2日目
10月2日
午前10時。
聖国マーリンに3人の英雄が凱旋した。
「よくぞ魔王を討ち滅ぼしてくれた。勇者ケイン・アルドよ」
金髪の肥満な男が、高そうな玉座に座り、勇者パーティーの3人を見下ろしている。
国王ギタネ・ミヌクーイだ。近くには、騎士達が守りを固めている。
「ありがたきお言葉。壮絶な闘いでした。聖騎士隊は全滅、賢者アリス・シューラスも死亡してしまいました。」
ケインは膝をつきながら話す。
「尊い犠牲は仕方がない。世界の平和と比べれば本望だろう。賢者アリス・シューラスか。あんな美人を亡くすのはもったいないな。ぜひ一晩相手してもらいたかった。」
ギタネは下品な笑みを浮かべている。
「ありがたきお言葉です。アリスも喜んでいることでしょう。」
ケインは答える。
『何こいつら気持ち悪!』
聖女マリア・シャロンは、顔を歪める。
聖騎士ゴルド・ジンギスは、騎士を無くしたのを悔やんでいる。聖騎士の隊長達は、ゴルドの部下のため、主力の部下達が全てやられてしまったのだ。
「時に聖女マリア・シャロンよ。今晩時間はあるかね?」
ギタネがマリアをにやにやと見つめる。
「国王様。私には、弱き者達を救う使命がありますので。すぐに旅に出ます。」
マリアは笑みを浮かべ答える。
『気持ちわりぃ顔で見てんじゃねぇよ!豚が!殺すぞ!』
「うむ。それでは世界の危機には、助けてくれたまえ。大義であった。」
国王は、勇者達に言う。
勇者達は、立ち上がり部屋から退室する。
王城を出て、街中を歩く。
街を歩けば、人が集まり勇者様!聖女様!騎士様!と讃えられ、店に入ればお土産を渡される有名人だ。
「さすが俺様だな!有名人はつらいぜ!」
さらさらの金髪をなびかせ、ケインは嬉しいそうに話す。
「ハイハイ。良かったわね。」
マリアは、興味無さそうに歩く。
「世界は平和になったが儂は、こんな事がしたいんじゃない!」
白い鎧を身に纏う渋い男、ゴルドは仲間の亡骸も拾えなかった事を嘆く。
「ゴルド!しょうがない、しょうがない。魔王が強かったんだから」
「お前が魔王の攻撃に騎士達を盾にしなければ!俺が盾にさえなってれば!雑魚だけ任せていれば。」
魔王の攻撃に騎士隊は一撃で殺されてしまったのだ。勇者パーティーだけが、魔王の攻撃に耐えることができたのだ。
「はあ!俺が悪いってか!軟弱な騎士達が自ら守ってくれたんだろ?盾にもならなかったけどな。ぷぷっ。」
ケインは笑いをこらえている。
「お前勇者とか言ってたいして強くない癖に調子に乗るなよ?たまたま光魔法が得意だからって、剣の勝負じゃ騎士隊長の誰にも勝てなかった雑魚の癖に。」
ゴルドがにらみながら言う。
ケインは魔物限定で強いのだ。ゴルドと勝負したら、一度足りとて勝つ事はできない。
「悪かったよ。仕事だから受けたが、もう用はないから解散だな。」
勇者パーティーは、国王からの推薦で組んだだけで、出会って数ヶ月しかたっていない。
「お金も受け取ったから、私はいくわ。」
マリアは、勝手に歩いていく。
「お前が勇者なんて認めないからな!せいぜい死なないことだな!」
ゴルドは城に戻っていく。城に残った騎士達を鍛えにいくのだ。
「全くろくでもないパーティーだったぜ。金は一生遊んで暮らせるだけあるからな〜。どーこーにーいーこーかーなっ!」
ケインは薄着した女性達が沢山いる店に入る。
「綺麗な女の子全員集めてくれ!」
真っ昼間からお楽しみだ。
時刻午後3時。
聖国マーリンの門番からゴルドへ知らせが入った。
騎士の稽古場に死んだはずの、隊長達が凱旋したのだ。
「お前達!生きていたのか!」
ゴルドは涙を流し全員に抱きついた。
ゴルドが光魔法で身体を確認したが、アンデットの気配も無く、以前よりも身体が強化されているのが確認された。
鎧はぼろぼろで武器も折れている。
「私もあの時に死んだと思いましたが、勇者様達が魔王を討伐した後に生き返っていました。」
隊長の一人が答える。もちろん全員アンデットでネクロンの配下だが、見破れる程の魔法使いは、賢者アリスか聖女マリアしかいない。ケインも攻撃魔法なら通用するだろうが見ただけではわからないだろう。
「瓦礫の中で生き返り、全員で何とか帰還できました。部下達は、残念ながら。」
別の隊長が涙ながらに話す。もちろんアンデットだが。
「そうか。ひとまず休め!話しは明日詳しく聞く!」
ゴルドは隊長達を騎士宿舎へ連れていき休ませる。
隊長達は、城に残した自分の部下達に顔を見せてから休んだ。アンデットだから休む必要ないが。
「良かった。隊長達は、生きてた。ごめんな。シンバ、グンダ、スローガ……」
ギランは涙を流し、助からなかった仲間達の名前を呼んでいく。
時刻午後9時。
「こんな感じですね。ふぇふぇふぇ。」
ネクロンが壁に隊長達が見ている景色を壁に写し、4人で1日みていた。隊長達の右目を改造して、映像として写すことが出来るらしい。
「くっくっくっ。聖騎士ギランならいつでも殺せるな。」
アヌビスが笑いながら言う。
ギランはレベル80を越える強者だが、隊長達も一人一人が、ギランと対等以上の力を保有しているのだ。
うん。朝起きてから呼ばれて見ていたけど、良いのこれで?
仲間達に殺される結末って最悪だと思うけど。
ネクロンさんマジハンパねぇ。自由行動で聖騎士殺せるってヤバすぎ〜。まだ2日目だよ?
「勇者と聖女の行方を調べてからでも良さそうだな。」
ネクロンに聞いてみる。
「大魔王様、大丈夫です。殺した後にギランもアンデットで仲間にしますので。ふぇふぇふぇ。またコレクションが増える。ふぇふぇふぇふぇふぇふぇ。」
ヤベェ。めっちゃ笑ってるよ。ネクロン一人で充分じゃん!
ほら!魔王アヌビスも「俺の時も同じ位の力出せ」見たいに睨んでんじゃん!まっ、そこは大魔王キヨシのおかげだけどね!
言ってて、悲しくなってきた。
「さすがネクロンだな。」
俺は威厳たっぷりに言う。キャラじゃないから、もう普通に話そうかな。
「いえいえ、大魔王キヨシ様のおかげです。以前ならアンデットが直ぐに見破れてましたから。アンデットの質が良くなってます。」
アンデットの質?
腐った死体ではなく、綺麗な死体か。たしかに腐敗もしてないな。怪我もないし、血も流れていない。状態は、良さそうだ。
「それでは明日は、勇者の場所でも探して見ます。」
ネクロンは嬉しそうに話している。
うん。頑張って。
今日はもう終わりかな。レベル上げも出来たし。残った騎士達に食料や調味料も買ってもらったし。
出番もないし。
【転生した死霊使いは、聖国を滅ぼす】でよくね?
大魔王キヨシ・ヨシオカよりも、大魔王ネクロン・ユリーガの方が格好よくね?
まぁまぁ、まだ2日目だから、きっと勇者が明日凄いことしてくれるさ。大丈夫だよね!俺の見せ場作ってよ!
キヨシは一人自室で眠りについた。