう6時間経ちましたよ、ずっと微動だにせず立っていて、何があったんでか?ほんとに心配させないで下さい!」
「6時間?!そんなに立ってたのか僕は、心配かけてごめんね。でも、見てよ。」
僕はそう言うと、前、彼女がやったように魔素を手のひらに集めた。
「ね!出来たんだよ魔素を感じることが!」
「ほんとですね…普通なら最低でも十日間は習得に必要だとされているのに…」
「え?!それじゃあ最終の試練日までに間に合わなかったじゃん!」
「カグラ様なら、なんとかなるかと。」
「まぁね〜♪」
(それにしてもカグラ様の成長スピードは速すぎる。魔素を感じ取ることだけならまだしも、魔素を集めることまで出来るなんて、普通なら有り得ません。やはりライカ様とレイナ様の遺伝子だけで無く、カグラ様自身のセンスも尋常ではないですね。)
「ねぇねぇ。ちょっと質問してもいい?」
「あ、はい。なんでもどうぞ。」
「えっとさぁ、君が見してくれた魔素は緑色だったのに、なんで僕の魔素は白色なの?」
「あぁ、それはその人の属性を表しているんです。
属性の種類は5つあり、赤、青、緑、白、黒、があります。それぞれ得意分野が違うんです。赤は緑に強く、緑は青に強く、青は赤に強い。白は黒に強く、黒は白に強いんです。」
へぇ〜、色ごとに、相性があるのかぁ。
「因みにお父さんとお母さんは何色なの?」
「ライカ様は黒、レイナ様は、白ですね。」
「そっかぁでも、お父さんもお母さんも今まで何回か僕の前で魔法を使ってたけど、そのときは、色なんてなかった気がするんだけど、」
「そうですね。基本、魔素の色が見えるのは、魔素をこうして集めたときだけで、他のときは、基本見えないんです。そして相性と言っても微々たるものなのであまり気にしている人はいませんね。」
「ふ〜ん。そうなんだね。」
じゃあ僕もあんまり気にしないようにしよう。
いろいろ頭詰め込んでもこんがらがっちゃうからね。
「はい、それではもう次に進みますよ。次は、魔素を自分に纏わせれる様にしましょう。」
「あぁ〜それなんだけど、もうたぶんできると思う。」
「はぁ、そんなわけがないでしょう、まだやり方すらも教えてないんですよ?」
「じゃあちょっと見てて!」
(まぁ、流石に少し出来たような感覚になっているだけでしょう。)
「いいですよ。お願いします。」
「それじゃあ行くよ〜!」
まずはさっきの容量で大量の魔素を自分に集める。
そしてその魔素を自分の血液の動きに合わせて自分に循環させる感させるイメージで魔素を動かす!
「まさか、本当に出来るなんて…」
成功したみたいだ。全身が魔素で覆われている不思議な感覚がする。
「やったね!どう?すごいでしょ〜。」
「はい、ほんとに凄いです。こんなことがあり得るんでしょうか、何かあったんですか?あの6時間の間に。」
「ん〜あんま覚えてないんだけど僕、魔素をすごくはっきり感じられてるんだと思う。目が覚めてから、今まで見ていた景色にプラスして魔素の流れがうっすらずっと見えてるんだよね。だから魔素を今自分がどうやって動かしたのかがよく分かるんだ。」
「なるほど、それはカグラ様のお母様レイナ様が見ていた世界と似ていますね。レイナ様は、この世界の魔素が全て見えているそうです。私の中のレイナ様の記憶がそう言っています。」
「そっか、君はお母さんとお父さんに造られたから、分かるんだね。」
「はい。そうみたいです。」
「よし、じゃあもう暗いし今日はもう終わりかな?」
「そうしましょうか。カグラ様がバカみたいな速さでなんでもこなしてしまうのでもう試練をクリアできるまで成長したと思いますし、明日のためにも早くご飯を食べて早く寝ましょう。」
「バカって言うなぁ。ちゃんと褒めてよ〜、まぁ何にせよ、明日もう早速試練をクリアしちゃうかもね〜♪」
「そう言う気の緩みが命取りになるんですよ!全く、あんまり調子に乗らないでください。」
そう言いながら彼女は食材を出していく。
「そういえば、君の力で料理器具って出せないの?」
「出せるには出せますが、出来るんですか?料理。」
「まぁ見てなって!」
「では、一通り出しますよ。」
そう言うと、料理器具が次々と出されていく。
「ほんと便利だなぁ。」
僕はそう言うと、彼女が出してくれた食材に目をやり、料理を作り始める。
ー30分後ー
「出来た!!」
「意外と美味しそうに出来てますね。」
「でしょぉ♪お母さんにも、センスがあるって言われてたんだよね。さぁ、食べてみて!」
「では、いただきます。……………美味しい!!
何ですかこれ?!ほんとにあの即席の食材で作ったんですか?」
「そうだよ。もっと肉とかがあったらいいんだけど、きのみとか、野菜しか無かったから、用意してくれた調味料で味付けして、混ぜ合わせただけだけどね。意外と美味しくなるんだよ!」
「これは、すごいですね。」
その後は、2人で談笑しながら、お腹が膨れるまでご飯を食べた。
[さぁ、お腹も膨れたところですし、もう寝ましょうか。」
「はぁい、それじゃあおやすみ。」
僕は、彼女が出してくれた寝床に潜り込み、これならお父さんとお母さんを探すことも案外早く出来るかもしれないと意気揚々としながら眠りについた。
これから僕が感じる絶望を知らずに…