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異世界でチート狩り始めます  作者: 灰色猫
第1章 襲撃の勇者編
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プロローグ

「ソイツの使う魔法はフレアだけ。使用前に尻尾を振る予備動作が入るからよく見てくれ。あとそこ、毒付きの罠が仕掛けられてるから注意しろ」


 そんな指示がパーティに飛ぶ。

 群れをなす小人のような獣人──ポックルが手に持った杖を振ると、炎が射出される。

 それを躱す三人の男女。

 事前に忠告があった通り、尻尾の動きを見て軌道を読んだのだ。

 そのまま腰の剣を抜き、反撃。連携の取れた攻撃がポックル達を凪いでいく。断末魔と共に次々と倒れていく獣人達。


 見た目は小動物のようだが、実際は農作物を盗み、金品を奪い、時には人を襲う危ない存在だ。厄介極まりない奴ら、という事である。

 その討伐依頼が出るのは当然の事だろう。


「だいたい倒したはずだけど……カナメ、他に罠は仕掛けられてないか?」


 そんな確認が、一人の男から支持を出していた少年に飛ぶ。

 少年は周囲を見渡すと、コクリと頷く。


「ああ、トラップとかはない。危険度は一旦ゼロだ」


 その言葉を受けて、男は心から安堵したように息を吐く。

 アイコンタクトが回され、全員の気が緩む。


「アンタがそう言うんならそうなんでしょうね。ま、私達もこれで安心だからいいわ」


「厳しく当たるなよ。カナメの観察スキルの精度は知ってるだろ? アイツが危険は無いって言うならないよ」


「…………ま、そうね。観察スキル、あと分析しか取り柄ないものね」


「……………………悪かったな」


 カナメ、と呼ばれた少年は複雑そうな表情で応える。

 事実、彼の助言で助かっているところはあるので他のメンバーも強くは言えないのであった。

 そう、例えカナメが戦闘に────命を懸けたやり取りに一切参加していなくとも。


「それに、弓で牽制とかはしてくれてるしな。そんな事でも敵の意識が逸れるなら願ったりだ」


「…………全く、リーダーはカナメに甘いのよ」


 四人のパーティのうち半分はカナメを敵視していた。

 その理由は後方から偉そうに指示を出しているだけだからか、それとも──。


「ポックルの目的討伐数まではあと少しだ。ちょっと休憩したら奥に行こう」


「オッケー」


「ああ、分かった」


 大樹の麓で一行は腰を落ち着かせる。

 それぞれ水分や携帯食料を口にし、休息に努める。命の危険がある以上、集中力の低下は恐れなければならない。

 例えそれが前衛であっても、後衛であっても。敵が強くとも弱くとも。

 けれど、軽く交わされる雑談にカナメは混ざらない。一人だけ少し離れた所に座り、その様子を伺うのみだ。

 けれどそれは、彼にとって自然な事……慣れたことだった。


 笑い声や笑顔。冗談に軽口。親しい間柄だからこそできるノリ。

 そういったものから一歩離れた所で観察するだけ。

 膝を抱え、死んだような目でそれを眺める。そこに感情は無い。

 羨ましいでも、混ざりたいでもない。ただ無感情にそういうものとして処理する。

 フッと自嘲的な笑みさえ浮かんでしまう。



 何もかも、あの日が悪い。そんな文句を脳内で思う。



 結局は同じだ。

 現実にいようが異世界に来ようが、カナメの立ち位置に変化は生まれなかった。それだけの話だ。

 異世界。

 異なる世界。

 そう、あの日。この世界に送り込まれた運命の日。全てが反転した一瞬。あのめちゃくちゃな異世界召喚は今でも思い出せる。

 あれは、そう三ヶ月ほど前の事。

 本来輝かしいはずの異世界召喚。それがどうしてここまで落ちぶれたのか。

 今思えばそれはカナメにとっての転換点。そして、当時の彼にとっては、夢の続きだ────。

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