表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

凄腕スナイパーと風鈴


 日本から依頼が来た。

 標的は某市長。報酬は3000万。


「平和ボケした国で、しかも某国のレートで換算すると3人分か」


 フランスから日本に上陸した足で、俺、ヨハンはそのまま現場へと向かった。

 ボロイ商売に思わずニヤけつつ、スナイパーライフルを手にビルの屋上へ。

 黒の帽子に黒のロングコートという、いつもの暗殺スタイルで。


 もうすぐ隣のホテルから標的が出て来る。それまでに標的の写真を確認。

 市長は黒スーツに赤ネクタイを締めたつるっぱげ。やや太り気味、歳は53。ガマ蛙の様に脂ぎった顔面が特徴の男だ。


「っと、おいでなすったな」


 ホテルから出てきた市長の恰好は写真と全く同じ。俺は早速、スナイパーライフルのスコープを通して市長を確認した。


(……ん?)


 俺の目に飛び込んできたのは、予想だにしない光景だった。

 容姿、恰好は写真そのまま。なのだが、市長は全身の至る部位(頭部、顔面も含む)に風鈴を付けていたのだ。

 いや見間違えだろうと、一旦目を離し、スコープを通して確認するも、何も変わらない。

 市長は全身の至る部位に風鈴を付けている。全て銅製(?)と思しき銅色の風鈴。

 音が鳴るようにしているのか、青い紐を接着面にして風鈴が着けられている。

 市長は何事も無いように、風鈴をチリンチリン鳴らしながら、ホテルから遠ざかってゆく。


(え、ええええええええええええ?)


 ちょっと待て。

 何だアレは?

 市長とすれ違ってく人達も無反応だし……。

 何なの? 

 もしかして外人が日本に忍者が居るのは当たり前って勘違いしてる的な感じのアレ? 

 ああいうの珍しくないの日本?


 俺が動揺する間に、市長がリンリンと風鈴を鳴らしながら進んでいく。ここから徒歩5分の場所にある駅が市長の目的地。それまでに暗殺しなければならない。


(くっ……ここはプロとしてクールに……)


 なれるわけがなかった。

 あんなの想定外だし、歩く度リンリンうるせえから集中力削がれるし。

 風鈴の質も硬そうだから、ライフルの弾道が逸れて急所を正確に捕えられないだろうし……。

 連射すれば暗殺は可能だ。スナイパーライフルと聞けば連射は出来ないという印象を持っている人が居るだろうが、最近のものは可能。

 なので連射して風鈴を逸らし、それによって出来る僅か一瞬の隙間(急所)を撃つことなど、俺にとって造作もないこと。

 だが俺は今まで一撃で標的を仕留めてきたし、一撃で仕留めることに強い拘りがある、プロとして。

 まあ今プロとして冷静になれてないけども。


(こ、ここは発想を変えて……。そうだ……!)


 辛うじてプロとしての機転が働いた。

 俺は早速、ビルの間の段ボールで寝ていたボサボサ頭のホームレスに1万円を渡し、市長の風鈴を出来るだけ多く奪って来いと命じた。


(頼むぞ……)


 俺は定位置に戻って、快諾してくれたホームレスの動向を見守る。そしてホームレスが市長と対峙。

 ホームレスがそのまま市長の風鈴を取り除いて逃げ去ってくれるのかと思いきや……。

 ホームレスは市長と何らかのやり取りをしてから、SPのように回りを注視しながら市長の前を歩き出したのだった。


(え、えええええええええええええ?)


 おい待て。なにやってんだあのボケ。さては更なる金で買収されやがったな。しかもこれゼッテー俺の存在チクってるわ。市長も警戒してる様子だし。

 ここで市長、駅到着まで、もう数10秒……。


(もう、なりふり構ってられるか!)


 タタタタタ! 俺はライフルを連射し、市長を撃った。が、瞬間に市長が陽炎の如く消え去り、ライフルの弾はダダダダ! と地面に埋まっていった。


「なっ!」


 スコープごしに驚愕する俺。

 すると、


「残像だ」


 チリンという音と共に、俺の背後からその声が聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ