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番外編  再会。または新たな希望 2

お待たせいたしました。ほんっとうにすみません。

 結果、というか結局、間中兄妹と小堺姉弟と知り合いになった。てか、再会に3年たってないんだが? いんじゃね? ああ、そう。いいの、か?


 まぁ、真桜は間中がきっちり囲いこんでるし、間中妹も小堺弟となにやらなにやら? ああ、小堺弟は中坊かと思いきや小学生だった。成長早いというか、真桜より間中に似てないか? 主に中身が。顔は真桜に似てかわいい感じなのにな。


 疑問は小堺弟の笑ってない笑顔に封じられた。長いものには巻かれよう、うん。


 そして、俺はしばしば間中妹、瑠花と会うことになるのだが、なぜだろう。甘い雰囲気になるなんてことはなく、ただひたすら瑠花の話を聞くことになった。


 愚痴というか相談というか反省というかやっぱり愚痴というか結局のろけかよ! といった時間をコーヒー片手にすごしていると、必ず小堺弟というお迎え(お邪魔?)がくる。


 痴話喧嘩はよそでやってくれと思わなくもないが、瑠花の高校が俺の母校だったこともあり、色々と聞かれている。こればかりはどうしようもないので小堺弟、真輝も参考にと大人しくしている。どうしてこうなった。


「お前、女運ないのな」

「……お前にだけは言われたくなかったよ、城田」

「俺は彼女いるし」

「世も末だな」

「なにおぅ!」




「きゃっ!?」


 次の講義のため、廊下を移動していた俺と城田は、なにもない所でつまずいた女子に出くわした。

 わざとこっちに向かって倒れてきたのがわかって、反射的に助けようとした手を引っ込めた。


「きゃあ!?」


 俺がよけたことで、被害に合ったのは城田だった、と思いきや奴のステルス機能が発動、華麗に避けた。変なとこですげぇな、それ。

 女子のはものの見事に転んだが、誰も気にしない。いいのか、それ。いいんだ、それ。


「すげぇな、城田」

「俺も思う。てか、これ」

「これ?」

「ボンボンズを再起不能に(おとしい)れた悪魔」


 これがか! てか、まだいたのか。


「お前、狙われたんじゃね?」

「は? ありえなくね? うち平凡なサラリーマン家庭よ?」

「将来に先行投資とか」

「俺にだって選ぶ権利というものがだね、城田くんや」

「失恋引きずってるだけだろ」

「……少しはオブラートに包もうや」

「間中嫁と話すのに一番いらんスキルだ」

「なるほど」

「てか、むしろ手当たり次第なんじゃね?」

「納得」


 話ながら歩き出すと、後ろから叫び声が飛んできた。言わずと知れた悪魔である。


「なんで助けてくれないのよっ!?」

「助ける義理がどこにある」

「城田意外と男前だな」

「意外とは余計だ」

「いや、ヘタレ属性は変わらん」

「人のこと言えないだろうが」

「隣の芝生はよく見えるよな」

「なんか納得」

「なんでシカトすんのよっ!!」

「「興味ないから?」」

「え?」

「わざわざ自分からフラグ拾いに行くバカがどこにいる」

「そんなのに巻き込まれるのは2度とごめんだな」


 ポカンとした女子。おいおい、まさか自分はかわいいから優遇されて当然とか思ってたのか? ありえないだろ。義務教育過程で理解するだろうが。


 城田とふたりでダメだこりゃ、と肩をすくめて歩き出した。

 後ろからキーキー叫ぶ声は聞こえないことにした。いい判断だと、周りからグッジョブされた。疲れた。




 瑠花と真輝と待ち合わせているカフェに向かうのに、近道の中庭を歩いていた時のことだ。初対面の時、瑠花が連れ込まれた建物の影に人の気配があった。


 また誰かが? と近づくと、カラフルな鳥の群れが、いや人だよ人。しかも女子大生の群れだ。なにやって……まぁ、隠れてる時点で察せよ、てことだな。


 会話は聞こえない。というより、集団でそれぞれがわめいているため、言葉として認識できない。どんだけピーちく騒いでんだよ。女3人でかしましいとはこのことだな。


「わかった!? もう間中君にも佐伯君にも近づくんじゃないわよ!!」

「あんたなんか彼らに相応しくないんだから!!」


 ……間中と俺か。ワンセットにされるのは複雑だな。てか、知り合いですらないんだが誰だね君達。そもそも誰に言ってるんだ。


「あのさぁ。あんた達、あのふたりとお知り合い? にしては見覚えないけど? 一度でもあいさつ以外の会話したことあってのこれ、なの?」

「それ、は……」

「っそんなの、あんたにカンケーないでしょ!!」


 集団に詰め寄られている奥から聞こえた声は、最近聞きなれたものだった。ああ、うん。なんか安心した。あいつなら大丈夫だわ。


「……あきれた。あんた達身勝手って言葉知ってる?」


 確かに、身勝手だろうな。俺はそんなの望んでないし間中もそうだろう。周りが勝手に思い込んで行動を起こすことほど恐ろしいものはないのだから。


「な、そんなのあんたに言われる筋合いないわよ! いいからわかったの!? もうちか、」

「じゃあ、俺ならいいか?」

「え?」

「あ、きゃっ、佐伯く」


 わめき声を遮って、一歩出る。俺の姿を見た集団は、そろって固まった。


「俺は見ず知らずの奴に、俺の交遊関係に口出される覚えはないんだけど」

「そんな、佐伯君! だってこの女は!」

「俺の友達がなにか?」

「っ!」

「この際だから、他の人達にも伝えてくれないか。俺は友人をちゃんと選んでるし、今のところそいつらに迷惑かけられてはいない。むしろ、君らが俺の知らないとこで勝手に色々してくれるのはありがた迷惑でしかないから」

「そんな……」

「そんな? なぜ君らが傷つくんだ? 俺は俺のものであって、君らのものじゃない。その君らがなぜ俺のことに、さも本人のように口出ししてくるんだ? 俺と話したこともないのに俺の気持ちがわかるとでも?」


 言いすぎかもしれない。けど、これは今言っておかないと増長する。同じ考えの仲間を得た奴に少数の意見は聞こえない。ああ、数年前の俺はこんなに愚かだったのか。逃げたいが、もう逃げるのはやめにしたばっかりだ。


「とりあえず、瑠花にきちんと謝ってくれないか。そして、もう

 近づかないでほしい」

「そんなっ、ひど」

「酷い? じゃあ、数で押して攻めて責めるのは酷くないのか? どんだけ自分勝手なんだよ。そんな奴らと話したいと思うか? 俺は思わない」

「いいのー? 友達無くすよ?」


 瑠花がフォローなのか、口をはさんできた。


「こんなんで無くす友達じゃないし、むしろようやく理解したかこのバカとか言われそうだ」

「いいお友達だねー」

「ああ、ほんとにな」


 城田ではないがな。まぁ、城田もそんな感じだろうけど。いい奴なんだよ、存在感がステルスなだけで。


「ああ、後瑠花のことは間中にも伝えとくから」

「え、な、そん」

「妹の瑠花がこんなことされて、黙ってる間中じゃないだろうしな」

「……え!?」


 逃げた。蜘蛛の子を蹴散らすようにとはこのことか、ってなくらい一瞬で。


「知らないだろうとは思ったが、バカじゃね?」

「恋する乙女は暴走族」

「ある意味すげぇな」

「まったくだわ」

「瑠花は暴走しねぇの?」

「いやー、しちゃまずくな……い」

「いんじゃね? 真輝は喜ぶだろうぜ」

「っ!?」


 なんで知ってるの、って? わからんほど鈍くはないんだよ。俺の鈍さは真桜限定だ。てか、真輝だって気づいてるぞ。じゃなきゃあんな余裕のあるふりはできないだろ。


「恥ずか死ねるわー」

「いや、今時年の差なんてあってないだろ。むしろ真輝は気にしてないし落とす気満々だし背ぇ伸ばす気しかないぞ?」

「女が7も歳上なんてどうなのよ」

「真輝得? 現在進行形で外堀埋められてんだし、諦めて告れ」

「それができたら苦労しないわ!!」


 だよなぁ。



 結局、このふたりはなんだかんだ紆余曲折痴話喧嘩にスレ違いした挙げ句、しびれを切らした真輝に拉致られて身体に聞くという荒業でもって落ち着いた。真輝18歳、よく我慢したと言いたい。


 余談だが、あの時のカラフルな鳥の群……かしましい女子大生の集団は、どうやって素性を調べたのか、間中によって粉骨されていた。恐るべし間中。されたのが瑠花であれなら、真桜ならさらなる悲劇が……あ、寒気が。



 俺は、聞けずにいた北川有栖の様子を神楽坂に教えてもらうようになった。少しずついい方向に向かう話を、ようやく落ち着いて聞けるようになるまで時間はかかったが、ステルス城田に聞かされたりもしてリハビリしていたので受け入れることができるようになった。



 その俺が幸せをつかむのは、まだまだ先のその先ことである。


 ……おい、本当に幸せになれるんだろうな?





これで大体のその後を語りましたかね。あと2話くらいなので、もう少しおつきあいいただれれば嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 【妄想劇場】 >余談だが、あの時のカラフルな鳥の群……かしましい女子大生の集団は、どうやって素性を調べたのか、間中によって粉骨されていた。 駄犬「マグロ漁船にでも乗せられたか?なあんてな」…
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