ミルクボーイ
「うちのおかんがね、好きなラジオの怪談コーナーがあるらしいんやけど、その名前を忘れたらしいねん。
いろいろ聞くんやけどな、全然わからへんねん」
「そうなんや。ほんだら俺がね、おかんの好きな怪談コーナー一緒に考えてあげるから、どんな特徴言うてたかとか教えてみてよ」
「宵のうちの放送なんやけど深夜番組みたいなタイトルやって言うてた」
「“みぶ真也の深夜のみぶ”やないかい?
その特徴はもう完全に“深夜のみぶ”やがな。
すぐわかったよこんなもん」
「俺も“深夜のみぶ”やと思てんけどな、
おかんが言うには、放送時間になると銭湯の女湯が空っぽになるくらいの人気やっていうねんな」
「ほな、深夜のみぶと違うか!
女湯が空になるほど人気があるわけないもんね。
ほな、深夜のみぶちゃうがなそれ。
もうちょっと詳しく教えてくれる?」
「前編を聞いたら、どうしても後編を聞きたくなる言うてたわ」
「深夜のみぶやないかい!
あのコーナーの話は2週完結やからね。
俺はね、あれは次の週も番組を聞かせるための陰謀やと睨んでるのよ。
俺の目は騙されへんよ。俺の目騙したら大したもんや。
俺はなんでもオミトオシやねんから!
深夜のみぶやそんなもんは!」
「わかれへんねん、でも。
俺も深夜のみぶやと思てんけどな、
おかんが言うには、その怪談を聞いた後は、一人でトイレ行かれへんっていうてた」
「ほな、深夜のみぶちゃうやないかい!
深夜のみぶは夜子供がトイレの中でも安心して聞ける程度の怖さやねんで。
第一、9時20分に終わる番組聞いた後、朝までトイレ我慢できる人はあまりおらんやろ。
深夜のみぶちゃうがな。
もうちょっとなんか言ってなかった?」
「その怪談のナレーションやってる人が役者でホラー映画や朝ドラにも出てるらしいんや」
「みぶ真也の深夜のみぶやがな。
みぶ真也はホラー映画で死神役やったり、朝ドラで速水もこみちをぶん殴ったりしてたんや。
深夜のみぶやそんなもん」
「わかれんへんねん。
俺も深夜のみぶや思てんけどな、
おかんが言うには、梅田のクラブでもその話題で持ち切りやって言っててん」
「ほな深夜のみぶちゃうやないか!
そもそもクラブで遊んでる子が月曜の9時台にうちでラジオ聞いてるわけないんよ。
仮に聞いてても、クラブでそんな話題が出るはずないやん。
深夜のみぶと違うやん」
「タイトルの後、怖~って声が入るけど、あんまり怖くない話もあるらしい」
「深夜のみぶや。
深夜のみぶのコーナーは、怖い話だけやないんよ。
あれは、毎週毎週怖い話を思いつかん時、たまにお笑いやなんかに逃げてるんやと俺はにらんでるのよ。
俺はなんでもオミトオシやねんから!
深夜のみぶやそんなもんは!」
「おかんが言うには、ジャンルでいうならラブ・ロマンスやって言うねん」
「ほな深夜のみぶちゃうやないかい!
ジャンルはわからんけど、ラブ・ロマンスだけではない!
もうちょっとなんか言ってなかった?」
「おとんがいうには、ありがとう浜村淳ちゃうかって」
「いや、絶対ちゃうやろ!
もうええわ。どうもありがとうございました」