五話
「ノート貸そっか?」
それが彼女の第一声だった。
宿題を家に忘れて困ってた俺にノートを貸してくれた。
あの時は本当に助かった。
お陰で先生に嫌味を言われる事がなかったからな。
茶木奈々。
高校一年の時からの腐れ縁。
俺は本来人の輪に加わろうとしない人間だ。
うるさいのは嫌だし面倒事に巻き込まれるのも嫌だった。
だがあの時…。
彼女が声をかけてくれたお陰で俺はクラスで孤立する事は無かった。
俺の話相手は相変わらずの彼女だけだったがな。
俺自身は孤立してても良かったと思ってる。
他人の事を心底どうでもいいと俺は思う。
だが彼女と出会った事で俺は変わってしまった。
色々思った事もあるけど…。
出会えて良かったと今は本当に思ってる。
多分俺は彼女の事が好きだったのかもしれない。
いつからか分からないけど…。
でも…例えそうだとしても俺は彼女には告白はしないだろう。
タイプじゃないとかではなく単にその気が無いだけ。
だから代わりに感謝の言葉を言いたい。
卒業の日にたくさんの感謝の言葉を述べたい。
出会えた事への感謝を。
辛い時に支えてくれた事への感謝を。
友達になってくれた事への感謝を。
…だけど。
それはもう叶わない。
ーーー
ーー
ー
俺の目の前には血溜まりがあった。
辺りには俺の見知った女の子の■■■■が転がっていた。
頭が真っ白になっていた。
何が起こったのか本当に訳が分からなかった。
だからなのか。
死体を見た俺は一目散に走った。
玄関扉目掛けで。
頭が空っぽになったからか考えるよりも先に体が動いた。
俺は扉を開けようとするが…。
―――ガチャガチャガチャ!!!
ドアノブを捻りつつも開かない。
何で!?
ここから早く逃げないといけないのに。
あの血溜まりと死体は明らかに普通じゃない。
何者の仕業かは知らないけどこのままでは俺まで殺される!
早く逃げないと――。
―――ボチャ。
俺の後ろから気持ち悪い嫌な音がした。
それはまるで濡らしたケーキを床に落とした様なそんな気持ち悪い音だった。
――ボチャ――ボチャ。
ゆっくりと近づいてくる。
俺がいる玄関前に。
一気に血の気が引いた。
鏡があったら俺の顔はきっと真っ青になっている事だろう。
――ボチャ――ボチャ。
さらに近づく。
音が近づく度に心臓が跳ね上がる。
動けない。
体の震えが止まらない。
―――ボチャ。
止まった。
気配を感じる。
俺の直ぐ後ろにいる。
だが距離がある。
視線を感じる。
明らかに俺を見ている。
どうする。
どうする。
どうする。
どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする。
「…俺は」