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  作者: しんぎつ なない
学園編
1/22

プロローグ

 僕は今日高校で、仏教やキリスト教、ヒンドゥー教などの宗教について学んだ。

 小学校、中学校、高校と、宗教についての授業を受ける度に、必ずと言ってもいいほど考えさせられることがある。


「天国とか地獄とか、極楽浄土とか、本当にあるのかなー」


 家までの帰路でそんな事を呟いてしまい、前を歩いているスーツ姿の女性にジロリと見られてしまった。ジロリではなかったかも。。


 辺りはもう真っ暗で、夏の終わりを告げていた。8月という夏真っ盛りの時期であれば、まだこの時間だと日は辛うじて頭の先っちょを見していた。


 日は昇り、日は落ちる。この地球という世界ではそれが当たり前のことで、特に疑ったこともなかった。でも、その当たり前が通じない世界もあるのかも知れない。それこそ天国とか……。


 最近変な事ばかり考えてしまう。地球はいつ滅びるのだとか、不老不死になることはできるのかとか。もうすぐ死ぬのかも知れないな。死生観の事ばかり考える。



 しばらく歩いていると、交差点に出た。

 この街にはビルなんて一切無く、住宅が広がっている。時々畑があって落ち着いた雰囲気をかもし出している。そのため、仕事帰りのサラリーマンだったり、学校帰りの学生が多く、帰りはその人たちと一緒に駅とは逆方向に歩く。

 今日も例外なく、交差点には疲れた様子のサラリーマンや学生が信号によって歩みを止められていた。


 制限速度なんて気にしていないような車達が僕の目の前を走っていく。排気ガスの匂いが鼻につく。苦手な匂いだ。





 死は突然やって来るというが、本当なんだなぁ。 そう咄嗟に思ったのも、今の状況を見れば皆が納得するだろうと思う。

 ものすごい速度でトラックが僕に、いや、僕とその周りにいる人々に向かって突っ込んでくる。避けることはほぼ無理だろう。

 時間が少しゆっくりに感じ、頭の奥が冷えているのがわかる。トラックの運転手の顔が赤い。酔ってるのかな。

 僕は今日、この瞬間死ぬんだろう。

 こんな時にまたあの疑問が浮かんできた。


”僕たちは天国にい——”





 体がふわふわする。やっぱり死んだのかな。てことは、今は魂の状態なのか?考えても無駄なのかなぁ。天国に、極楽浄土に、行けるかな。











「いってー!」


 あっ、雄二がホバーボードから落ちた。


「ちゃんと足に安全装置付けとっけっていっただろ〜。まだ30センチくらいしか上がってなかったからよかったけど、1メートルくらい飛んでたら大怪我してたぞ。早く遊びたいからって、安全装置はつけとかないと危ないだろ」


「ごめーん」


「いや、俺に謝っても仕方ないから。これからは気をつけろよ」


「うん、気をつける」


 雄二はバカなのかもしれない。安全装置をつけずにホバーボードに乗って飛ぶなんてバカのすることだ。そんなの幼稚園児でもわかる。

 俺と雄二は誕生日が同じで、10歳の誕生日の時に二人ともホバーボードを買ってもらった。買ってもらってから1ヶ月毎日二人で遊んでいる。



「いって」


 急に頭に鋭い痛みを感じた。ここ一ヶ月、頭痛が頻繁に起こる。両親はホバーボードのやりすぎだとか言うけど、そんなわけ無い。ホバーボードはただの空飛ぶ遊び道具だ。頭が痛くなる要因にはならない。

 前、ママに病院に連れて行かれたけど、医者は特に問題はないと言っていた。


「慎太郎、大丈夫?また頭痛いの?」


 雄二が頭を押さえている俺の顔を覗き込んできた。


「あぁ、うん。大丈夫」


「最近頭いたそうな事多い気がするよ。また病院行ったら?前は問題ないって言われたらしいけど、今度は何か分かるかもよ」


「そうだな。今度行ってみる」


 雄二は俺のことを誰よりも心配してくれていると思う。

 雄二はバカだがいいやつだ。


「ぅあっ、いっ」


 また頭痛。こんなにもすぐに、また頭痛が起きるのは初めてだ。しかも、今回は尋常じゃないくらい痛い。身体中棘だらけの虫が脳を食い散らかしながら頭の中を蠢いてるんじゃないかってぐらい痛い。辛うじて考えることはできるが、頭がおかしくなりそうだ。


「ねぇ!大丈夫!?慎太郎!」


 雄二が体を揺すって来る。

 俺は今痛みと闘うのに必死なんだ。少しは静かにしてほしい。

 だんだんと頭の痛みが強くなって来る。それと共にお腹の中が熱くなっている。頭の中はぐちゃぐちゃで、物を考えるのも難しい。それでも、なぜか何かを思い出せそうで出せないような混沌とした思いが浮かぶ。


「はっ……」


 ーーーどういうことだ。


 頭のぐちゃぐちゃが整理された。

 でも、それはおかしな雰囲気を持っていて、整頓するのには時間がかかりそうだ。


 頭がうまく回らない。

 遠くで誰かが僕の名前を呼んでいるような気がする。


「ーーーう。ーーろう!慎太郎!」


 僕は、ハッと、急に起こされたような時に似た感覚を覚えた。


「大丈夫!?慎太郎!?」



 僕は……。



 僕は………。



 僕は…………。



 転生したのかもしれない。

ご拝読ありがとうございます。

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