第1章❶
ゆったり更新します。
主人公は春香です。
多分…恋愛話かな?
地面を覆うように被さった霜柱が朝陽を浴びてキラリキラリと光っていた。霜を着けた草花はまるでウェディングドレスを纏っているようである。すると、冷たい春風が、ずぉう、と彼らの間を通り抜けた。彼等はカサカサ…と少しだけ動いただけであった。やはり、霜は彼にとって重いのだろうか。ウェディングドレスを纏った草花の中に下を向いた白い蕾を持った花があった。
春香は歩む足を止め、この蕾をじっと見つめながら思った。
この下を向いた蕾は、人恋しいのだ、と。
すると、春香は自分の手袋を外し、小さな蕾を手で覆い、蕾の霜を体温で溶かした。手には少しばかり水が溜まり、手を離すと手からはポタポタと水が光りながら垂れた。蕾は静かに下を向き続けている。春香は蕾を朝陽に当てようと蕾を立たせようとすると、蕾と春香の間を冷たい朝の風が通った。蕾は春香の手を振りほどくように揺れた。まるで、蕾に嘲笑された気分になった。春香は蕾に顔を近づけた。
「冷たい蕾ね。きっとこの花は汚い花だわ。」
そう言うと鼻息で蕾を少し揺らした。蕾は、サワサワ…と揺れた。
春香が、満足げに立ち上がると顔の周りを冷たい春風がまとわりき始め、爪先には土の体温がつきまとってきた。
春香は身震いをすると、口から真っ白な息を吐きながら呟いた。
「みんな冷たいのね。」
そう言った、春香はニヤリと笑うと、
足に力を込め、びゅうとやってきた向かい風に向かって走り出した。
土は押し込まれたハイヒールに顔を歪め、
風は裂かれたことを嘆いている。
冷たさの押し付け合いから始まる2月の朝である。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
誤字脱字等は大目に見て下さい。