結果。または作為的冤罪
いつもご指摘ありがとうございます。なるべく読みやすいように頑張ります。
日間1位2日目です! ありがとうございます!
結果として、保健医では手に負えなかった。
蹴られた左足はヒビが入っていた。
踏まれた右足は重度の捻挫。
両足包帯ぐーるぐる。
歩けないじゃんか!!
てなわけで、自宅療養。少なくとも一週間の安静が必要だとか。本読み放題イエーイ! 幼稚園から帰ってきた真輝構い放題ビバ天国!!
「まおねぇ、足いたい?」
コテン、とかしげるはずの真輝の頭が重くてよろける。なにこのかわいい生き物!
「ちょっとだけだから大丈夫。真輝がいてくれればすぐ治るよ」
「うん! えほんよんであげるね!」
なにこの優しい子! うちの弟マジ天使!!
「こんなにかわいいならもう一人でも二人でもいてもいいよ! 母!」
「突然どうしたの、真桜ちゃん!?」
リビングのソファーで騒ぐ私にとりあえず突っ込む母。
「なんなら父に頼んでもいい。妹が欲しい、と!」
「いもうと~」
「えええ!?」
きっと真輝のようにかわいいに違いない! 姉ちゃん役得! 子育てドンとこい!!
「落ち着け」
ぽす、と頭に手が乗せられる。同時に呆れたような低い声。あれ、もうそんな時間? てか、しぃちゃん声変わりしてから低くなったよね、マジエロボイス。腰にくるよ。なにが? いやん、えっち!
「脳みそも落ち着け」
さすがしぃちゃん。脳内テンションMaxまで見抜かれていたとは。
「しぃちゃんにそこまで心を読まれたら、もうお嫁に行けないじゃん」
「俺がもらうから心配するな」
「決定!? 決定事項なの!?」
「まおねぇはぼくのおよめさんになるのー!」
「真輝かわいい!!」
「落ち着け。真輝は真桜を嫁にはできないから」
「なんでー?」
「姉を嫁にはできない。法律という壁は高い。そして、真輝が18になる頃、真桜はアラサー。年齢の壁はもっと高い。だから真桜は俺に任せて、お前はかわいい嫁を探せ」
「そっかー、わかったー」
「事実だけどなんか理不尽!!」
「安心しろ。お前が18になったら婚約して、短大卒業したら結婚式だから。若いうちに子供作ろうな?」
「まぁ、素敵♪」
「それでいいの!? 母!」
どこから突っ込んだらいいかわかんないけど、なにかが違う!!
晩ごはん後。
「しぃくん来てくれたから、お風呂に入る?」
「入る」
母の問いかけにうなずく。なにせ一人では移動できない、父は忙しく帰りが遅い。なので、朝は抱えてリビングに運んでもらい、しぃちゃんは学校に。帰ってくると、真っ直ぐうちにきて、私が寝るまでの面倒を見てくれる。頼りっきり。うん、ありがとう。
「一緒に入る?」
「うん」
母よ、その質問はどうよ? そしてしぃちゃん、うなずくんじゃない。
「仲良しねー、お父さんには内緒よ?」
「だから母よ、黙認してどうする」
「えへっ? 真輝~お買い物行きましょう!」
「はーい!」
あざとかわいいな、母! さすが真輝の母だよ! いや、真輝はほんとにかわいいけど!!
精神的にぐったりな私は、もはや慣れてなにも言う気もおきない、お姫様抱っこでお風呂に運ばれる。
母が用意してくれた椅子に下ろしてもらって、服を脱ぐ。湿布を剥がしたり、包帯をくるくる巻き取ったりと、しぃちゃんはかいがいしくお世話をしてくれる。うん、いいお嫁さんになるな。え? 違う?
「一人でも大丈夫だよ?」
「せっかくの母さんの好意だ。頭洗ってやる」
人に洗ってもらうのって気持ち良いよね~。いや、そうじゃなくて。
タオルを巻いてからまた抱えられる。さすがに真っ裸をみせるのはね、いくらなんでもねぇ。
「見慣れてるから気にするな」
「そこは恥じらう所だよ!!」
「見てないとこなんてないし、触れてないとこもない」
「父には言えないっ、心臓止まっちゃうっ!」
「うちの父と涙ながらに飲み明かしてたぞ?」
「まさかの公認!? そして父よく耐えた!」
「もう黙れ」
「うひゃんっ!」
別の意味でもぐったりです。
だから母よ、ニタニタと笑うのはどうよ?
そんな特別休暇ーーなんか違う? 気にするなーーが終わり登校すると、目の前に女王さまと駄犬コンビがいた。
「ひどいわ……私そんなつもり……いくら間中君が、いえ……けど……」
「有栖……有栖は悪くないよ。みんな勘違いしてるんだ」
「でも……小堺さんは……」
「有栖」
「私怖い……どうしたらいいの。間中君を助けたいのに」
「優しすぎるよ、有栖は」
なんのお芝居の練習かな。茶番劇? それ下駄箱でやることかなぁ? そして駄犬のテンションがやたらと低いけど? いつもならそのまま私を怒鳴りつけるところでさえ、静かに慰めてる。
「えーと、まだやってたの?」
「気にするな」
目の前にいるのに? しぃちゃんの鋼の心臓じゃないんだからさぁ。
「そうよ、気にしない」
しぃちゃんの横からひょいと顔をのぞかせたのは、クラスメイトで友人の六花。
「あんたが昔北川と下僕にいじめられてたのはみんな知ってるし。そんで今も悪役に仕立てられようとしてるのも、ちゃんとわかってるわよ」
「りっちゃん、とてもありがたいけど、下僕はさすがにどうよ?」
いや、私だって心の中では呼んでるけどね?
「だって間中が真桜に下僕の名前教えてやることなんてない、って言うし同感だしたんなるヘタレだし? そもそも俺のことが好きだろう? なんてどの口が言うのかね? 自意識過剰な上にナルすぎて引くし、マジありえない。だから下僕でいいのよ」
わぉ、今日も毒舌絶好調だねー。
私達は教室に移動し始める。しぃちゃんは駄犬を見てたけどーー見てるだけ。なんの感情もない瞳で。興味ないことに対する通常装備ーーりっちゃんと一緒に歩き出した。
見られてた下僕は、びくりと肩を上げた。あれ、なんかいつもと違う? 意味のない強気は鳴りを潜めてる。しぃちゃんが怖いとか? まさかね。
「足は大丈夫?」
「捻挫の方は。ヒビはさすがにすぐには治らないって」
じゃなきゃこの公開羞恥プレイを甘んじて受け入れたりしないし。
制服でしぃちゃんにお姫様抱っこされとります。現在進行形で。
しぃちゃんは両肩に私と自分の荷物を持った上に、私を抱えてるわけで。
いくら下駄箱手前まで母が車で送ってくれたとはいえ、そこからずっと抱えてるのは重いんじゃないかと。いや、認めないけどね? 誰が? 両方かな。
「でも処分が反省文だけなんて信じられない」
「あ、そうなの?」
あれから休んでたから、処分とか知らなかったんだよね。しぃちゃん教えてくれなかったし。
「そうだよ。自分の信者共にウソばっかり吹き込んでた。まあ、信じる奴も半分くらいに減ったかな」
なにせあれ(・・)見てた奴は真実にたどり着いたからねぇ。とりっちゃんか笑う。ちょっとやらしい笑顔だ。
確かに、両足をケガしたあれは明らかに女王が意図的にやったものだろう。
「体育の先生が目撃者ってことで、冤罪だって信憑性が増したらしいよ。教師陣はあの女を疑ってる」
てか、確信してるだろうけど、証拠がないんだろうね。
教室に入ると挨拶してくれる人とくれない人が半々だった。確かに絶対女王制が揺らいでる? 前は3分の2は女王の信者だった。
少なくとも体育が一緒だった2クラスは、女王への信頼度が揺らいでる。太い柱が根元から削られてるみたいな?
「しぃちゃん、なんかした?」
「なんにも?」
なにかやってます。って顔してるけど? 見ればりっちゃんまで悪代官並の悪い笑顔だけど! ちょ、それ怖いよ! マジヤバいレベルだよ!
二人の悪巧みーー正義はこっちにあるはずなのに、悪いことしてる気分なのは私だけだろうか?ーーが実を結ぶのを、私はまだ知らない。
しぃちゃんは腹黒なんですかね?