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恐怖の地底に放棄された男爵令嬢ですが、冷徹辺境伯様に実力を認められ専属錬金術師として保護されました  作者: 青空あかな


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第31話:肩と腰を癒す椅子、《ビノザンド王専用マッサージチェア》

「「フルオラ様、地底辺境伯様、こちらが宮殿の保管庫でございます」」


 衛兵さんたちに案内され、私とアース様は地下の素材庫に着いた。

 "謁見の間"にも負けず劣らずの重厚な扉が開かれると、広大な倉庫が出迎えてくれた。

 暗黒地底にある倉庫の五倍は広いかもしれないね。

 アース様は衛兵さんたちに話す。


「君たちは席を外してくれ。帰りは我々だけで帰れる。案内ご苦労だったな」

「「わかりました。失礼いたします」」

「ご案内いただきありがとうございました」


 私もお礼を言い、アース様と倉庫を進む。

 どの棚にも所狭しと多種多様な珍しい素材が置かれ、目を奪われてしまった。


「使えそうな素材はあるか? なかなか難しい注文だと思うが……」

「はい、どれも大変貴重な物ばかりです。それに、これだけあれば絶対に見つかります」


 通路を歩きながら素材を手に取る。

 ここにあるのは最低でもBランクで、必然的に高ランクの物ばかりになってしまう。

 申し訳ないけど、王様の使う魔導具なのだから珍しい素材を使った方がいいか……。

 集めること五分ほど。

 最後、使いたい素材が棚の一番上にあった。

 背伸びするけど、微妙に届かない。

 

「ぬぐぐっ……!」

「この素材が欲しいのか? 待ちなさい……ほら」


 必死に手を伸ばしていたら、アース様が代わりに取ってくれた。

 私の手に乗せてくれる。


「すみません、ありがとうございます」

「困ったことがあったら遠慮せず言いなさい。……君は私の大切な専属錬金術師なのだから」


 胸が……パッと明るくなった。


「そう言っていただけて……嬉しいです」


 不思議とアース様のお顔が見れなくなった。

 ……恥ずかしくて。

 ちょっと俯いてしまったら、アース様は慌てた様子で言った。


「……あ、いやっ! 今のは別に大した意味はないからなっ! 大切なのは大切だが、それは錬金術師として……! さ、さあ、素材が準備できたら国王陛下の下に戻るぞっ!」


 アース様は慌てた様子で言うと、そそくさと出口に向かった。

 その逞しい背中を見つめながら、私も後を追う。

 ふと、赤い髪からはみ出たお耳が赤くなっているのに気づいた。

 きっと、私の顔も同じくらい赤いと……思う。



 □□□



 "謁見の間"に戻ると、王様が今か今かと待っていた。


「フルオラ嬢よ、お目当ての素材はあったかの?」

「はい、おかげさまで素晴らしいものが見つかりました。これだけあれば、良いお椅子が錬成できると思います」

「おおっ、それは楽しみじゃ」


 さっそく錬成を、といきたいところだけど、その前に一つ確認しておきたいことがあった。

「あの……王様。錬成陣を床に描いてもよろしいでしょうか。錬成が終わるとすぐに消えるのですが……」

「ああ、もちろんじゃよ。好きなだけ描いてくれたまえ」


 その言葉を聞きホッとひと息。

 鏡みたいに磨き上げられた床にチョークを走らせるのは、少々気が引けたのだ。

 さらさらと錬成陣を描き、素材たちを並べる。

 だいぶ高級な素材を使わせていただいた。



<雷琥珀>

 ランク:S

 属性:雷

 能力:雷が落ちた木で育った琥珀。豊富な雷属性の魔力が宿る。砕くと雷が迸るので要注意。


<グミ石>

 ランク:A

 属性:無

 能力:適度な弾力性を持つ不思議な鉱石。食べられそうだが食べられない。


<鎧ワニの革>

 ランク:S

 属性:無

 能力:非常に頑強な<鎧ワニ>の革。なめしになめすと、鎧という名に反するほど滑らかになる


<晴天綿>

 ランク:S

 属性:無

 能力:<空詠み綿花>という天候に左右されやすい植物から作られた綿。晴天のときのみに採取された綿は、雲のような柔らかさを誇る


 

 疲れを癒やしてくれる椅子……。

 前世にも似たような商品があった。

 インターネットで調べた構造を思い描いて魔力を込める。


「【錬成】!」


 錬成陣が青白くぱぁっ! と光る。

 光の向こう側で、王様の感嘆とする表情が見えた。


「なんという美しい光じゃ……。これほど美しい錬金反応を見たのは初めてじゃよ……」


 錬成に影響が出るとまずいので、心の中でお礼を述べる。

 私にとってはいつもの光景だけど、褒められるのはやっぱり嬉しいね。

 光が消えると、椅子型の錬金魔道具が姿を現した。



《ビノザンド王専用マッサージチェア》

 ランク:S

 属性:無

 能力:肘掛けの凸部ボタンを押すと、自動で肩や腰をマッサージしてくれる椅子



 できあがったのは、前世でいうマッサージチェアそのもの。

 機能性を重視したから装飾はシンプルだけど、黒の布張りが高級感あふれる。


「王様、完成いたしました。《マッサージチェア》でございます。肘掛けのでっぱりを押すと、自動でマッサージしてくれます」

「おおっ! どれ、さっそく座ってみようかのっ」


 王様は飛び乗るように座ると、でっぱりをポチりと押す。

 《マッサージチェア》の背中がうにゃうにゃ動き出し、王様の身体を癒やす。

 瞬く間に、王様は恍惚とした表情となった。


「いかがでしょうか、王様」

「はわぁ……しゅばらしいぞよ……。お主はしゅばらしい錬金術師じゃ……」

「喜んでいただけで何よりでございます」


 マッサージを楽しむ無邪気な様子は子どもみたいで、最初に謁見したときよりずいぶんと親近感が湧いた。

 同時に、王様という仕事は、想像以上にプレッシャーがあるのだなと感じた。

 少しでも日々の疲れが取れるといいな。

 王様はしばらく堪能されると、天高く拳を突き上げた。


「決めた! 今日から《まっさーじちぇあ》を玉座にする!」


 ドンッ! という効果音が聞こえそうな勢いで、王様は宣言される。

 ……え、えっー!?

 まさかの事態に、それはもう大変に驚く。

 もちろん気に入ってくださるのは嬉しいけど、玉座なんて聞いてないよ~。

 とはいえ、さすがに大臣の方々が反対されるでしょう。

 マッサージチェアを玉座にした国なんて、前世の漫画や小説でも見たことがない。

 突然の宣言を聞くと、大臣方は王様に話す。

 それはもう嬉しそうに。


「大変良いアイデアでございますよ、王様! おみそれしました!」

「玉座にすれば、必然的に他国の要人にも見ていただくことができます!」

「毎日座らないともったいないですものな!」


 私の思いに反して、大臣の方々もなぜか乗り気。

 満場一致で、《マッサージチェア》は新しい玉座に決まってしまった。

 こんなことなら、もっとデザインに凝ればよかったよ。

 素材庫にはおしゃれな宝石とかもあったなぁ~。とか思っていたら、隣のアース様がこそっと私に言った。


「魔導具が玉座として認められるなんて、君はやはり相当な実力の錬金術師だな」

「あ、ありがとうございます。ですが、まさかこのような事態になるとは思わず……。次からはデザインにも凝るようにします」


 その後、無事に王立図書館の使用許可もいただけ、私はアース様と一緒に図書館とへ向かう。

 暗黒地底の"大穴"を防ぐために……。

 良い資料が見つかったらいいな。

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