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No.31 ゲーマーとヒーロー

 ログインを済ませ、テントから出るとゴブリンの集落はプレイヤーが増えたため、賑わっていた。

 荷馬車、五台分の鉱石は監視塔を経由しながら、PKたちに運んでいる。召喚した馬や、どこから連れてきたのか、知りたくもない馬などを用意して運搬していった。今回の鉱石は全て、報酬として渡した。


 鉱石の配分は任せたので詳しくは知らないが、最終的には力による解決が行われたと、ハルやゴルドから聞いた。

 

「こんちはー、今ログインっスか?」


 鉄杭が山盛りの木箱を運んでいた覆面Aが丁度よく、通りかかる。集落内では偽装を解除しているので判別が楽だ。


「そんなとこ。ところで、あの動画撮影したの誰?」

「え?」

「誰?」

「え、えーと……」


 めちゃくちゃ目泳いでるな。隠し事下手くそか。いや人の事言えたもんじゃないが、ここまで露骨に分かりやすくとな。


「もう責める気はないから、次動画撮る時は、相談しろって伝えてくれ」

「──はい!?」


 もう過ぎた事なので責め立てるつもりはない。もちろん最初は考えたけど、あれはあれで見せしめとしての効果もありそうだ。

 覆面Aの作業の邪魔になるので早々に立ち去る。向かうは、ゴブ小屋だ。


「こんにちは、トウヤ」

「待ってたよー」


 扉を開けるとゴルドとハルの挨拶をしてくる。この小屋で三人で話をするのが懐かしく感じる。


「ちょっと遅れたかな?」

「僕たちも、今きた所だよ」


 背嚢を下ろして、腰を下ろす。ゴブリンたちの手製座布団は植物繊維で編まれている割にふかふかだ。


「それでハルさん」

「また“さん”付けしてますよ~?」

「慣れるまで、時間かかりそうです」

「トウヤ、敬語になってるよ」


 ぬぅ……


 フレンドなのだから、敬語を止めようと二人から言われた。この前、NPCのマトーとのやり取りから丁度いいタイミングだと思ったらしい。

 それで敬語なしで頑張ってるが、癖になっているのか、こうして所々が敬語になる変な喋り方になってしまった。


「精進します……」

「うむ。頑張って」

「それで話ってなに?」


 話が逸れた。集まってもらったので本題に入るとしよう。


「二人とも通知が来てるとは思うけど”ゴブリン集落復興依頼”についてどう考えてる?」


《依頼:ゴブリン集落の発展(γ(ルートガンマ))》


《NPCの定住1/5》

《探求者プレイヤーの訪問26/30》


 表示を出せば数字は変わりなく、依頼の一覧に映り出されている。


「出来ればクリアしたいね」

「同じく、それとNPCで来てくれそうな人に、心当たりがあるよ」


 全員クリアする方向だな。それにゴルドがNPCに心当たりがあるときた。プレイヤーを集めるより大変そうなNPC集めだ。しかも定住になる。その候補がいるだけでも助かる。


「プレイヤーの方は、私の口の固そうな知り合いにお願いしてみる。ゴルドのNPCについて教えてくれ」

「今もいるなら鉱山に居ると思うけど──」


 話を聞くと、どうやら鉱山で鉱夫をやっている。コボルトらしい。カタコトてはあるが、人語を理解して意思疎通は可能との事。

 ゴルドが鉱山に居た頃によくお世話になったNPCらしい。


「コボルトならすぐ見つけれそうだな。リステアで他のNPC探す時に鉱山も寄ってみるよ」

「お願いしますね! あと未確認の素材も見てきて下さい!」

「はいはい。お金もあるから少し高くても買っとくよ」

「私はつるはしのヘッドをできるだけ、大量にお願い!」


 本当にブレない二人だ。逆に安心感すら覚える。

 マトーにも必要な物がないか聞いたら、耐火レンガを大量に欲しいとせがまれた。話を聞くと鍛冶屋の端くれであるらしく。レンガさえあれば、ここで鍛造が出来るよなると豪語してた。


 レンガもミミに食わせれば大量に持ってこれそうだし、丁度いいだろう。それに鍛造できれば玄鉄鉱石を運ばすに加工できるのはありがたい。


 商業区画にでも顔を出して耐火レンガについて聞いておこう。



 城郭都市リステアの東門の手前で変なのに絡まれてしまった。


「キサマがPKたちの親玉だな! 許せんッ!」

「違います」

「…………キサマがPKたちの親玉だな! 許せんッ!」

「だから違います!」


 私の前に立ちはだかる人物。どこぞのヒロイック、いや特撮ヒーローの様な出で立ちの男が先ほどから進路妨害をしてくる。

 全身タイツの上からそれはもう、特撮仕立ての鎧を着こんでいる。近年の様な、ごてごて感はなく、初代に遡った様な素朴で、丸みを帯びたフォルムが美しい。鎧は素材が何で出来てるか聞きたくなるほど精巧さが際立っていた。


「人違いですので、私はこれで失礼しますね」

「待てェいッ!」


 爆発音と共にヒーローの後ろから、赤青黄と三連発の爆発が起こる。演出か何か知らないが、ヒーローのHPが六割まで減った。なかなかに体を張った演出じゃないの。


 煙が風で流され、見物人がむせ始める。門番をしている衛兵に助けを求めるが、目線を外されてしまった。

 人だかりも大きくなって来ているので早くこの場から離れたい。


「悪の親玉ってなんなんですか!?」

「お前が襲った商人たちの事を忘れてたのかッ!?」


 何言ってんだコイツは……。


「商人たちが荷馬車を奪われて悲しみに暮れていた。話を聞いたらPKたちに襲われたと聞いた! そして俺はある動画を見て、お前がそのPKたちの親玉だと確信したの、ダ!」


 また爆発が起こる、今回は一回だ。そしてHPが半分になり、慌てて仮面をずらして、回復薬を飲み干した。


 あの動画のせいで、おかしな奴に絡まれているのか!

 やっぱり動画上げた奴を吊るすべきだろうか。

 それよりも今はコイツが先だな。


「私もその動画を見たけど、PKK動画なので、その商人も別のPK集団の一員では? それにPKがPKKしてるなら、アンタに合わせて言うなれば、ダークヒーロー的なもんだろ?」

「──クッ! ダークヒーローとかカッコいぃ……!!!」


 膝をついて何か言ってるが、気にする所そこなのか。


「だがッ! 俺は、俺の信じる俺を信じたァッ!」

「あ、コイツ馬鹿だ」

「正義の執行者、アーバイムが、お前を倒すッ!」


 決めポーズが決まるとワンテンポ遅れて一際デカイ爆発が、アーバイムと名乗った男の後方で起きる。

 爆風は目を防ぎたくなるほど強力だ。それが過剰な演出の元、爆発が数回続くとアーバイムが煙で見えなくなる。

 土埃と静けさが残り、次第に周りがざわめきたつ。煙が消え、爆発の爆心地近くで、倒れて動かないアーバイム。体は一瞬で泡になって消えた。


「……え? 自爆?」


 見物人の1人がポツリと呟くと、ガッカリした様子で人だけりは解散していく。見せ物が終わり、いつも通りの人の行き交う東門に戻った。

 一瞬で興味を失われるアーバイムが少し可哀想に思える。

 

 残るは死亡時のドロップ品だけだった。




〈WORLD topic〉

《待てェいッ!》

 後方1メートル地点に”三色”爆裂魔法

《ダ!》

 後方1メートル地点に爆裂魔法

《お前を倒すッ!》

 後方1メートル地点に”数回”爆裂魔法


 オリジナル詠唱は言葉の節に属性や効果、範囲や効果対象などを織り込む。言葉が短いほど、複雑な調整が難しくなり、消費MPが増える。

 色々出来て便利だが、結局は覚えるスタンダードな魔法がもっとも使いやすい。

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