伝説の駅伝
俺たちの駅伝チームは五人。
四人居れば試合に出られるのだが、一人でも欠けると勝機は無くなる。
何せ五人目の部員が超問題児だからだ。
しかし俺は大会前日、不覚にも足を痛めて戦力外となり、観客の中に混じっていた。
俺の代わりに出るのは勿論、アイツだ。
「オーケーイ! じゃんじゃん走っちゃうよ」
四条はいつもの調子で軽薄に言った。
四条はマラソンランナーらしかぬ長い金髪をなびかせて、スタートラインに立っている。
(くっ、まあいい……。次の走者にタスキが渡ればそっから巻き返せる……)
駅伝が始まろうとした、その時だった。
ドゥルンドゥルン! とバイクの音が聞こえてきた。
何だ何だとその音の方を見てみると、
「オーケーイ! これでV確定っしょ!」
いつの間にか、四条がスタートラインでバイクにまたがっていたのだった。
(え、えええええええええええええええええええええ?)
ちょっとなにやってんの。
「おいおいキミいいいいいい! 何してんだ失格だ!」
叫びながら係員がかけつけてきた。
「えー何で? バイク使っちゃダメ?」
当たり前だろ。
使っていいのはテメーの肢体についた二本の足な。
「○○大学失格! 出ていきたまえ!」
係員は酷く怒って言った。
俺たちのチームは、一歩も走ることなく、即失格となった。
「何だよ~。やっぱノーヘルじゃダメか」
そういう問題じゃなくて。
「四条……他の皆にどう説明する気だ?」
俺が何とか怒りを堪えて言うと、四条は、
「すみませんでしたー! ってな方向で☆」
すみませんじゃ済まねーんだよバカ☆タレ。
「よーし、今の俺の勇姿、ユーチューブにアップしちゃおっと☆」
その動画再生数が一億回を突破し、俺たちのチームは超有名になった。
その後、何度も優勝するほどのチームまで育ったのは、また別の話。