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No.17 ゲーマーと鉱山(2)

 城郭都市リステアから西部にある第1監視塔。それよりさらに西に進み、山岳地帯手前の麓に“モーリス”という農村があった。過去、第1監視塔放棄時にモリースも同様に放棄され、モンスターのねぐらと化していた。


 第1監視塔制圧後は、小規模のレギオンが組まれ、モーリス奪還が試みられた。

 制圧は無事に成功を果たしたが、農村内の損傷は酷く、NPCが戻れる状況ではなかった。そのため、農村の復興を第一に自警団クランと商人連合クランが協力の元、急ピッチで農村再建が始まった。

 自警団による農村周囲の警護と輸送路の定期巡回が始まり、荷馬車による物資輸送はスムーズに行えた。

 木こり(ウッドワーカー)など労働職(ワーカー)たちも復興に加わり、農村の改築は想像よりも早く終えることができた。


 農村モーリスにNPCが戻り始めたのは、東部大規模遠征が行われた日である。NPCが戻った事で、簡易ではあるが鍛冶屋など少数施設が使えるようになった。

 今後の西部攻略の要にするため、プレイヤーたちによる農村の防衛強化は今もなお行われている。



 人の手が入った耕作地が見え始めた。NPCの姿も、ちらほら見え、農業に従事している。耕作地を囲む様に低い柵も設置されていた。

 耕作地を少し歩くと農村モーリスが見えてきた。補強された丸太の防壁下には針山の如く木杭が突き刺されている。外見を見ただけでは、農村とは到底思えない外見をしている。


 門は開け放たれ、人の往来を歓迎していた。門番にはNPCの衛兵が、立っており、バケツ頭の姿は見られない。西部に大部分出払っていると聞いていたが、村の中だろうか?

 門を潜り、農村を見て回ったが、プレイヤーの出店はちらほら見られたが、バケツ頭は村の中にも居なかった。

 居ないものはしょうがない。まずは、は依頼の鉱山に向かうとしよう。


 農村から、西に進む険しい山岳地帯が現れる。街道から少し小路に逸れ、起伏の激しい道を進むと岩肌が露出する斜面に出た。

 岩肌には無数の穴が空いており、入口などは、落盤を防ぐため支保工(しほこう)による丸太などで壁や天井を補強されている。

 周囲には天幕が多く張られており、プレイヤーの建てたテントも数多く見受けられる。煤汚れたプレイヤーやNPCが忙しく採掘をした岩や鉱石を搬出していた。農村よりも活気があり、出店も多く、繁盛しているように見える。

 商人職(トレーダー)鉱夫(マイナー)から鉱石を買い付けるために荷馬車もかなりの数が集まっていた。よく見るとバケツ頭も結構な数が此処に集まっている。

 

 祭りの様な賑わいの中を掻い潜り、荷物を届ける。

 個人依頼を請け負った時点で互いに個人を確認でき、メールでのやり取りも可能だ。

 メールでは、”鉱山に潜っているのでもし、自分が居なかったら鉱区長のNPCに名前を言えば、場所を教えてくれるはず”と教えてもらっていた。

 今はその鉱区長の居る、天幕に向かっている。


「失礼します」


 天幕に入ると、気難しそうに書類を眺めるドワーフが居た。書類から一瞬目線を外してこちらを一瞥すると短く言葉を発する。


「要件は?」

「ゴルドさんに荷物のお届けに来ました。居場所が分からない時は此処に来るようにと言われてます」


 ドワーフは書類を起き、こめかみを押さえ、ため息を吐いた。


「アイツか……岩壁の一番東側の穴に居るぞ。その坑道はアイツ一人しか使ってない。入ってすぐに縦坑だから間違えないはずだ」

「ありがとうございます」

「それと、姿をここ四日は見てない。縦坑の一番下の何処に居るだろ。頑張って探せ」


 絋区長のドワーフに礼を言って天幕を後にする。

 教えて貰った坑道は問題なく見つける事ができた。ランタンを取り出し、腰に取り付ける。坑道に入ると自動で淡い緑色の光が灯り、周囲を照らす。思ったよりも遠くまで見通せるのは緑光石だからだろうか。


 歩くとすぐに縦坑があった。覗き込むと底は見えない。鉱石運搬用の巻き上げ機があり、その横に人用の梯子が取り付けられている。


 梯子に手を掛け奥底に降りていくが、かなりの深さがある。壁からは水が染み出て底へと壁を伝って落ちていく。底までたどり着くと最下層には荒く木板が敷き詰められ、横坑が掘られていた。板の隙間から何かが見え、凝集してみるとスライムが蠢いていた。


「うひゃ……!」


 思わず声が出てしまった。

 〈魔工:ドレイン・スライム〉と表示された。

 どうやら落ちてくる水を吸収している様だ。

 

 横坑に入り進むとかなり入り組んでいる。方眼紙が欲しくなる入り組み様だ。


「ゴルドさーん!」


 叫ぶと声は反響して響く。だがこの入り組み方では奥まで声が届いたか怪しい。メールでは到着時刻は大まかに伝えてあるのでログインはしているはずだ。そもそも返事が遅い人なので、やり取りがぎこちなく難しい。


 奥に行くか悩んでいると、角からぬっと誰かが出てきた。全身煤だらけのドワーフだ。ボロボロのつるはしを抱えこちらを見ている。


「……トウヤさんですか?」


 ぼそりと呟かれる言葉は、この静かな地底でなければ聞き逃していたかもしれない。


「はい。ゴルドさんですか?」

「あぁ、良かった。つるはしがもう無くて、困ってたんです。つるはしを……つるはしを下さい」


 ゆらゆら近づいてくる。眼孔が開きっぱなしだ。……最近同じ目を何処かで見たぞ。ゴルドを落ち着かせてから背嚢を下ろし、つるはしの束を二つ渡した。


「これだけあれば、四日は持ちます。本当に助かりました」


 ボロボロのつるはしほ壁際に放り投げられ、新しいつるはしをインベントリにしまうゴルド。どことなく元気になっている。


「報酬ですが、奥の坑道に転がってるので、好きなの持って行ってくださいね。迷いやすいので付いて来て下さい」


 そう言うとゴルドは、ランタンも持たずに奥へと進んでいく。確か、ドワーフは種族特性で”暗視”持ちだったか。

 暗闇をテキパキも進んで行くので付いて行くのも大変だ。坑道を進むにつれ、岩や鉱石や壊れたつるはしなど、酷く散乱しているので余計に歩きにくい。

 少し広い空間、部屋の様な場所に出ると数多くの鉱石が仕訳もされずに乱雑に置かれていた。


「ここから好きなだけ持っていって下さいね」 

「好きなだけはありがたいですが……これ売りにいかないんですか? 地上に行けば商人職(トレーダー)も居ますし?」

「……???」


 あれ? 私なんかおかしい事言ってるだろうか。お前何言ってるんだみたいな顔されてるぞ。


「掘る時間なくなるじゃないですか?」

「えっ?」

「私は掘るって作業がしたいので他は別にどうでもいいんです」

「はぁ……」

「掘るって楽しいんですよ? 最初はなかなか砕けない岩壁を段々と早く掘れる様になると楽しいですし、つるはしの当て方一つで大きく砕く事もできるんです! 戦わなくてよ職業Lv上げも出来ますし、どんどん採掘速度が上がっていくと感無量ですよ!」


 作業を楽しむタイプの人ですね。気持ちは分からなくもないですよ、はい。


「え、あぁ、まぁそうですね。……楽しいのは良いことですよね。私も荷物運び楽しいですし、はい」

「そうなんですよ! 分かってくれますか!」


 ゴルドの煤だらけの顔は真っ黒なのに瞳は凄く煌めいている。本当に好き何だろう。何処かの収集家(コレクター)の様に狂気を帯びずに無垢であってほしい。


「この鉱石はどちらにしろ、お金変えた方がいいですよ。めんどくさいでしょうが、つるはしも大量に買えますし」

「じゃあトウヤさんお願いします。個人依頼出しますので、報酬は好きなだけ鉱石持っていって下さい」


 判断が早くてなげやりだ。依頼内容もメチャクチャなのがポップアップしてるぞ。本当に掘る事しか興味ないのか……少し心配になってきた。

 報酬内容も美味しい。これは人によったら、いいように使われてしまうぞ、ゴルドさん。もちろん私はそんなことしないよ。悪いことダメ絶対。


「それじゃ、ここにある分の鉱石をとりあえず地上に搬出しますね」

「お願いしますね。私はこの先で掘ってますので」


 先ほどからウズウズしていたようで、話終わると走って闇の中に消えていく、どんだけ掘りたいんだあの人。


 部屋に転がる鉱石をインベントリや背嚢にしまう。鉱石類は背嚢にしまうと汚れたや角で破けそうだ。地上でたしか鉄籠とか専用の売っていたし、買った方が良さそうだ。

 手押し荷車もあったので積めるだけ詰んで、縦坑の場所まで運んだ。縦坑に到着すると一度上まで上り、巻き上げ機を緩め、籠を最深分まで下ろす。


 これは確かに面倒くさい。いや、あそこまで溜め込むから面倒くさいのだ。

 籠に荷車を乗せ、巻き上げ機を動かすが、これもなかなかの重労働だSPがぐんぐん減っていく。


 地上に出れば陽光が普段より眩しく感じる。

 商人職(トレーダー)を見つけ全て売却した。これを四往復ほどしたのだから、どれだけ溜め込んでいたのかが分かる。最後の方なんて、荷馬車に全部積み込めるか心配になった。


 地下の坑道に戻ると部屋にまた鉱石の山が少し出来ている。ちょうど部屋に居たゴルドを捕まえ、売上げを渡した。


「じゃあこのお金でつるはし買ってきてもらえます?」


 また新しい個人依頼が飛んでくる。


「地上で買えますよね? 自分で買った方が安く済みますよ?」

「いえ…私つるはし買い占めて出禁くらってるので……」

「えぇ……」


 確かに地上でつるはしを売ってはいたが、お一人様二つまでと制限が掛かってたのが不思議だったが、原因はこの人だったのか。そしてあの個人依頼と、合点がいく。


「分かりました。リステアで買い付けたらここに運んで置いときますね」

「はい、よろしくお願いしますね!」


 さて、ならこの部屋をもう少し綺麗にしないとな。

 壁際な置かれた、鉱石でも何でもない岩石を処分しないとどうしようもない。これが一番数が多く、至る所の通路にも放置されていた。


 ゴルドがいつも捨ててるという、偶然空いた縦穴に岩石を運び捨てる。

 岩石を落とせば、かなり長い間の後に音がするので、かなりの深さがあるみたいだ。この深さなら全て処分できそうだ。


 ゴゴゴゴゴォッッッ!!!


 六度目の岩石捨ての時、穴に岩石を投げ込んだら地響きがなり、何か崩れた様な音が穴の奥底から聞こえた。立っていられないほどの揺れも【強脚】のおかげか耐えられたが、私の心はダメでした。こんな暗い閉鎖空間で落盤事故とか無理です、怖いんです。


 ゴルドの様子を見に行ったが全く気にしてもない様子で採掘を楽しんでいた。

 片付けも終わり、帰る事をゴルドに伝え地上に戻った。地上は先ほどの地響きで、荷物やらが倒れたりと悲惨な状況だ。事の発端が私にあると思うといたたまれなくなる。

 足早にその場を立ち去り、リステアと戻った。




〈WORLD topic〉

 絋区長などのNPCは坑道を管理運営している。

 落盤防止や、坑道内の点検など、採掘なあたっているプレイヤーも把握しており、採掘系の依頼発行などもしている。

 無計画に坑道を掘るプレイヤーも多いがNPCの作業員が色々と教えてくれるので比較的初心者でも問題なく採掘を行える体制を敷いている。

 言うことを聞かないプレイヤーには高硬度の岩盤の地帯を割り振り、好き勝手にやらせている。つるはしの消耗と硬く掘れないため、諦めるプレイヤーが多い。

 

 

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