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第10話 2人の強引な男の子


「それで……どうして2人して仲良く帰ってきたわけ? 俺のことで頭いっぱいにして帰ってきてって言ったよね? 藍」


 隼人は黒いショート丈のエプロンをして、仁王立ちで玄関に立っていた。キッチンから美味しそうなミートソースの香りもしてくるし、一生懸命料理をしててくれたんだと思う。……私の帰りが遅いことを、心配しながら。


「ごめんね、隼人、遅くなって」

「藍……その顔……俺に言わなきゃいけないことあるんじゃない?」

「隼人、俺が言いたいんだけど、俺……」


 隼人は、くるりと背を向けてキッチンへ向かった。


「まぁ、とりあえずお帰りなさい。ミートソースパスタ冷めちゃうし、とりあえず上がってよね。食べながら聞く」


 私も拓哉は顔を見合わせて、軽く頷いてリビングへ向かった。


 ◆


 気まずい食卓。

 隼人は、私たちとは目を合わそうとしない。

 ずっとパスタ皿に目を落としている。


「…………」


「隼人、俺、藍に告白した……」

「…………そう……」


 まるでわかっていたんじゃないかというほど、動じない隼人。

 パスタをフォークにくるくると絡めながら、隼人は顔を上げずに、ポツリと話し始めた。


「俺は……正直ハンデしかない。拓哉さんみたいにずっと藍とつかず離れずいられたわけでもないし、年齢差だってある」

「隼人……」


 ――私は正直、なんて言っていいかわからなかった。恋愛について考え始めたのが、最近の話だから。それに、どうして私なんだろう、という思いも拭い去れない。


 ……でも……。


「隼人、あのね……」

「待って。……言わないで。藍、その先は」

「え……」

「俺、今のままだと、拓哉さんに勝てる要素ないもん。だから返事、保留にしといて」

「隼人……」


「でもさ……!」


 隼人は、カチャリとフォークを置く。


「でもさ、年齢差がなんなわけ? 長い目で見たら、年齢差あって男が若い方がいろいろとメリットあるし?」

「……言ってくれんじゃん」


 ――カチリ、と拓哉の火に点火する音がした。


「隼人……拓哉……?」


「隼人、お前、なかなか(したた)かなヤツだな」

「当たり前デショ? きちんとアピールしないとなかなかハンデは埋められないんでねっ。今は望み薄いからって、俺全然、諦める気ないし、負ける気しないし? 短期的に一緒に住んでいる拓哉さんより、チャンスあるし?」

「……チャンスってなんのチャンスだよっ」

「そりゃま、いろいろ? 藍の嫌がることはしないけどね?」

「コイツ〜!」


 ――ううううう〜。


 目の前で繰り広げられる、キャンプファイヤーみたいな激しい攻防。火の粉がバチバチと飛んでくる。


「「――藍!」」

「……は、はいぃっ」

「「んで、どっちがいいわけ?」」


「ううう〜。そ、そう……言われましても……」


 本当に申し訳ないけれど、母子家庭ではなくなって生活に余裕が生まれた今、ようやく恋愛に目を向けられるようになった初心者マークの私は、なにも言うことができない。


「――決めた! アピールタイムだ! 期限は1週間。今日が月曜日だから、週末の月曜日まで。藍にちょっとでもいいなって思わせた方が勝ちってことでどうです? 拓哉さん」

「――乗った! 年下から提案されたのは(しゃく)だけど、俺のほうが藍を思う気持ちは人一倍強いってこと、藍にわからせてやる!」

「――それなら僕も負けないんですけど?」


「「――いいよな、藍?」」


「ううう〜、は、ハイ……」


「よし! 決まりだ!」

「負けませんからね! 拓哉さん」

「返り討ちにしてやるよ」


 ――顔から、火が出そうです。

 好きって言ってくれるのは本当にありがたいことではあるけれど、こうも、私を目の前に好き、好きって言われると……。


 思わず、両手で顔を隠してしまう。


 ――困ったことがね。……ここだけの話。

 2人とも強引な男の子なんだけど……。


 ……私、強引な人がタイプみたい……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] あぁー、大変な騒ぎに笑笑 隼人君のませてるんだか子供なんだか微妙な雰囲気がすごく出でますね。 その挑発にのっちゃう拓也君も……。 熱いバトルになりそうです。 それにしても、強引なタイプ…
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