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夢望。または新たな始まり 4

テンプレかなと思うのでこの辺りはさらっと流したいと思います。真桜さん口悪の回(笑)

「泣いてたのが証拠?」


 足で床を踏み鳴らした姿勢のままの私は、下から見上げるように下僕共を見た。若干顔色が悪いみたいだがそれがどうした。


「泣けば言い分が通るの? じゃあ、他の誰かが泣いてすがったら、あなた方は同じように対応するんだな?」


 まさか、そこの彼女だけとは言わないよなぁ? 


 今の私はちょっと怒っているわけだよ。

 女王の偽りのみを信じて裏付けをとるわけでもなくの断罪もどき。挙げ句証拠もなしにただ泣いたから?。ふざけないでもらいたいな。


「他の誰かの話は今していない! 俺達は有栖の話、を」

「やかましい。元生徒会役員がなにほざこうと聞く義理はない。私は苛めを受けたとか自己申告してる人に用がある」

「は? 元だと?」

「元生徒会役員はこっちでリコールの書類受け取って確認するように」


 怒りで仁王立ちしてる私の後ろで冷静なしぃちゃん。

 そう、すでにリコールは成立している。全校生徒の4分の3の署名はあっという間に集まった。


「ろくに調べもせずに片方の証言を鵜呑みにした挙げ句この体たらく。生徒会が聞いてあきれる。平等に接することができないなら、今すぐ引退するべきだな。ああ、もう役員じゃなかったな」


 しぃちゃんの怒りと嘲りを含んだ発言に、周りがうなずいた。女王信者は様子を窺ってるのか表立ってなにかをしようとする人はいない。元生徒会役員のやらかしたことに便乗することは悪手だと気づいたようだ。


「なんだと!? お前にそんなことを言われる覚えは」

「なくともこっちにはあるんだよ」


 ぶった切って、言葉をかぶせる。


「あんた方は自分が約半年間、職務放棄してたのにすら気づいていないわけ?」

「は? 職務放棄だと?」

「少なくとも2学期から今まで、生徒会役員として仕事してないのはみんな知ってる。文化祭を実行委員に任せっきりだったのも」

「あ……」


 今さら遅いけどな!


「てなわけで、リコールが確定したからあんた方はただの1生徒だ」

「これ正式文書な。学園長と理事長の承認はもらってあるから」


 私の発言にしぃちゃんがフォローを入れる。いやー、リコールの根回しはスムーズに進んだよ? なにせ、女王信者以外の生徒がサクサクサインしてくれたし、つられたのか元信者もサインしてたし。


 これ以上生徒が動かなければ、学園長権限でリコールが実行されるとこまできてたらしいからね。


「責任のある生徒会という職務を蔑ろにした、ってのが大人の理由。まぁ、私達にしてみれば、一人の女子の下僕に成り下がった奴なんか信用できるかボケが、ってことだけど」

「そうね、こうもテンプレ的にやらかしてくれると、先も見えるけどね」

「ああ、でもあんた方は勘当もされなければ退学も転校もないってよ? よかったね」

「あら真桜、棒読みよ」

「思ってもないことに感情は入らないよ?」

「それもそうね」


 てか、一度の失敗ーーとてつもなくドデカイやつだけどーーごときで廃嫡になんてしないよね。成人した大人じゃあるまいし。ってのがそれぞれの一族の当主判断だそうだ。まぁ、再教育でビシバシしごかれるとは思うけど。


 更に針のむしろ状態での学園生活はかなりメンタルを鍛えられるだろう。今までの行いを知られてるわけだから、当然なにをやってもやらなくても見られてる。話題になる。それが株を上げるのか下げるのかは自分次第だ。


 放心状態のアホ共はほっておこう。


「さて、苛めを受けたとか自己申告してる人?」


 私の問いかけに、壁というか盾がなくなった女王はわざとらしくビクリと肩を揺らした。まだ助けがくると思ってるのか、涙目で周りを見ている。


「しぃちゃん」

「わかった」


 控え室にあるテレビが映像を映し出す。今頃会場の大型スクリーンにも同じのが映ってるはず。


「……え」


 一学期のあの体育。調べてもらったらちゃんと防犯カメラに映像が残ってた。しかもばっちりセンターに私達が映ってるものが。それは間違いなく、女王が私の足を狙って突っ込んでくるシーンだった。誰が見ても女王が加害者だと言うだろうな。


「あれあたしも見てた」

「やっぱり最初からそのつもりで小堺さんにぶつかったんだ」

「いや、あれでどうしてされたとか言えるの?」


 うん、私もそう思う。


 次は廊下ですれ違うシーン。女王に気づいたしぃちゃんが私を抱えあげるとこや、反対側に場所を変えるとことかが流されてる。この対応から見ても、すれ違った後に女王がわざとらしく転ぶのは自作自演で間違いない。


「これ、俺も見た。ぶつかってもないのに転ぶからなにかと思ったよ」

「後から信者が駆け寄ってたもんね」

「そういや、ナイトどうした? 最近見ないな」

「女王から逃げてるとこ見たよ? 洗脳解けたってウワサだけど」


 追いかけっこしてたね、確かに。逃げ切ったのか、駄犬。


「私嫌われてる? ってあなたよく聞くけど、そもそもまともに話したこともない相手に聞くことじゃないことわかってる? 話してみて合わないことはあるよ。だけど、挨拶してすぐにそれ言われても困るよね。あなたは周りを味方につけるために必要かもしれないけど?」


 ちなみに、私はそれを言われてから彼女が苦手になり、駄犬に謝罪をするように言われて、彼女が嫌いになった。

 あの時、嘘でも仲良くしてね、とか言えば丸く収まったのかもしれない。でも、私は嘘をつきたくはない。それがあの結果ならしょうがないと思う。少なくとも、しぃちゃんと逢ってからの私は幸せだし。


「っ、あなた私のこと嫌ってるじゃない! 私悪くないのに!」

「そりゃ、あんなことされて嫌わないほど優しくないさ。てか、悪くないと思ってるの? 謝るのは私じゃないことにも気づかない?」

「あなたが悪いに決まってるじゃない!! 言い逃れしようだなんて最低だわ!」


 ダメだ、この人。こっちの話が通じない。てか、あれだけの証拠映像を見たのに、なにをどうしたら私が悪いとか言うんだ?


「あなたは私のための悪女なのよ! 私はみんなに愛されるお姫さまなの!! 間中くんだけじゃなくて私のナイトをたぶらかしたのもあなたね! 颯真くんを返してよ!!」

「誰が駄犬なんぞたぶらかすか」


 ……ここまで愚かしい思考の持ち主だったのか。哀れな人。


 駄犬呼びに吹き出す声が聞こえたけど、今はスルーで。女王がお花畑の住人な以上、会話が噛み合うことはないだろう。彼女は自分だけの世界で生きてるみたいだ。はた迷惑なことこの上ない。

 てか、お姫さまって……この年で恥じらいもなく言うか。後の黒歴史だぞ間違いなく。


「ねぇ、あなたは世界でたった一人しか選べないって言われたらどうする?」


 私は決まってる。


 唐突に話を飛ばした私を訝しげに見る女王。あのさ、私もかわらないかもしれない。でも、私とあなたは決定的に違う。


「しぃちゃんが隣にいてくれるなら、他は辛くても悲しくても諦められる。だけどしぃちゃんがいない未来だけは選べない」


 譲れない。心も身体もただ一人だけを求めてる。世界に人がたくさんあふれてても、私はしぃちゃんがいてくれるだけでいい。他の誰でもない、しぃちゃんを想ってしぃちゃんに想われてれば、私はもうなにもいらない。


 それだけでいい。私はみんなからのたくさんの愛は求めてない。もちろん、家族も友達も大事だけどね!


 そんな私の告白を、間抜けなくらいぽかーん、と女王が見ていた。



女王バカだわー。黒歴史だわー。今時子供だって言わないわー。さて、次元が違う世界に生きてる彼女にざまぁは可能でしょうか?

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