〜1〜
私、セレーナ・フォンタス・グリファリドには秘密がある。
なんと、私は、前世の記憶を持っている。
とはいっても、前世の記憶はあやふやだし前世で関わった人ももちろん覚えていない。
ある一人を除いては。
「お嬢様ぁーー、起きてくださいぃ、お客様がいらっしゃいましたよぉ?」
朝、私の侍女のレイリーの声で目を覚ます。そろそろ、私の部屋の扉が開けられてレイリーが飛び込んでくるはず。
「お嬢様!! 起きてください! もうっ、お客様がいらしているのに。起きてくださいお嬢様!」
今、私の婚約者の声が聞こえたような…聞こえなかったような…。
私は布団の中にもぐりまだ寝ますのアピールをレイリーにする。レイリーも負けじと私から布団を引っぺがそうと悪戦苦闘している。遠くでレイリーの声がする。ん?リタルクレイだって…?そうか、リタルクレイか…
「私の美しいセレーナは、未来の夫である僕よりもベットを取るのかい?悲しいなぁ。」
私は眠りから瞬時に覚醒し、猛スピードでベットから跳ね起きた。この時のスピードは過去最高記録をやすやすとマークするタイムだったという自信がある。
「ご機嫌麗しゅう、リヒト。なぜこんな朝早くにいらっしゃったのかわけを聞いても?」
訳すると、朝っぱらから何の用だよ、こっちは忙しいんだよ。となる。
「はははっ、愛しい婚約者の顔を見に来ることに理由はいらないだろう?。とはいっても、もう11時なんだけどね、セレーナ。」
あ、11時…。そうでしたか。それはそうと、朝からキラキラした笑顔を振りまかないでくれ。こっちは死にそうになる。
だって、何を隠そう、私はこの人のことがずっと好きなのだ。