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No.27 ゲーマーと鉱山争奪戦(3)

 獅子王クラン一団と共に鉱山へと向かっていた。

 まさかクランのほぼ全員を動員して向かうとは……。私と対峙した時よりも機動性を重視しているのか、大盾からヒーター・シールドと呼ばれる大盾を軽量化した物に変更され、前衛が装備している。

 リバースティアも片手剣になったためか、盾を装備して徒歩で進んでいる。馬はどうやらお留守番みたいだ。


 各自役割を理解して陣形を組んで進軍する姿は、高揚感を覚える。私も一騎当千よりも、こうした個が一団となり、活動するのはけっこう好きだ。

 その集団も一つの要因で解散などもよくある……ウッ思い出すと頭が痛くなる。


「……リーダー」


 古い記憶に頭を痛めていると、斥候(スカウト)だろう、軽装の女性がリバースティアに声をかけた。

 こちらを気にかけている女性にリバースティアは、構わず報告するように促した。


「……樹海に入ってから数人に尾行されてます。どうしますか?」


 こちらを睨まないでほしい。私だって困ってるんだから。誤解が生まれる前に釈明しておこう。


「数日前から私も尾行されて、困ってたんですよ。獅子王クランが鉱山の情報買ってくれて本当に良かったです」


 青筋を立てて睨んでくる女性とほ正反対に、リバースティアは獰猛に笑ってみせた。高笑いにクランメンバーが一斉に振り向くが、気にも止めず笑った。


「いやはや、鉱山に目が眩んで、細かい所を聞かなかった俺が悪いですね。それに尾行まで付いてくるなら、鉱山の価値は確かなようだ」


 やれやれと、大げさに肩を落としてみせる。それも一瞬の事、表情を引き締め、リバースティアは女性に尋ねた。


「確実に仕止められるか?」

「……必ず!」


 リバースティアの問いに短く、はっきりと答え、斥候の女性は踵を返して一団から離れて行く。今のやり取り、かっこいい。


「さて、トウヤさん。もう隠してる事はないですよね?」

「えぇ。出来れば、私も尾行してくる輩の正体を知りたいですね」

「……食えん人だ。片付くまで、少し迂回して進みますが、いいですね?」

「構いませんよ」


 進路を変更して進むと、程なくして斥候(スカウト)の女性が戻ってきた。どうやら無事に排除できたようだ。不意打ちで仕止めた様で、情報は得られずに終わった。


 進路を戻して、最短距離で鉱山に向かう。少しすると、周囲の地形とはまた違った場所に出る。地層が隆起して断層が露出する所に鉱山はあった。

 取って付けたような簡素な扉を開くと小さな部屋と地下に続く道がある。


「多少の物資は置いていくので、使って下さい」

「助かります。運搬に難ありですが、防衛には向いてますね」


 概ね満足してくれた様子だ。許可をもらい、外にいる他メンバーにテントなど物資を販売してから、監視塔に戻るとしよう。



 第12監視塔に戻り、不足した物資を補充した。城郭都市リステアから離れてるため、物価が高めだが、しょうがない。人も増えている状況なら、もっと物価が高騰するだろう。


「──例の商人、こっちに気づいて駆け寄ってきてるけど、どうする?」


 人混みの中、耳打ちされるように小さな声で、情報が舞い込んでくる。横目で確認すると目印のネックレスが見えた。


「まだ会うには早いから、ちょっと引き離してくれ」

「了解」


 後方で何か騒ぎが起きたのか、周囲の人々もそちらに注目が集まる。その隙に私はその場を離れ、再び天幕と旗がひしめくエリアに向かった。


 探し歩くと”異質な旗”のような物が目につく。棒の先にバケツヘルムを引っ掻けて掲げられていた。こんな事をする一団はアイツらしかいないだろう。


 グレートヘルム団の陣地に私は来た。見渡す限り、バケツ頭がウロウロしている。知人なら数名いるが、見た目で判断できないので困る。

 戸惑っていると声をかけられた。


「あれー? トウヤじゃん」

「えーと。山田3?」

「正解! よくわかったなー」


 近づいてくるバケツ頭に、声から推測で人物名を答えたら、どうやら正解みたいだ。


「ワールドアナウンスびっくりしたわー! まさか、トウヤの名前出てくるなんてなぁ」

「私もびっくりしたよ。まさか、名前まで言われるなんて思わなかった」

「あれなー。けっこう恥ずかしいよな。バケツ被る?」

「遠慮しとく」


 ケラケラと笑う山田3。久々に会ったので、少し立ち話をしてから本題に入る。


「クランリーダーに耳寄りの情報持ってきたけど、話通せる?」

「リーダーなぁ。あっちこっち放浪してるから、サブリーダーとなら会えるぞ」

「サブリーダーなんていたっけ?」

「まぁいいから」


 歩きだした山田3の後ろを付いていくと、一際大きな天幕に案内された。中には話し合いをしているバケツ集団が居た。こちらに気づくと一斉に振り向かれる。


「サブリー、お客さんだよー」

「ん? あぁ、トウヤさんか。お久しぶり、ぷりんです」


 サブリーダーはぷりんだったのか……。そんな話聞いてなかったな。


「こんちには、ぷりんさん。サブリーダーだったんですね。驚きました」

「今は臨時でやってるだけですよ」

「ほぼ確定だけどな」

「そうそう」

「うんうん」


 ぷりんの意見は、山田3と多数のバケツの言葉によって否定された。怒り返さないのは、その事実を半分は受け入れてるからだろう。もう半分はため息で状況を理解した。


「なんか、その……頑張って下さいね」

「ありがとうございます……それで、何か用事でもありましたか? リーダー不在ですが、私で良ければお伺いしますよ」


 気持ちを持ち直して、ぷりんは私に尋ねてくる。余り、ぷりんに負担はかけたくないが、悪い話でもない。


「玄鉄鉱石採れる、鉱山の情報を公開しようと思いまして、お金は入りません」

「おいおい、マジかよ!?」

「……いいんですか?」


 疑心暗鬼になっているが、そりゃそうだ。タダほど怖い物はない。


「お金はもらいませんが、一つだけ条件があります。この鉱山の情報をグレートヘルム団のもと、他プレイヤーと共有して下さい」

「……それだけでいいんですか?」

「独占よくありませんからね」


 そう独占はよくない。本当によくない。


「して、その心は?」

「そのほうが私にとって都合がよく、面白くなるから!」

「よし分かった! 任せろ!」


 山田3の問いかけに私が答えると、即答で了承してくれる。やっぱり隠し事はよくないよね。山田3とハイタッチして戯れていると、バケツ越しにでも分かるくらいに、ぷりんが呆れているのが分かる。


「……本当にいいんですね?」

「はい。先ほどの条件さえ守ってもらえれば何でもいいです」

「なら早く行こうぜ! サブに鉱夫もってる奴集めてくるわ!」


 ハイテンションで天幕から飛び出して行く山田3とバケツたち。すぐに外が騒がしくなってくる。


「──トウヤさん。何かあったら何時でも駆けつけるので言ってくださいよ」


 残ったぷりんは、私に深くは追及せず、協力を約束してくれる。本当に面倒見が良い人なのだろう。


「ありがとうございます。さぁ早く、鉱山に向かいましょうか!」




〈WORLD topic〉

 2ndWORLDの大陸には様々な資源を内包されている。地下資源、海洋資源、植物や創世記などに登場する架空の資源など、全てには、何かしら使用用途がある。

 現実に忠実な製法、また魔法や古から伝わる錬金術などの現実ではあり得ない要素を含み、混ざる事で、幾多の可能性を秘めた物作りが行える。

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