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  作者: しんぎつ なない
学園編
3/22

第2話 いろんな人生

 。。。



 俺は闇に生きる暗殺者、トム・アーキングだ。

 この暗殺者という仕事を始めてから早30年という月日が経った。業界で俺の名をしらねぇやつは絶対にいねぇと断言できる。

 有名になったからといって誇れることではない。

 人間としてやっちゃぁいけねぇ事は何個もやってきた。

 最近感傷的になっちまっていけねぇな。そろそろ潮時なのかもしれねぇ。

 今になってよく聞かれることがある。

 暗殺ってのは楽しい仕事なのかってよ。

 楽しいわけあるかってんだ。仕方なくこの道に入ってきてズルズルと続けちまってる。

 俺の唯一の楽しみといえばタバコだ。

 タバコはいい。

 心のもやもやっとしたもんがタバコの煙とともにすうっと消えていく。


 「ふ〜〜。」


 今日もタバコがウメェなぁ。


 俺は吸い殻を炎の中へと捨てた。




 ——— 弾かれた。










 ある円形闘技場でのこと…



 僕はたった今前世の記憶を思い出した。

 僕は今奴隷だ。

 目の前には気持ち悪い見た目の猛獣。

 素手で戦わされていて、ものすごいピンチである。

 猛獣は大きな一本の角を持っていて体がヌメヌメとしている。乗用車ぐらいのリスみたいな生き物だ。よだれを垂らしている口元からは黄身がかった鋭い歯が顔を出している。

 周りを見渡してみるとたくさんの人間がこれまた気持ちの悪い目でこちらを見ている。

 生まれて初めてだよ。 

 こんなふうに見世物にされるのは。もちろん前世も含めて。

 周囲は始まってからずっと熱気に包まれていて、その熱気に押されるかのようにあの生き物がジリジリと近づいてくる。

 これはもう死んだな…

 何回も死んできて、いつ死ぬかわかるようになってきた。まぁ、今の状況下では誰もがわかることだけど。

 猛獣が近づいてくるにつれ、猛獣への声援へも大きくなって、その声援がまた猛獣の足を早めているような気がする。


 「早く殺れー!」

 

 「頭を嚙み砕いちまえー!」


 本当にうるさいな。

 なんでこんな腐った人間ばっかりなんだろう。

 助けてくれた人もたくさんいたけど、それよりも頭のおかしな人間のほうが多い気がする。

 一体僕が何をしたっていうんだ。

 こんな気持ちになるくらいなら死んだほうがマシなのかもしれない。だけど、何度転生することができても命を粗末にすることだけはしたくないと思うようになってきた。

 他の人の命だろうが、自分の命だろうが、粗雑に扱ったら周りの奴らと同じだと思う。

 このまま死ぬのも癪だし、一発この生き物にいれてやろう。


 「やあぁーーーーー!!!……」





 頭を一噛み。


 もう死にたくないなー。




 ——弾かれた。








 僕は今ものすごい悔しい。

 中学三年生になって初めて人を好きになった。

 だけど、その子は能力持ちの他の男に取られてしまった。

 

 「僕も自分の力が分かればなー」


 僕には能力がない。いや、正確にはわからない。

 この世界の人間はみんな何かしらの能力を持っている。

 能力の種類は無限にあると言われていて、


 ・火を手のひらから出す力

 ・金属を溶かす力

 ・瞬間移動

 ・透明化

 ・手を触れなくても無機物を動かせる力


 こんな風に人それぞれ違った能力を持っている。

 能力を何個持っているかも人それぞれで、調べる手段はない。

 自分で使おうと思わないと能力は使えないし、能力を調べる手段もないので、死ぬまで自分の能力がわからない人もいる。

 

 「水よ出ろ!僕の本、僕の前に現れろ!高くジャンプする!!できねーー!」


 地道にいろんなことを試していくしかない。

 僕もあいつみたいに能力が分かればあの子を振り向かせることも出来たのかもしれないのになー。

 まぁ、地道にやっていくか。

 

 「コンビニ行ってジュース買ってこよーっと」


 

 

 あの猫かわいーなー。

 僕はコンビニまでの道にあるペットショップに目をやった。 

 猫いいよなー。飼いたいなー。でも、母さんはダメって言うだろうし。仕方ないか。

 僕はペットショップから目をはなし、再びコンビニへと歩を進めた。

 それにしても、さっきから後ろのカップルイチャイチャしやがって。

 つい最近失恋したこっちの身にもなれよ。こんなこと言っても仕方ないけど。


 「ほら見ててよー。よっと、はい。君のためだけに出した宝石だよー」

 

 「わー、すご~い。キレーだねー」

 

 すぐ後ろに歩いているカップルの彼氏の方。察するに宝石を出すことのできる能力だろう。条件が何かあるのかもしれないが、とんだあたりの能力だ。


 「やっぱりユートはすごいねー。ユートの彼氏でよかった。ちゅっ」


 「恥ずかしいなぁー、みさきちゃ~ん」


 うわぁ、聞いてるこっちが一番恥ずかしいわ。

 すぐ前に人いるだろ!場所を考えろ!

 イライラすること多いなー。

 頭痛もするし。

 後ろの奴ら爆発しちまえよ!


 ドガン!!


 「へ?」


 今、後ろから爆発音が。し、したような。

 い、い、いやまさかね。ぼ、僕は何にも感じなかったし。い、痛くも痒くもなかったし。

 ま、まぁ、後ろ振り返ってみようかなー。

 幻聴か何かだろう。てか。幻聴であってください!!


 「ギ、ギャーーーーーーーー!!み、道が血だらけ!」


 地面には水風船が割れたかのように離散した血が大量にあった。

 

 「ぼ、ぼくがやったのか?」





 「能力安全対策法第54条に反する行為により、死刑とする」


 死刑が決まった。

 能力の不正使用による犯罪は、年齢によって罪が軽くなったりはしない。

 

 「いっつ!」


 …はぁ。

 ……思い出した。




 執行。



 また死んでしまった。

 前世の記憶取り戻してから死ぬまで早すぎないか?

 なにか()に問題があるのかもしれない。わからないけど。

 もう死にたくないなー。

 どうせまた転生だろ。

 つらっ。




 ——— 弾かれた。



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