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再び立ち止まる。そこは既に定位置になりつつある階段の前、ホールの真ん中であった。


射撃手は伏せていた身体を起して立ち上がる。そうして再び、床に捨てたサブマシンガンを構え、引き金に指をかけて声を張り上げる。


「中々やりおるようではないですか。ですが、私はヤツほど油断は」


そんな言葉が放たれ続ける中、ナツメは1つ息を吐きながら引き金を引いた。


弾丸が飛び、男に直撃あたる。銃を落として左肩を押さえ、言葉にならない叫び声を上げ、後退する男を見ながら再び、撃鉄を起して弾丸を薬室へと送り込む。


続けて発砲。服に血の花を咲かして、男は身をよじり遂には身体を床に落ち着かせる。


耳障りな叫び声が、唯でさえ痛い頭を悩ませた。


敵を前に講釈を垂れていた男は、聞く耳持たないナツメによって瞬殺。


そろそろ西篠を探さなければ体力的に持たないと考え撃鉄を起して、振り返り、背後――――階段へと身体を向ける。


すると、そこには人影があった。


ナツメはすかさず、銃を向けながら発砲。だがそれを予測したように避けた影は、真っ直ぐ階段を駆け下りる。


持続する激痛、脈を打つごとに倍増する痛みに耐え忍んできたナツメは、既に無心。


作業に近い行動になりつつある発砲を、影が迫る中で繰り返した。


ガチン。撃鉄が位置を戻して音を鳴らす。


が――――弾は銃口から排出されなかった。


――――弾切れか。ナツメはそう理解して、素早く回避行動を取る。影が頭上に掲げる、陽光に光る何かが刀剣だと理解しながら、ナツメは床を強く蹴った。


些細な衝撃が烈しい痛みへと変換される。激痛で思考が停止した。


その直後、先ほどまでナツメが居た場所に、鋭い刃が振り下ろされた。絨毯が切り裂かれ、床に深い溝が出来る。伝わる衝撃は、影の動きを僅かに鈍らせているようだ。


正に紙一重。鈍い音が耳に入って、ナツメはハッとすぐさま思考をめぐらせはじめた。


――――体力は如実に限界値へと向かっている。雑魚が3人、昨夜地下牢に来た2人と、その門番をしていた1人だという事をすっかり忘れていた。だが、まぁ……やるしかないんだろうなぁ。


思わぬ伏兵の正体を認識し、ナツメは更に背後へと跳ぶ。


横なぎに振るわれた剣を難なく避けながら、ナツメは肺に入れた空気を一気に吐き出すように言葉を紡ぐ。


「干渉物解除、素早さ80、力20……左腕の感覚を切り離し、再振り替え完了」


左手の指先すら動かず、そもそも左腕が全く動かなくなる。邪魔な腫れ物のような形になったソレは、それでもその傷から伝わる痛みが消えたのでナツメは良しとした。


そうして居る間に、男は距離を縮め、気がつくとその切っ先をナツメの額目掛けて突き出していた。


慌ててクビを横にずらす。


弾丸のような鋭い一線は頬を掠り、背後の虚空を貫いた。頬に熱い傷を覚えながら、ナツメは屈み、前転するように前へ、男の横をすり抜けて移動。


一瞬遅れて、ナツメのクビを刎ねるために横一閃を放つが、すばやさを強化したナツメの速度に追いつけてはいなかった。


立ち上がり、ステップを踏むように移動。痛みは無く、清々しい気分のまま、ナツメは男の背後へと回った。


男がナツメの姿を見失い、振り返ろうとする際に、ナツメは開く足の間に、自身の足を挟みこみ足払いをする。


振り向き様、さらにバランスを崩された男はそれでも根気良く、まだ残る足で立ち続けようとするが――――右手で崩れていく方向へ更なる力を加えて、床に叩きつける。


倒れ様に大きく振られた刀剣は、油断していたナツメの腹を切り裂いた。浅くは無く、だが気にするほど深くはない傷を残し、男は床に背を打ち付ける。


ナツメはすかさず刀剣を握る手を蹴り、離したところで再び蹴って男から距離を置かせる。


短く息を吐いて勢いに任せて立ち上がろうとする男の尻を蹴って、転ばせ、倒れたところに、横腹を力いっぱい蹴り飛ばした。


口から息を砲弾のように吐き出し、呻く。


ナツメはソレを見て1つ嘆息して、もう一度ソレを繰り返した。


足の甲が男の腹に触れ、衝撃を伝える。無理矢理加わったその力はどうも受け流すには難しかったらしく――――ボキリと、骨が折れる鈍い音を足に響かせた。


男が眼を剥きながら断末魔の如き叫び声を上げる。ナツメはそれでようやく暫し行動が出来ないだろうと判断して、男が持っていた刀剣を拾い、また1つ、大きく息を吐く。


「……もう高見の見物は終わりだ。出て来いよ、決着をつけようぜ……西篠!」

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