クリスマス 再生。または壁越え
メリークリスマス!
賛否両論あるかもですが、みんなで幸せになろうよ(笑)
クリスマスってステキだと思うの。
キラキラの街と大きなクリスマスツリー。サンタさんのプレゼントとパーティー。
ハロウィーンの時みたいにドレスでお姫さまも楽しかったけど、サンタさんの衣装も着てみたい。
パパからのプレゼントと、サンタさんからのプレゼント。サンタさんが誰なのかはわからないの。いつも朝起きるともう置いてあるから。
パパがいっぱい考えて選んでくれたプレゼントはとても嬉しい。たくさん私のこと考えてくれた証拠だから。
名前もわからないサンタさんからのプレゼントも嬉しい。なんだか優しくてあったかい気持ちになるから。だから、プレゼントのお返しができないのがちょっと残念。
パパとナイトと迎えるクリスマス。今年は好実さんと晴さんも来てくれるって。すごく楽しみ!
来年は試験? ていうのを受けてみようってことになったの。私事故? で何年分かの記憶がないみたいなの。気づいたのは最近で、教えてもらったのもついこの間なの。
子供だと思ってたら、もうすぐ二十歳だって聞いて、もうビックリしたし、もったいないことしたなって思ったわ。学校に行った記憶がないんだもの。きっと楽しかったんじゃないかなぁ。パパもそうだね、って笑ってくれたの。
でも、さみしそうな笑顔で記憶は戻らなくてもいいよ、って言うの。私なにかしたのかしら。したのかもしれない。覚えてない私にはどうしようもないのだけど。思い出しそうにもないし、そのために病院に行くわけでもないもの。
……本当は、思い出すのが怖い、のかもしれない。うん、怖いんだわきっと。私は覚えてないけど、周りは覚えてる。なにかしてたのだとしたら、迷惑をかけた人がいるのだろうし。
ひとりで抱えられなくて、泣きながらパパに話したのだけど、パパはぎゅう、と私を抱きしめてくれた。優しく頭を撫でてくれて、落ち着くまでずっとそうしてくれていたの。
昔は昔。そう割り切っているから大丈夫。そう言われて、やっぱり誰かに迷惑をかけたんだわ、とさらに涙がとまらなくなったんだけど、反省は大事だけど泣くよりも前に進んでほしい。パパの言葉とかぶって誰かの声が聞こえた気がしたの。
反省は大事。うん、反省したわ。記憶を失くす前の私と今の私は違うけど、どちらも私。失くした私の中にまだ彼女はいるわ。だから忘れない。
前に進んでほしい。うん、泣いたら少しすっきりしたわ。勉強は嫌いじゃない。頑張れることから始めよう。
大丈夫。私、ちゃんとするって決めたのだもの。……まだ、人に会うのは怖いけど。
今は、パパを少しでも安心させてあげたいの。高校の卒業検定をとるのもそのひとつ。ゆくゆくは大学まで卒業したい。どれだけかかるかはわからないけど、きっと大丈夫。
いつまでもパパに頼れない。パパにも幸せになってほしい。私がパパのおかげで幸せだから。
明日のクリスマスのパパへのプレゼントは、サプライズなの。楽しみだけど、ちょっと不安。うまくいくかしら。
「バウ」
ナイトに寝なさいって言われちゃったからもう寝なきゃ。私もサンタさんになれるかしら……?
朝起きて、枕元にはプレゼントがふたつ。ひとつはパパから。サンタさんの衣装とかわいらしいブレスレットだった。嬉しくてさっそくつけた。キラキラお星さまがかわいくて、宝物になった。
もうひとつは、名前がなかった。『今のあなたへ』とだけカードには書いてあったわ。いつもの名無しさんだった。プレゼントは赤色の口紅。いつもピンクのリップだったから、少し驚いたけど嬉しくてつけてみた。
大人になったみたいな、不思議な気持ちでナイトと部屋を出た。
好実さんと晴さんはお昼過ぎに来て、準備を手伝ってくれたの。晴さんとパパが部屋のかざりつけ。私と好実さんとでお料理。夕方にはパーティーが始まった。
実は好実さんにも泣きついたことがあったの。好実さんも抱きしめてくれた。そして、自分のことを少しだけ話してくれたの。
高校生の時の黒歴史? の話をしてくれて、大切な友人に助けてもらったんだって。そのおかげで今が幸せなんだって。だから、私にも幸せになる権利があるんだって言ってくれたの。
私が不幸になるのを望んでるわけじゃないんだって。
その言葉の向こうにも、誰かがいたような気がしたけど、誰なのかはわからなかった。
私は幸せになっていいのかしら。幸せになれるのかしら。なる、と思っていいの?
いいよ、てか勝手になりなよーーと聞こえたのは気のせいだけど、でも、多分ーー。
そして、チャイムが鳴る。
さぁ、サプライズの始まり。
パパを玄関に追いやって、好実さんと笑い合う。
パパ、幸せになって。
間に合いました(笑)
いや、遅刻だろ。




