なるほど、平穏を壊すものね
時間は0時。
場所は四ノ宮公園。
四木に指定された場所に来てみたら、驚くほどに人がいた。
数える気にもならないがパッと見で100人くらいだろうか。
集まってる人の中には自分と同じ高校生くらいの人もいるし、
男女問わず年齢の幅が広いといった印象だ。
「やあ、柊君。ちゃんときたね」
「ああ、さっきの不法侵入者」
「事実だから否定はしないけど、出来たら四木さんと呼んで欲しいかな」
「ところで、まだここに来させた理由くらいそろそろ話してくれてもいいんじゃないですかね」
「ああ、それについてはそろそろ説明があると...ほら」
四木はそう言い、公園内の一番高い丘となっている場所に指を指す。
そこにはスーツ姿の女性が一人いた。
ブロンドの髪は美しく、妖艶な人だと思った。
「はーい!ちゅうもーく!」
結構クールな感じの人かと思っていたので第一声には驚いた。
「どうやら全員集合したみたいですので説明をさせていただきますねー!」
自分が公園についた時には点呼とかなかったよな。
こんなに大勢いるのにどうして全員来たことがわかったのだろうか。
本当についてないよねGPS。
「もしかしたら担当の方から聞いているかもしれませんが、これからみなさんには、とあるゲームをしていただきます!」
担当?
もしかして四木の事か?
聞いてるも何も指輪とスマホを渡されて、ここへ来いとしか言われていないのだが。
「そしてこれが一番の注意事項!」
不意に明るい感じの口調から、熱が引くのがわかった。
「このゲームは怪我は勿論の事、最悪の場合死にます。ですので、参加を取りやめたい方は今ここで挙手をして指輪とスマホを返却してください。
」
静まり返る公園の雰囲気。
しかし、自分を含め挙手をするものは誰もいない。
「最悪の場合死にます。」とのことだが、こういう場合大抵死なないのが相場だろう。
大体、日常に死なない可能性を見出す方が難しいのだ。
こういう言い方をしては不謹慎だが、遊園地やプールなどの娯楽施設でも人が死ぬ事だってあるし、普段日本人の多くが乗っている電車やバスなんかを乗っていても「最悪死ぬ」可能性はあるのだ。だったらわざわざここでゲームとやらを降りる必要がない。
などとうだうだ考えていたら一人の少女が声を大にした。
「一つだけ質問させて」
「はいはい、なんでしょう!」
「このゲームに勝ったら、何でも願いを叶えてくれるって本当?」
周囲がざわつく。
え、そんな報酬あるの?
俺の担当雑すぎやしないだろうか。チェンジで。
「正確には我々で可能であることであれば叶えますよ!例えば、お金が欲しいというのであれば望む金額を、総理大臣になりたいのであれば、我々が当選するまで選挙のサポートをさせていただきます」
「他には?」
「ああ、そうですね。ちょっとちょっと!」
そう言って近くのスーツの姿の男を呼び出す。
すると手を剣に見立てるように、男の右腕に振り下ろす。
嘘みたいだ。
次の瞬間には男の右腕が地面に落ちていた。
あたりに悲鳴が響き渡る。
だが次の瞬間に奇跡が起こる。
他のスーツの男が落ちた腕を拾い上げ、元あった部分にくっつけるようにして支える。
そして、ブロンド女が男の傷口部分に手を当てるとその周辺が緑色に輝いた。
それからほどなくして腕を切られた男が立ち上がり、切られたはずの右腕をグルングルンと振り回す。
まさに絶句。
その場にいた全員が息を飲む。
「こんな程度の奇跡だったら、私たちは起こすことができます。というか総理大臣になるとか言われるよりはこっちのが簡単ですね」
問いかけていた少女は頷き、納得したような様子だった。
「では辞退者もいないようですので次に進めさせていただきますね」
身体が震える。
強がりだとかではなく本当に恐怖ではない。
むしろこれから起こることへの期待と好奇心だ。
「なるほど、平穏を壊すものね」
思わず呟いてしまった。
こうしてめでたく、俺を含め、現時点でこの公園にいる人たちはゲームの参加者となった。
何だかんだで3話まで更新しましたが如何でしょうか。
面白そうだと感じたらブックマークか何かしといてくださるとありがたいです。
(モチベーション的な意味で)
正直言ってこの小説、バトル物なのですがまだ全然そこまでたどりつけていないです。
あと3、4話後くらいでしょうかね。
夜にまた更新します。