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No.20 ゲーマーと宝箱

 どうにかダンジョンから抜け出す事ができた。

 途中、灯の杖の面々と遭遇してボスを押し付ける形になってしまった。まぁ武器も持ってないし、トッププレイヤーなら大丈夫だろ。うん。


「ゴルドさん、外に出ましたよ」

「うぅ……頭グラグラします」


 揺られ過ぎて酔ったのか、顔色が酷い。外の空気でも吸って休憩をとることにした。ゴルドが休んでいる間に宝箱を取り出しておこう。


「ゴルドさんどれがいいですか?」


 ゴルドに向かって三つの宝箱を並べる。見た目はどれ同じ様な箱だ。ゴルドは少しずつ悩んで、右の宝箱を選ぶ。


「私はこれにします!」

「じゃあ私はこれで!」


 ゴルドの選んだ反対側のを選び、真ん中の宝箱をだけが残る。宝箱を開ける瞬間はワクワクする。ダンジョン産のアイテムはどういった物か、楽しみだ。

 宝箱を開けると、白銀の腕輪に幾つかの宝石がちりばめ嵌め込まれていた。それを手に取ると


従魔(じゅうま)の腕輪》

 魔物に使用すると一定の確率で

 魔物を服従にする事が可能。 回数:3


 なかなか良い物が出た。しかし、確定じゃなく回数制限があるアイテムとなると使い所が難しいぞ。

 ゴルドも何かいいの出ただろうか? ゴルドを見ればなんとも言えない表情で宝箱の中身を見ていた。


「何出ました?」

「いえ、うーん。これは……」


 ゴルドの方に回り込み宝箱の中を覗くと、少し歪な棒が入っていた。


「ドラシルの枯れ根?」


 木の棒じゃなくて根っこだったのかこれ。確かに困惑する。


「素材ですかね?」

「でもこれ装備すると、攻撃力結構あるんですよ」


 アイテム詳細を見れば、前持っていた、片手剣よりも高い攻撃力ある。この根っこ刃物より強いとか流石ダンジョン産のアイテムです。


「これ私持ってても、使わないですね……」

「だったら、枯れ根につるはしの先端でも取り付けて、新しいつるはし作ればいいんですよ」

「……そうですね。長さもちょうどいいし、駄目もとでやってみます!」


 元気を取り戻したところで、最後の宝箱を開けるとしよう。ゴルド確認をとってから宝箱に手かけ、止め金を外す。

 勢いよく開いた宝箱の縁にはギザギザの鋭利な刃が生えていた。

 瞬間、左腕を肘まで食いちぎられる。


「グッァアアッ!!!」


 突然の痛みに眼孔が開く。左腕を見ればグロテスク表現をオフにしているため、とんでもない量の血が吹き出ている。

 ゴルドは手に持った枯れ根で、宝箱を殴り付け遠くに吹き飛ばした。


「大丈夫ですか!?」


 勢いよく減っていくHPに慌てて、回復の丸薬を噛み砕き、腹の魔法の鞄から回復薬を取り出して急いで傷口にかける。HP減少は緩やかになり、回徐々にHPが回復していく。デバフの【部位欠損:小】が浮かび上がりHP最大値も八割まで落ちている。


「ハァ、ハァ。どうにか……大丈夫かな」


 痛みも引き、まともに思考出来るまで落ち着いた。傷口断面はなかなかのグロさのためもう見ない。

 それよりもあの宝箱だ。

 ゴルドに吹き飛ばされてからぴくりとも動かない。無事な右手で棍棒を構え、様子を伺う。


 ガバッと宝箱が重力を無視しして起き上がる。すると


《テイムが成功しました》


 視界にログが流れるとPT欄にミミックと名前とHPが表示された。

 トコトコ宝箱を揺らしながら進んでくると目の前で蓋が開き、今さっき食われた左腕が粘液まみれで地面に放り出された。いや、出されても困る。


 よく見ると左手首に付けてた従魔の腕輪がない。

 まさか、腕ごと飲み込んだらテイム判定始まったのか。


「これ、テイムしたんですか?」

「宝箱からテイムアイテム出たんですが、こいつ飲み込んだみたいで……そしたら、なんか成功したみたいですね」


 猫でいったら足元にすりすりと体を擦り付けてくるみたいにミミックも宝箱の角を擦り付けてくるので地味に痛い。お前さっきまで、私の腕食いちぎってたんだぞ?


「とりあえず、鉱山まで下りましょうか。回復魔法使える人居たら腕付けてもらわないと……」


 下山の準備を整え、落ちてる左腕を拾い、布に包んだおく。坂を下り始めるとミミックの移動速度が遅い。


「坂転がった方が速いんじゃないか?」


 言葉を理解したのか、ミミックは止まり、蓋が開く、すると中から蜘蛛の脚の様に細長い多関節の脚が幾つも天に向かって突き立てられる。それが一斉に曲がり、地面に突き刺さり、宝箱を浮き上がった。

 

「わわわわわわわ……」


 ゴルドが震えておかしくなる。

 幾つもの脚が動きだし、かなりの速度を出してこちらに駆け寄ってくる。もうホラーです。


「ギャァァアアッッ!!!」


 耐えられなかったゴルドが、叫びながら坂をかけ下りる。私も逃げる。ミミックが追ってくる。カサカサなにか擦る音が聞こえるが、怖くて後を振り向けない。鉱山付近までノンストップでかけ下りた。


 流石にこの蜘蛛ミミックを鉱山に連れていったら大混乱に陥ると考え、背嚢にしまう。左手がないのでゴルドに手伝ってもらおうとしたが、断固拒否された。


 ミミックに大人しくしているように言い聞かせ、鉱山に脚を踏み入れる。

 鉱区長がゴルドを探しているのを伝え、一緒に鉱区長の天幕に向かう。中に入ればいつも通りの険しい顔をした鉱区長がいた。


「おう、来たか。ゴルドおめぇ、ここで掘るの禁止な」

「……へ?」

「お前の掘った坑道が魔窟(ダンジョン)と繋がって、坑道まるごと魔窟化したんだわ。まさか、硬い岩盤をあそこまで掘っていたとはなぁ……」


 鉱区長は呆れた様にため息を吐き、話を続ける。


「ワシにも責任があるし、坑道の件はどうにか処理しとくから、お前は少し休んでろ」


 ゴルドの顔から精気が消え失せている。話ちゃんと聞こえているのだろうか。脱け殻のゴルドを引きずりながら天幕を後にする。とりあえず、リステアへ帰ろう。




〈WORLD topic〉

 様々なデバフがあるが、中でも【部位欠損】はプレイヤーに甚大なダメージを与える。四肢の欠損ならば迅速な対象で死には至らないが、胴体などの欠損には高位の回復薬や回復呪文が必要となる。それでも助かる可能性は100%ではないので注意が必要だ。

 

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