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続編のない短編達。

英雄騎士と奴隷エルフ

作者: 池中織奈

 エーデルラウト・アダー。

 その名は、とある王国で戦争において最も活躍した騎士である。平民の出でありながらも、戦時の活躍により、彼は爵位を賜った。

 英雄として名を馳せるだけの強さを彼は持ち合わせている。その髪色は漆黒。この国の貴族ではまず見る事は出来ない夜の色。瞳の色も同じだ。背は高く、程よく筋肉のついた体は逞しい。

 平民から貴族となった英雄の妻の座を射止めようと画策する者は多くいた。しかし、エーデルラウトはその誰もを寄せ付けなかった。


 ――その、エーデルラウトが奴隷を買った。



 

 さて、エーデルラウトに買われた奴隷はエルフである。黄金に煌めく髪に、新緑の瞳を持つ。耳は尖っており、その胸はそこそこの大きさしかない。奴隷として十数年ほど過ごしているそのエルフの名は、ロイーゼ。その美しい見た目から性奴隷として、主人の元を渡ってきた奴隷である。当然、非処女。

 性奴隷として過ごしてきたロイーゼだが、特に悲観などはしていない。というのも、珍しいエルフの奴隷としてそれなりの対応をされてきた。性奴隷としての立場を反抗さえしなければ、特に問題もなかったので割り切って奴隷をやっている。

 さて、今回もロイーゼは性奴隷として買われたつもりであった。もちろん、エーデルラウトの屋敷に仕える面々もそのつもりだろうと思っていたため、買われたその日にロイーゼは半透明のワンピースを身にまとって、エーデルラウトの寝室へと向かった。

 向かったのだが――、

「な、なんて恰好をしているんだ」

 と、布団の上で挙動不審になられ、ロイーゼは心の底から驚いた。

 そういうつもりで買ったのではないだろうか? などと思ってならないロイーゼである。

「では、どのようなおつもりで私を買ったのですか?」

「……ど、どのようなって」

 エーデルラウトの顔がみるみるりんごのように赤くなっていった。

 一騎当千。死神。魔王。などと、様々な恐ろしいあだ名をつけられている男が、顔を真っ赤にして布団をかぶり、明らかにそういう事を目的とした衣服を着ているロイーゼの事を見ている。

「き、君を見て、買わなければと思っただけだっ」

 そんな風に叫んでいるエーデルラウト。その姿はとてもじゃないけれど、英雄騎士などには見えない。英雄騎士に憧れている者が見たら幻滅しそうなほどだった。

 しかし、ロイーゼは幻滅していなかった。寧ろ、何これ、可愛いとなぜか胸をときめかせていた。

 エーデルラウトの反応を見るに、女性経験が皆無らしいことは一目瞭然であった。ロイーゼは今まで性奴隷を、本来の目的で利用していくような男ばかりを主人に持っていた。そのため、買われたその日に性奴隷としてのあたり前の扱いをされていたものである。

 それが何だろうか、英雄騎士と云われる存在が顔を赤くしてこちらを必死に見ないように視線をそらしている。必死である。

 ロイーゼはエーデルラウトの普段の様子を知っているわけではないが、ロイーゼを見て「……その奴隷を買おう」などとクールに言い放っていたエーデルラウトがこんな風になっているのを見ると可愛いとしか思えなかった。それは正しくギャップ萌えというものであった。

「と、とにかく、部屋に戻るんだ」

「えっと、エーデルラウト様は私の事を嫌いではないですよね? 私もエーデルらラウト様の事がかわい……いえ、好ましいので、このまま――」

 布団で顔を覆ってこちらを見ないようにしているエーデルラウトに、じりじりと獲物を見るような目で近づいていく。これではどちらが主人で、奴隷か分からない。

 ロイーゼは、エーデルラウトのこの様を見てこのまま襲っちゃってもいいのではないか、既成事実を作ってしまって可愛がりたいといった思考に陥っていた。やる気満々である。

 このまま、襲ってしまおうとじりじりと近づいたロイーゼだったが、

「ま、待て! そ、そういう事は順番を守らないと駄目だろう!!」

 と言い放ったエーデルラウトによって、部屋から追い出されてしまうのだった。

 追い出されたロイーゼは、「ふふふ、可愛い」とにこにこしながら、使用人の部屋へと向かうのだった。


 さて、部屋の中に残された英雄騎士はというと、

「やばいやばい」

 ベッドの上で布団にくるまって、膝を抱えていた。その顔は赤い。

 この英雄騎士、たまたま見かけた奴隷エルフのロイーゼに無自覚に一目惚れをして、即買いしたもののその先の事など一切考えていなかったのであった。


 そんなわけで、英雄騎士と奴隷エルフの関係がどうなるかは、まだ誰にも分からない。


勢いで、こういう話あったらいいなぁと書いてしまったものです。

無自覚一目惚れの初心な英雄騎士×経験豊富な性奴隷エルフ。


エーデルラウト・アガー

戦争で活躍した英雄騎士。普段はキリッとしていて、冷静沈着。一騎当千とか、死神とか、魔王とか色々言われている人。

黒髪黒目。背が高くてガタイは良い。

異性に対して興味がなかったが、ロイーゼに無自覚に一目惚れして即買い。ただし自覚がないので、買うだけ買ってその後は何も考えていなかった。女性経験とか恋愛経験はあんまりない。


ロイーゼ

十数年性奴隷をやっているけど前向きな子。金髪、緑の瞳。エルフ。

エーデルラウトが挙動不審だったり顔を赤くしたりしていて、可愛い! ギャップ萌えとなっているお姉さん。エルフなので年はエーデルラウトより上。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ほどよいさじ加減のエロスがいいです。 これ以上過激にやるとミッドナイトノベルになりますしね(それはそれで) 仮に続編やるなら、お風呂回とか見たいです。
[良い点] 初心な英雄騎士×経験豊富な性奴隷エルフ なんともドキドキする組合せが良いですね。 普段はエルフに翻弄されっぱなしな騎士さまと、時折無自覚に魅了してくる騎士さまの反撃と、など色んな妄想が出…
[良い点] 新着の短編小説欄で見かけて読ませて頂きました。 童貞の英雄騎士。(笑) 敵には滅法強いエーデルラウトでしたが、閨では最弱でしたね。 ロイーゼの頭には、彼の調教計画が浮かんでいることでしょう…
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