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プロローグその1

 まず物語を始めるまでにこのお話の主人公となるレオナルド少年について少し説明させてください。


 このレオ君は平和で豊かなトッカーナ公国なる小国に生を受けました。

 優しい両親、歳の離れた弟命(ブラコン)気味の双子の兄姉という4人の家族に囲まれてレオ君はすくすくと元気に成長しました。


 しかしレオ君、10歳の誕生日を目前にして大きな事件に2つ起きてしまいます。



 事件1:スキル開示にて。


 トッカーナ公国では満10歳の子供達に国の立ち会いの元、スキル開示という儀式があります。

 スキルとは神様から与えられた才能の事で、この儀式は才能ある子供を青田買いしようというものです。

 なので国の鑑定士の他、国内の貴族や弟子を探している大魔法使い、騎士団等々のスカウトや彼らの相手をする商人達が公国各地を巡るお祭りのようなものです。


 さいわいレオ君は弟と同じ職場で働きたがっている騎士団所属の兄と宮廷魔法使いの姉にみっちり鍛えられていたので『剣術』と『魔法』のスキルが高レベルでありました。

 あとよくわからない『食神様の恩恵』と言うスキルも。


 スキルには誰もが努力次第で取得出来る『ノーマルスキル』と特定の種族のみが取得出来る『オリジナルスキル』、何万分の一の確率で取得出来る『レアスキル』、そしてそんなレアスキルよりもっと珍しい『ユニークスキル』があります。


 『食神様の恩恵』はユニークスキルでした。


 しかし珍しければ良いというものでもありません。ユニークスキルは過去の事例が残っていなかったりあっても1つ2つ事例があるだけ。効果も使い方もわからないのが殆どです。


 レオ君は誰かもわからない『食神様』から何かもわからない『恩恵』をもらっていたのでした。



 事件2:ダンジョンに転落


 スキル開示からしばらくしてからの事です。

 レオ君は街の近くの森を剣でぷらぷら下草を刈りながら歩いていました。

 この森の奥は強いモンスターも住んでおり、地下には広大なダンジョンが広がっています。

 しかし少し1人で将来の事を考えたかっただけのレオ君は本当に村の傍をふらふら歩いていただけです。


 スキル開示の日にレオ君は誰からもスカウトを受けませんでした。ブラコンの兄と姉が番犬の如く両脇をがっつり固めていたからです。


 騎士団も宮廷魔法使いもどちらも素晴らしい仕事です。しかしどちらを選んでも選ばなかった方には悲しい想いをさせてしまいます。


 レオ君はなれないなんて事をこれっぽっちも考えていません。子供らしい頑張れば絶対になれる理論です。


 そんなレオ君を突然地割れが襲います。レオ君は深いダンジョンに落ちていきました。

 落ちた先はドラゴンの真上、下草刈ってた剣が首と後頭部の境目辺りにあるドラゴンの弱点逆鱗に突き刺さりしかも会心の一撃。


 チャラララーン♪

 レオナルドは『ドラゴンスレイヤー』の称号を手に入れた。


 そんなわけでレオ君はブラコン(以下略)が助けに来るまで1週間ほどドラゴンを食べて生活したのでした。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 5年後。


「ねぇねぇ、レオ。教えてよぉ?」


「ん? だから内緒だって。」


「えー、レオのけちぃ、いけずぅ。」


 幼馴染みのエアリエルとそんな話をしながら列が進むのを待っている。

 教会での初等教育を終え、15歳になったレオナルドはエアリエルと公立トッカーナ学園の入学試験に来ていた。

 普通15歳になった者は成人し仕事に付く。ここトッカーナ学園は各分野のスペシャリストを育成するための高等教育の場だ。

 でもレオナルド達には無駄口叩くほど余裕がある。

 そしてそれは2人に限った話ではない。周りも気張った者はあれ緊張している者は皆無である。

 それはこの前期入試の合否がスキル証の提示と簡単な面接のみで決まるからだ。試験費用もあるし合格できるだけのスキルの無い者は実技と筆記で合否の決まる後期入試を選ぶ。


「というかエアリはどうしてそんなに僕の志望学科を気にするの?」


 世界最大級にして最高峰のトッカーナ学園には騎士科、魔法科、冒険科、職人科、商業科、貴族科等々と様々な学科が用意されている。


「えっ? それはその…レオと一緒にいたっ、じゃなくて、一緒の方が楽しいでしょ?」


「うーんでも将来の関わることだからちゃんと適正とか考えて決めた方が良いよ。」


「ちゃんと考えれるよぉ。一緒の学科に通って将来はレオのお嫁さんにゴニョゴニョ…」


「? あっ僕たちの番だよ。行かないと。」


 真っ赤になってうつむいてしまったので最後の方はよく聞き取れなかったが、レオナルド達はそれぞれあいている受付の所に進んでいった。





「次の方、どうぞ。」


 レオナルドの担当となった受付は控え目の胸に『ヒルニューエ』と名札を着けた眼鏡の似合う知的美人さんだった。


「お、お願いします。」


 レオナルドはどぎまぎしながら願書とスキル証、試験料を渡す。


「くすっ、緊張しなくても良いですよ。今日は痛いことも難しいことも無いですから。

 って、あら? 君がレオ君?」


「は、はい。一応僕が『強運のレオ』です。」


 偶然とはいえ幼くしてドラゴンスレイヤーの称号を手にし1週間もダンジョンで生き延びたレオナルドは『強運のレオ』とよばれ、トッカーナ公国ではちょっと名の知れた存在だ。


「いえいえそうではなくて、実は私は君のお兄さんお姉さんと同級生だったのですよ。」


 なんだか自分を有名人と勘違いしたみたいで恥ずかしい。


「それでお兄さんからは魔法科を選ぶようなら思い止まらせるよう、お姉さんからは騎士科を選ぶようなら考え直させるよう頼まれていて少し困っていたのです。」


「なんか身内がご迷惑を御掛けしたみたいで申し訳ありません。」


 なんだかもう耳まで熱い。


「くすっ、それでレオ君はどの学科をご希望ですか?」


 うちの弟は天使みたい、いや天使だ‼ と熱く語っていた同級生を思い出しながらヒルニューエは聞く。


「は、はい。『料理科』をお願いします!」

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