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KreuZ~魔術学園の優等生たち~  作者: タゲウオ
第一章:学園の青春編
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第五話 雷鳴のような遭遇

前半イヴ視点、後半リヒト視点です。


第五話 雷鳴のような遭遇



--今でも思い出す。私が目を覚ましてまず、コトバを教わった。そして、私が生まれた意味を教えられた。


--お前は人を殺すために創られた人形なのだと



目覚ましが鳴る。嫌な夢を見た。目をこすりながら支度をする。この学園の制服も着慣れて来た。動きやすく、武器や魔道具を収納する機能もある。いつもは簡単な武器だけ持って出て行くけれども、今日は違う。机の上に並べたものは、ルーンを刻んだ魔術銃三丁、短剣、治療用の霊薬、その他弾薬等。それらを制服に収納する。こうして武器を詰め込んでみると、この制服が戦闘のために作られたものなのだと実感させられる。そしてその戦闘とは、『解放派』との戦いを想定しているのだろう。


あの後ジナン先生から話を聞いた。S04地区は先日に解放派との大規模な戦闘があった場所だ。そして、どうやら廃墟になった戦場跡が犯罪組織の基地にされているらしい。先生は解放派と戦う、なんて大げさな表現をしたが、実際は犯罪者を取り締まるだけの治安維持だ。解放派と戦うわけじゃない。しかも実際に最前線で戦うのは国の派遣した部隊だ。私たちはその補給が任務だ。詳しい説明を聞いた生徒は皆肩透かしを食らったように楽観的になった。


ただし油断は禁物だ。そもそもこの国の九割は秩序派だ。秩序派の政権に反対する一割足らずが解放派と呼ばれる。そんな彼らが正々堂々と拠点を構えるはずはなく、解放派の攻撃は殆どがゲリラ戦だ。確かにS04地区は安全地帯ではない。ただし、何もなくなった廃墟を狙うとは考えづらい。これはこの学園の生徒なら誰もが考えることだ。だから楽観的でいられる。でも、どうしてだろう?昨日からずっと、胸騒ぎがする。





「おはよう!イヴ」

「おはよう、イヴ」

「おはよう、リヒト、マコト」


朝食をとるために食堂に来た。マコトとリヒトの二人は先に来ていたようだ。


「イヴも準備はバッチリかな?」


そういうリヒトの制服は少し膨らんでいた。中に錬金術の道具が詰まっているのだろう。腰には銃と剣を提げている。マコトも腰に剣を2本提げている。他の場所にも短剣を収納しているようだ。


「おはよう、三人とも」

「おはよう、フルーリナ」


フルーリナも食堂に来た。彼女の制服も少し膨らんでいる。


「イヴは銃で、マコトは長剣と短剣だね。フルーリナの武器は?」

「これと、あとは錬金術の道具がいくつかよ。基本的には魔術に頼る戦闘スタイルになるわね」

フルーリナは腰に長剣提げた長剣をポンと叩く。

「そういえば、昨日部隊も発表されたね。ボクとフルーリナが第二部隊、マコトとイヴが第一部隊だ」

「よろしくね、マコト」

「ああ」


マコトはいつものように無愛想に返事を返す。マコトが同じ部隊なのは心強い。






輸送車に揺られS04地区へと向かう。


「ヴァイスですよろしく!」

「スミスだ。よろしく」

「……マコトだ、よろしく」

「……イヴ・ヴァイネント。イヴでいい。よろしく」


第一部隊としてまともに話をするのはこれが初めてだ。とりあえず簡単な自己紹介をお互いにする。彼ら二人は同じクラスメイトだけれど、まともに話した事はない。同じ部隊としてコミュニケーションが必要だろうか……


「でさ〜この前……」

「えっ、マジで?!……」


話しかけようとしたが、二人は元々仲の良い知り合いのようで、すぐに世間話を始めてしまった。


「……お気楽な奴だな。これから戦場に向かうっていうのに」


マコトはそんな二人を軽蔑するかのように見ていた。


「話を聞く限り安全なところらしいから、仕方ないよ」

「まぁ、俺もジナン先生の話を聞いてちょっと拍子抜けしたよ。どうしてあんな大げさに言うかな」

「でも、解放派と遭遇する事も考えられるから、用心は必要だよ」

「……そうだな」


マコトは何かを考え事があるかのように、頷いた。




「なぁ……イヴ」

「どうしたの??」

「もしさ、解放派の奴と遭遇したとして、そいつがリヒトみたいに優しい奴だったらどうする?」


「私は撃つよ」


答えなんて一つしかない。リヒトみたいに優しい人でも、その人が解放派なら自分を殺しに来るはずだ。もしくは騙し討ちを狙っているのかもしれない。殺さなければ殺される。そんなのは子供でも知っている事だ。


「……そうか」


マコトはどこか不服そうに見えた。どうしてこんな事を今更聞くのだろう。






目的地に到着した。ジナン先生が作戦の説明をするようだ。印の付いた地図を広げる。


「それで、ここが基地本部だ。ここから、第一部隊はここの印がついた第一基地に、第二第三

部隊も同様に第二第三基地にそれぞれ物資を運んでくれ。以上だ」


ジナン先生は説明を終えると、運ぶべき物資を指差した。


「……さて、運びますか」


荷車に物資を積んで運ぶ。


「荷車って、輸送車使えばいいだろうに」


マコトは不機嫌そうに文句を言った。


「ほら、距離も近いし基地もバラバラだからね。それに、私達の訓練も兼ねてるわけだから」


……私も正直そう思うけれど、士気を下げるのも良くない。





「第一基地は……あっ、あそこだ!」


しばらく歩き、ついに基地……というよりはキャンプを発見した。あそこに荷物を届ければ任務完了だ。


「……待って」


何か妙だ。人の気配がない。


「ねぇ、イヴさん?どうしたの?」

「ここで待ってて」

「……俺も行く」


マコトと二人でキャンプの様子見に行く。


「……これ」


キャンプに近づくにつれて、匂いが強くなる。


「あぁ血の匂いだな」

「マコトは見ない方がいい」


私は入り口を開く。


「……!!」


飛び込んで来たのは、キャンプの中一面に広がった赤色。まさに血の海だった。


「危ない!!イヴ」

「……え?」


マコトに抱きかかえられ、地面へと伏せる。頭の上を何か鋭い物が空を切って過ぎ去っていった。


「あ〜あ、何すんだボウズ。外しちまったじゃねぇか」

「Quickset, Kano, Thurisaz, Fehu!」


どこからか届く声を聞いたマコトは素早く詠唱する。建物の陰で小さな爆発が起きる。そのまま間髪入れずに長剣を抜いて踏み込む。


「おわっ?!……っと」


相手は油断していたようだが、それでもマコトの攻撃を全て防ぎ切っている。


「ハッ!アタシに剣で挑むとはね!」


相手も剣術には自信があるようだ。事実マコトが押され始めている。


「……?!」


マコトの手から長剣が吹き飛ばされる。


「ハッ!バカだね!」


相手はここぞとばかりにマコトに剣をふりかざす。


「バカはお前だ。Set, Uruz!」


マコトは素早く相手の懐に入り、腰の短剣で肩を引き裂いた。


「……なに?!」

「……チッ」


マコトはそのまま後退し距離を取る。


「Set, Kano!」


私もすかさず銃で相手の心臓を撃つ。


「やったの……?!」

「いや、まだだイヴ」

「いてててて……」


相手は痛みを感じるそぶりを見せつつも、すぐに立ち上がる。


「あれが見えるか?イヴ」

「あれは……」


青い髪。そして恐らくは女性だろう。前髪は右目が隠れるほど片方だけ長い。そして、切り裂かれた肩から見える機械仕掛けの体。


「こいつは恐らく自動人形オートマタだ。しかも九十九家のな」

「九十九家の……自動人形オートマタ

『九十九家』、解放派御三家の一つにして錬金術のエキスパート。その自動人形は一体で一国の軍隊に相当するとか。当然学園の生徒が手に負えるレベルの相手ではない。

「そういえばあの二人は?」

「あの二人?逃げちまったよ。全くホントにタマ付いてんのかねぇ。まあ、狩りがいのある奴がここに二人もいるみたいだからちょうどいいか」

あれだけの攻撃をしてもなお余裕を見せている。そしてもう、逃げられない。

「おい!人形!何が目的だ!」

「何が目的って、お前ら秩序派を殺すことしか考えてないさ。それに人形……って酷いじゃないか。人形じゃあどっちの事か分からないだろ?なぁ?秩序派のお人形さん」


彼女は私を見る。何故、それを知っている?!


私は銃を構えて威嚇する。


「……どこまで知っている」

「さぁ?実は下着の色までバレてるかもしれないぜ?」

「ふざけるな!!」

「待て!挑発に乗るな!」


私は怒りに任せて引き金を引いた。







一方、僕たちも荷車を引きながら基地を目指していた。僕たちの部隊は男が3人、女が2人の計5人の部隊だった。


「フル嬢〜もう交代の時間なんだけど、いつになったら代わってくれるの?」

「あらリヒト。レディに重い荷物を持たせるなんて紳士じゃないのね」

「今は男だからとか女だからとか言うのは時代遅れだよフル嬢」

「そうね。でもレディファーストが大事なのは今も変わらないでしょう?」

「それはそうだけど、それとこれとは話が別だなぁ」

とか言ってフル嬢は荷車を引くのを代わってくれない。一応出発の時に順番を決めたはずなんだけどな。

「というか、もうすぐそこなんだからもう少しだけ頑張りなさいよ」

「そのもう少しをさっきから頑張ってるんだけどなぁ……」


流石にフル嬢の分まで荷車を引いていると汗をかいてくる。もう服は汗でびっちょりだ。


「あ〜フル嬢が手伝ってくれないからもう汗だくだよ〜」

「うるさいわねぇ。私だって汗かいてるわよ」


確かにフル嬢も汗を沢山かいている。


「てかここ暑くない?こんなに暑かったっけ?」

「そうね、確かに燃えるように暑いわ。何か燃えてるんじゃないかしら」

「ハハハ、フル嬢も冗談とか言うんだね」

「あのね、リヒトは私をなんだと思っているの」

「あ〜、もうフル嬢がそんなこと言うから基地も燃えてるように見えるよ」

「もう、私まで燃えてるように見えてくるわ」

「あれ僕たちが目指す基地だよね?」

「えぇ、地図だとちょうどあそこね」

「あはは、燃えてるよ」

「うふふ、燃えてるわね」



「……って」



「「燃えてるーーー!!!」」




「えっ……なんで燃えてるの?」

「さぁ?」

「というかこの荷物どうすればいいの?」

「知らないわよ。というか、基地が燃えてるってことは、ここも危険よ」

「そうだね。みんな!気をつけて!索敵の魔術が使える人は使って!」


他のメンバーに呼びかける。とりあえずジナン先生に連絡を入れよう。通信機器に手を伸ばしたその瞬間だった。


「リヒト!伏せて!」

「え?」


突然炎が僕たちを襲った。





「……大丈夫?」


フルーリナが即座に結界を張ってくれたおかげで僕は助かったようだ。


「うわああぁぁ!!」


炎をかわすことの出来なかった男子生徒が、黒い炎に覆われていた。


「えっと、水!水をかけて!」

「水の精霊よ……」


女子生徒が精霊術で大量の水を召喚し、かける。


「ウソ?!消えない?!」


しかし黒い炎が消えることはない。


「あの炎……もしかして……?!」


何かに思い当たったフルーリナが試験管を取り出し、燃えている生徒にかける。あれは……聖水だろうか?


「消えたわね……ということは今の炎はただの炎じゃない。呪いの炎ね」


呪いの炎……聞いたことがある。呪いを解かない限り決して消えない炎があると。それが使えるという事は、かなりの腕の呪術師だ。


「そうだっ!先生に連絡しないと……」


通信機器を操作するが、なかなか繋がらない。


「もしかして、電波が妨害されてる?!」


急いで数秘術で解析する。


「これは……結界だ。しかもこんな複雑な結界なんて初めて見るよ」

「見たこともない結界に見たこともない呪術ねぇ……」

「フル嬢。僕、相手が誰だか分かっちゃったんだけど」

「ええ、考えうる限り最悪の相手ね。それにしても姿が見えないのだけれど、これも魔術かしら」

「そうかもね……」


チラリと他のメンバーを伺う。僕の部隊はフルーリナと僕を除いてあと三人いる。一人は黒い炎で負傷。戦えるのはあと男子一人と女子一人だ。ただし、敵の位置が分からない以上、戦いようがない。



「全く、こんな荒野のどこに隠れてるの……」


フルーリナの言う通りだ。周りは見渡す限りの荒野。キャンプはまだ遠い場所にある。隠れる場所などない。隠れるとしたら……そうか。


「君は負傷した彼の手当てをしてくれ!」

「う、うん!」

「そして君!荷物の中から武器や薬がないか探してみてくれ!」

「分かった!」


二人はそれぞれ僕が与えた仕事に取り掛かる。


「フル嬢……耳貸して」

「……え?本気?」

「僕を信じてよ」

「まぁ、乗ってあげるわ」


荷車を探していた生徒が戻ってきた。


「ごめん、何も見つからなかった!」


「そっか、なら死んで!」


僕たちは剣を抜いて躊躇いもなくその生徒に刺した。


「ええっ?!」


しかし剣は刺さることなるすり抜けていき、その生徒の姿は煙のように消え去った。


「貴方たちのご学友ですよね?!普通はちょっとためらいますよね?!」


振り返ると、術者がいた。茶髪にリボンで結んだポニーテール。見た目は僕らと同じくらいの年齢か?


「ようやく見つけたわね……」

「生憎彼はクラスで四番目の精霊術の使い手でね。クラスで七番目の精霊術の使い手である彼女に精霊術を任せるはずがないんだ」


そう、僕の推理は正しかった。恐らく黒い炎で皆が目を離した隙に、幻術を用いて入れ替わったのだ。本当の彼はきっと荷車の中に押し込まれているのだろう。


「えっ、何ですかその微妙なランキングは……」

「リヒトって気持ち悪いぐらいクラスメイトのことは把握してるわよね」

「フル嬢、それは褒めてるのかな?貶してるのかな?」

「褒め言葉だといいわね」


それにしても、茶髪の真っ赤なリボンで括ったポニーテール。見た目も若い。しかもちょっと可愛い。そして何より……


「フル嬢!あれって巫女服ってやつじゃない?初めて見たよ!」

「そうね。くだらない話は置いておいて、結界に呪術……貴方、『黒崎家』の陰陽師ね」


黒崎家、解放派御三家の一つにして陰陽道のエキスパート。その実態は謎に包まれているが、多くの事件が黒崎家によるものだと推測されている。当然、学園の生徒にとっては危険過ぎる相手だ。


「流石、よく勉強されていますね」


彼女は戦いの場に似つかない朗らかな笑みを浮かべながら、呪術用の札を取り出す。


「では、貴方様には死んでいただきましょう」


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